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第2章 ゆるゆる逃避行は蚊帳の外?
第005話 さよならシラルの町
しおりを挟む爽やかな笑みを浮かべてエリック達がやって来た。グリーストが場所を譲る。……遅い、遅いよエリック。
「すまんな、コイツ等見た目と言動に問題あるけど悪い奴等じゃないんだよ。これでもギルドにランク4を与えられてるくらいだしな」
「これでもってどう言う意味だよエリック」
「そのまんまだよ。お前等この少女達に相手にされて喜んでたろ?」
マジかよコイツ等、思わず汚物を見るような目で見てしまう。
「おいおいリリス、幾ら何でもそんな顔されちゃ傷つくぜ」
「ふへへ、そうだぜ、俺等が何かしたってのかよ?」
「「「「ひいっ」」」」
「はぁ、それを止めろって。お前等ワザとやってるだろ」
何で俺相手にもニヤニヤ喜んでるんだよ! もうキモいし怖いし生理的に受け付けないぞ!?
「……とうとう行っちまうんだな。寂しくなるよ、リリス」
「ん、エリック、世話になった」
「いやぁ、結局今回の騒ぎには何も出来なかったしなあ」
そう言って頭をぽりぽり掻いてる。けど傭兵ギルドに誘ってくれたのも移籍する前からご飯を奢ってくれたりしてたのも本当に助かった。コイツの助けがなかったらマジでのたれ死んでいたかも知れないからな。
「この町で、一番の幸運はエリックに会えた事だよ」
側に寄って小声で言うと目を見開いてコッチを見てから笑顔を向けて来た。――この優男……。
「その笑顔、無闇に女性に向けていると何時か刺されますよ」
ちょっとイラッと来たから、聖女モードでにっこり笑顔を向けるとエリックは笑顔のまま凍りついた。いや嫌味じゃないよ? コイツ天然タラシだからマジの忠告だからな?
『怒ると言葉が流暢になるのう』
リズとラストの我儘姉弟にエリック大好きなクリスにも軽く挨拶していった。流石にこの状況で絡まれる事は無かった。
『と言うより聖女モードに唖然としていたようじゃがの』ボソッ
そうしてると怪我を手当てした傭兵やその仲間が挨拶して来た。中には泣きながら抱き付いて来るのもいてちょっと怖かった。けどエリックやコレット達が引き剥がしてくれて何とかやり過ごした。
更に職員達からも握手を求められた。笑顔が引き攣らないようにするのに苦労した。バレて無いよな? 今更ながら他人の好意でも悪意でも、そもそも注目を浴びるのが苦手なんだと再確認したよ。
ついでにエリックにはコレット達の事を頼んでおいた。世話焼きのコイツがいれば大丈夫だろ。エリック大好きなクリスは不服そうだったけど20代に入って12歳の少女達にまで絡んだらエリックにドン引きされるぞと言っておいた。
一通り挨拶し終えて馬車の方にいるギルド長の所に行くと2人の男女が挨拶してきた。
「初めまして、私今回レンリート伯爵家まで御者をさせて頂きますヴェルンと申します、宜しくお願いします」
「同じくナージャと申します、宜しくお願いします」
伯爵家の人間って事か? ヴェルンは30歳くらいか、赤い髪と瞳の細目で175cmくらい、ピッシリした服装で姿勢も良く御者ってより執事っぽい。ナージャの方は若くて20歳くらいかな? 165cmくらいの茶髪茶目、切れ長の瞳で凛としていてメイドっぽい格好だ。
どっちも見目が良い、しかし見た目とは裏腹に2人共帯剣していてどちらもそれなりに戦えそうだ。
『いや、どちらもかなりの手練なのじゃ』
……そうですか。しかしレイク達にこの御者にサージェス達まで、そこまで警戒しなきゃイケない状況なのか? ちょっと怖いな。
ギルド長とミリアーナが馬車に乗り込んでいく。俺も馬車に乗り込まないとな。
「うう~、……リリスちゃん~」「離れたくない~」「ううっ、ひっく、リリスぢゃ~ん」
おうふ、コレット達にしがみ付かれて馬車に乗れない。どうしよう、取り敢えず頭を撫でておくけど何の解決策も思いつかない。
て言うか皆んな見てるんだけど? 誰か助けろよ、何かエリックは微笑ましそうに見てるだけだし、何故かグリースト達はガン見してるし。
「リリスちゃん、私絶対忘れないからね!」
「私もだよ。同じチームだもんね?」
「んっ、私も、初めて組んだチーム。だから、一生忘れない。コレット、ラビィ……ありがと」
「んっ、同じチーム、そして私の命の恩人」
「ルル、私にも……ルル達は恩人」
「リリスぢゃん、何時かランクを上げて会いに行くね?」
「私も頑張るからねリリスちゃん!」
「んっ、必ず行く」コクリ
「んっ、また会う」コクリ
はあ、やっと馬車に乗れる。御者のヴェルンに手を引かれて乗り込んだ。おお、内装は豪華だな。柔らかそうなソファーだ。窓から外を見るとコレット達が手を振っている。俺も手を振っておくか。
『お主……』
いや俺だってあの娘達には感謝してるし好印象も持ってるよ? けどああも慕われちゃうと草臥れたおっさんとしては気疲れしちゃうんだよ。
『いやそうでなくてじゃの』
「では行きます」
「リリスちゃん、窓はギルドを出る前に閉めて頂戴」
「ん」コクリ
馬車が動き出すとコレット達も泣きながら追い掛けて手を振って来る。こう言う時こっちも泣けたら可愛いんだろうな。――イヤそんなもん望んで無いけどね? 代わりにいっぱい手を振っておこう。
ギルドを出る前に窓を閉めてソファーに深く腰掛ける。……はあ、やっと落ち着けるな。
「リリスちゃん、良く頑張ったね」
ミリアーナが何故かハンカチで俺の顔を拭ってきた??
『お主泣いとるぞ?』
うえっ!? マジで? 何で?? あっ、本当だ、涙が出てる。うわぁ、うわー止まらない、どう言う事? どう言う事??
『手を振っておった時からなのじゃが、お主が思うより心を開いておったと言う事じゃろ』
「大丈夫、大丈夫だよリリスちゃん」
ミリアーナが抱き締めて頭を撫でて来る。うわぁハズい、コレット達にも泣き顔見られたって事だよな。意識したらどんどん顔が赤くなってきた。顔を見られないようにミリアーナの膝枕で顔を隠すけど耳まで熱くなって来た。
――ダメだ、落ち着くまでしばらく掛かりそうだ。
「あら、ギルド長。北門から出るの? 行くのは南の伯爵領なんでしょ?」
「偽装よ、安全を考慮してね。まあ念の為よ」
ギルド長とミリアーナが話してるのを聞きながらシラルの町での生活を思い出す。苦しい生活だった冒険者時代、傭兵になってからは金銭的には楽になったけど人間不信は変わらず、ずっとソロを続けた。
でも今思い出そうとすると精霊剣、リリィを拾ってからのあの娘達との共同生活が先ず思い出される。長い町での生活の中で、あの時間だけが色付いていた気がする。
そう思うとこの涙は本当にあの娘達との別れが惜しかったんだと思えるな。
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