風に立つライオン

壱(いち)

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目でだけ篠山を見れば、獰猛な眼差しとは違う優しさが滲む眼差しに出会い心臓が跳ね上がるかと思った。

「あの時も憎たらしいほど男に慣れた体を動かして快楽に弱いお前を見て知ってるが、こっち方面に滅法素直だろ」

エレベーターの中で篠山から言われることを少しずつ頭で理解し、恥ずかしくなってくる。
顔が熱くなる前に篠山の手首を両手で掴み口から指を出そうとすれば、図星だろ、と耳元へ情事に耽るような低く艶のある声で囁かれ腕で体を支えられながら生理的に潤んでしまった視界の中、眉を顰めた。

口の中にある指は悪戯に動きだす。

「さっきの男はお前の親父か?」

あやすように頬へ口付けられ、亮介のことを言われていると分かって話せないからこくっと頷く。
溜まりだした唾液に口を閉じようとしても少し開いてしまって上手く唾液を飲み込めないでいたら、エレベーターが一階に到着した。

漸く指が引き抜かれて滴る唾液の筋と俺の唇が繋がっていて、思わず手放した手を再度掴み唇を近付けて一度舌で舐めてやる。

「まさかとは思うが、お前」

扉が音をたてて開くと同時に篠山から剣呑な空気が漂いだして何事かと思う。

「親父ともヤってんじゃないだろうな」

まだ授業中で静かなフロアへ先にエレベーターから降りて出た俺は言われたことに振り返り、目をみはる。

「篠山さんっ」
「一緒に来い」
「さすがにそれは・・・っ」

更に悪い空気を醸し出す篠山に片方の手首を掴まれ、先を歩く篠山に引っ張られることになり焦る。そんな俺を一度見据えた篠山の眼差しに自分が男の逆鱗に触れたことを知り、言葉が続かなかった。










end.
20110513.
20150716.投稿
20160211.アルファ投稿
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