23 / 32
5 ドライブしたのは収録? デート?
5-3 ギャルと男の娘の水着
しおりを挟む
伊豆での釣果は、いつものアジやイワシもいたけどそれに加えて、僕は初めてシロギスを、朋美さんはイナダとチヌ(クロダイ)を釣り上げて當さんを驚かせた。
僕の料理のレパートリーもバリエーション豊かになっていくし、捌き方ももったいなくないものになってゆく。
第七回のエンディング撮影は、告知だった。
福浦堤防で、ふたり並ぶ。
衣装は、おそろいで長めのパーカー。その下は……
「はーい、前後編で特別編なカンジのお泊り、いっちゃんはどうだった?」
喋り始める朋美さんは片手を後ろにしている。
「恥ずかしかったです」
僕がお風呂に入っている時に朋美さんが乱入してきたり、浴衣姿だったり。
そもそも同室だったことだけでもドキドキが収まらないのに、朝起きたら抱きまくら扱いをされていたり、普段より露出は控えめなはずなのにかえって見えるところがエロティックだったり――と、絵的に困らない素材の質と量だった。
「でも、シロギス嬉しかった。また釣りたいなぁ、って」
あの、天ぷらにしても塩焼きにしても味わえた上質な甘みが忘れられない。姿かたちの透明感も好きになっていた。
「美味しかったしね~。
――えっと、それで」
朋美さんが『告知モード』になる。
「どうして前回と今回、この下田までやってきたかと言うと――」
朋美さんは持っていたものを前に出した。
「じゃーん。この撮影に来てたんでーす」
堤防からは半島を挟んで北東になる、白浜海岸で撮った写真――の一枚を、大きくプリントしたものだった。
僕も朋美さんも水着だ。
朋美さんが僕の腰を抱いて振り返るポーズが採用された。
僕の股間のふくらみが隠せていないようにも見えるけど、蕪井さんが「これがいい」と数え切れないほど撮った中から選んだものだった。
蕪井さんに教えてもらったことだけど、白浜海岸はグラビア撮影によく使われる場所だ。砂浜と海と空の鮮やかなコントラストが綺麗で、都心から日帰りも可能な距離、ということで、ここで撮影するアイドルも少なくないらしい。
そんなところで、ギャルと男の娘という異色のコンビも、アイドルのようなグラビアを撮ってもらった。
「はい、いっちゃん脱いでっ!」
朋美さんにパーカーの前を解いてはだけさせられる。
「そんな、僕だけじゃなくて朋美さんもっ」
打ち合わせたとおりに僕も朋美さんのパーカーを開ける。
パーカーの中は、撮影した時と同じ水着を着ていた。
腰にはベルト型のライフジャケットを巻いている。
「で、これは何の、っていうと――」
朋美さんの告知は続く。
「いっちゃんとアタシの、楽曲配信が決定しましたー!」
ふたりで拍手する。
僕が腰の前あたりを指差す。放送ではここに配信日とかのテロップが出る段取りだ。
「そのアートワークがこれ! 初めてだったけど楽しかったね!」
「僕は――」
頷く。
楽しかった。
女の子の水着で、女の子のようにして、綺麗な海と空と朋美さんと、女の子のような撮影をしてもらうのは――
「ドキドキしっぱなしでしたよー」
「おっきしちゃいそうだった?」
からかうように朋美さんが僕の腰を抱き寄せる。
「そっ、そんな……」
実を言うとこっそり、そうならないようにグラビア撮影の直前に枯れるんじゃないかってくらい処理していた。
「いっちゃんは相変わらず可愛いね。
というワケで、今後の放送もですけど、こっちの方もヨロシクね!」
「お願いしますー」
朋美さんは僕を抱いたまま、話を続ける。
「次回はまたいつものところでするか、違うトコ行ってみる?」
「違うとこ?」
「本牧とか大黒とか。冗談みたいに釣れるよ」
ADさんがボードに『あと十秒』と書いて掲げてきた。
「おっ、もう時間かぁ。
それじゃまた次回~」
ふたり、笑顔で手を振る。
撮影が終了した。
番組の収録に初めて参加した蕪井さんが真っ先に近寄ってきた。
「お疲れさま。なるほど、よかったわ」
と僕たちに労いの言葉をかける。
「この感じだと、二人で女子アイドル売りもいけるかもね」
アイドル……っ!?
僕と朋美さんは目を見合わせる。
「ぼく男ですよ」
「解ってるって。それも踏まえた上でやるのがいいのよ」
蕪井さんはタブレットに何か書き込んでゆく。
スタッフは撤収準備を始めていた。
「着替えておいで。今日はあとは打ち上げだけ――それか」
蕪井さんが何か思いついたように、にっと笑う。
「もう一回ビーチ行って遊ぶ? 撮影して特典映像にもできそうだし」
「あ……」
したい。
もうちょっと、水着でいたい。
そんな気持ちになっていた。
今度、女の子の水着もっと買いに行こうとも思っていた。
「じゃあアタシこのまま運転していきます。いっちゃん、行こっ」
僕の空気を察したか、朋美さんに手を引っ張られた。
僕の料理のレパートリーもバリエーション豊かになっていくし、捌き方ももったいなくないものになってゆく。
第七回のエンディング撮影は、告知だった。
福浦堤防で、ふたり並ぶ。
衣装は、おそろいで長めのパーカー。その下は……
「はーい、前後編で特別編なカンジのお泊り、いっちゃんはどうだった?」
喋り始める朋美さんは片手を後ろにしている。
「恥ずかしかったです」
僕がお風呂に入っている時に朋美さんが乱入してきたり、浴衣姿だったり。
そもそも同室だったことだけでもドキドキが収まらないのに、朝起きたら抱きまくら扱いをされていたり、普段より露出は控えめなはずなのにかえって見えるところがエロティックだったり――と、絵的に困らない素材の質と量だった。
「でも、シロギス嬉しかった。また釣りたいなぁ、って」
あの、天ぷらにしても塩焼きにしても味わえた上質な甘みが忘れられない。姿かたちの透明感も好きになっていた。
「美味しかったしね~。
――えっと、それで」
朋美さんが『告知モード』になる。
「どうして前回と今回、この下田までやってきたかと言うと――」
朋美さんは持っていたものを前に出した。
「じゃーん。この撮影に来てたんでーす」
堤防からは半島を挟んで北東になる、白浜海岸で撮った写真――の一枚を、大きくプリントしたものだった。
僕も朋美さんも水着だ。
朋美さんが僕の腰を抱いて振り返るポーズが採用された。
僕の股間のふくらみが隠せていないようにも見えるけど、蕪井さんが「これがいい」と数え切れないほど撮った中から選んだものだった。
蕪井さんに教えてもらったことだけど、白浜海岸はグラビア撮影によく使われる場所だ。砂浜と海と空の鮮やかなコントラストが綺麗で、都心から日帰りも可能な距離、ということで、ここで撮影するアイドルも少なくないらしい。
そんなところで、ギャルと男の娘という異色のコンビも、アイドルのようなグラビアを撮ってもらった。
「はい、いっちゃん脱いでっ!」
朋美さんにパーカーの前を解いてはだけさせられる。
「そんな、僕だけじゃなくて朋美さんもっ」
打ち合わせたとおりに僕も朋美さんのパーカーを開ける。
パーカーの中は、撮影した時と同じ水着を着ていた。
腰にはベルト型のライフジャケットを巻いている。
「で、これは何の、っていうと――」
朋美さんの告知は続く。
「いっちゃんとアタシの、楽曲配信が決定しましたー!」
ふたりで拍手する。
僕が腰の前あたりを指差す。放送ではここに配信日とかのテロップが出る段取りだ。
「そのアートワークがこれ! 初めてだったけど楽しかったね!」
「僕は――」
頷く。
楽しかった。
女の子の水着で、女の子のようにして、綺麗な海と空と朋美さんと、女の子のような撮影をしてもらうのは――
「ドキドキしっぱなしでしたよー」
「おっきしちゃいそうだった?」
からかうように朋美さんが僕の腰を抱き寄せる。
「そっ、そんな……」
実を言うとこっそり、そうならないようにグラビア撮影の直前に枯れるんじゃないかってくらい処理していた。
「いっちゃんは相変わらず可愛いね。
というワケで、今後の放送もですけど、こっちの方もヨロシクね!」
「お願いしますー」
朋美さんは僕を抱いたまま、話を続ける。
「次回はまたいつものところでするか、違うトコ行ってみる?」
「違うとこ?」
「本牧とか大黒とか。冗談みたいに釣れるよ」
ADさんがボードに『あと十秒』と書いて掲げてきた。
「おっ、もう時間かぁ。
それじゃまた次回~」
ふたり、笑顔で手を振る。
撮影が終了した。
番組の収録に初めて参加した蕪井さんが真っ先に近寄ってきた。
「お疲れさま。なるほど、よかったわ」
と僕たちに労いの言葉をかける。
「この感じだと、二人で女子アイドル売りもいけるかもね」
アイドル……っ!?
僕と朋美さんは目を見合わせる。
「ぼく男ですよ」
「解ってるって。それも踏まえた上でやるのがいいのよ」
蕪井さんはタブレットに何か書き込んでゆく。
スタッフは撤収準備を始めていた。
「着替えておいで。今日はあとは打ち上げだけ――それか」
蕪井さんが何か思いついたように、にっと笑う。
「もう一回ビーチ行って遊ぶ? 撮影して特典映像にもできそうだし」
「あ……」
したい。
もうちょっと、水着でいたい。
そんな気持ちになっていた。
今度、女の子の水着もっと買いに行こうとも思っていた。
「じゃあアタシこのまま運転していきます。いっちゃん、行こっ」
僕の空気を察したか、朋美さんに手を引っ張られた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる