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第2章 ゆるゆる逃避行は蚊帳の外?
第004話 旅立ちへ向けて
しおりを挟むそれからミリアーナはとある事情で別の宿に移動していたタチアナとマリーの部屋にハリスを連れて事の経緯を話した。
「ミリアーナ、――それ本当?」
「嘘を付いてどうすんのよ。もし教会があのバカを受け入れなかったら貴女達に寄生しようとするかもよ?」
「だから前もって部屋を移させていたのか」
「「「………………」」」
「それで貴女達はどうする気? 3人になっちゃったけど」
「……ミリアーナが、マットが言った時戻って来てくれてたら……」
「タチアナ、無茶を言わないで。悪いのはマットでしょう?」
「う……うん、ごめんミリアーナ」
「良いのよ、私も貴女がマットと付き合うのをもっと強く止めていれば良かったと後悔してるの」
「マットがそう言う奴だって気づいてたのか?」
「えっ、えーっと、どうだっかしらね?」
「ミリアーナはマリーがハリスと付き合うのも嫌がってた」
「……おい」
「ははっ。ま、まあそんな事より貴女達寮に入らない? 宿だと最悪教会が絡んで来るかもよ?」
「私は行くわ。タチアナも一緒に行きましょ? マットの事引きずってる場合じゃないわよ」
「そうだな、俺も教会はごめんだ。マットの事は寮に行って考えれば良い」
「うう、……うん」
その後3人は傭兵ギルドの寮に入る事になった。マットはアイリスを引き入れられなかった事で神聖教会には入れてもらえず。揉めに揉めた挙げ句神聖教会の神兵にボコボコにされ放り出された。
後日ミリアーナの予想通りタチアナ達に泣き付いて来たが、流石に受け入れられる事は無く。タチアナもその情け無い姿に吹っ切れたようだった。
「――ギルド長、マットは連日呑んだくれて教会の愚痴を言い回っているそうです」
「ふふっ、そう」
「彼にお金を隠れて支援すると聞いた時は疑問だったのですが、こう言う事だったのですね」
「予想通りに踊ってくれるか分からなかったから言わなかったけどね」
「我々の流している情報と合わせれば、傭兵ギルドに匿われている聖女を教会が拐おうとしたと町の人間も見るでしょう」
これでアイリスちゃんが町から去っても教会の所為に出来る。あの子の美容魔法を受けられなくても恨まれるのは教会だ。
全てが計算通りだと思わされてしまう。全く恐ろしい人だ。副ギルド長としてこの人に師事して1年、この人だけは敵に回したくないとレーナは思った。
それから2日、変わらずコレット、ラビィ、ルルにミリアーナと鍛練をしている。けどそこにレイク達も参加して来た。コレット達はランク6の参加に恐縮していたけど良い経験になるだろうな。
鍛練を続けながら職員に回復魔法を施して行く日々。更にリリィの精神汚染に晒されながら何人か後遺症に苦しむ傭兵を回復させた。味方を作る為だから仕方がない。――お金も美味しいし。
そうしてこの町を出る前日には持って行く荷物の整理を済ませた。移動中はリリスとして移動する事になってる。元々持っていた服はボロボロの物ばかりだったので捨てられてしまった。
荷物を軽くする為と言われては仕方ないけど、女性用の荷物しかなくなってい少し虚しい気持ちになってしまった。
と言うかリリス、女用の服が更に増えてんだけど? 女性職員達からのプレゼントだって……バカなの?? 回復魔法のお礼が女物の服って嫌がらせかな? 喜ぶと思ってるの?
おちょくってるようにしか思えないけどどうやら真剣らしい。皆んなバカだったようだ。
「「「「「………………」」」」」
その日の夜の食事、何時ものようにコレット達とミリアーナとで部屋で食べたけど皆んなしんみりしてた。まあ明日にはお別れだから仕方がないか。
「~~……ファイアボール」
「「「おお」」」
とうとう出発日の朝、何時もと変わらず屋上で鍛練をしてルルがとうとう魔法を発動させた。俺に見せる為に相当頑張ったようだ。
「ルル、頑張った」コクリ
「んっ、頑張った」コクリ
『なんじゃコヤツ等』
「コレットもラビィもね。焦らす頑張れば皆んなちゃんと強くなれるわ」
「「はい、頑張ります」」
俺がルルを褒めるとミリアーナも2人を褒めた。確かに初めは素人っぽかったけど、若いからか吸収力があるのか今では見違える程だ。
「自分達の命を大事に、だよ?」
ミリアーナに加えレイク達まで入っては精霊剣であるリリィの助言とは言え、俺が戦いについて教えるのは烏滸がましい。だからと言って何もしないのも外聞が悪いと思って生き残る為の知恵とかを教えていった。なまじ才能のある奴等は脳筋になりがちだしな。
その後シャワーを浴びて皆んなで朝食を摂った。吹っ切れたのか無理してるのか、普段より賑やかな食事だった。
部屋を片付けてからギルド長に会いに行く。何故かレイク達にサージェス達までいた。サージェス達は帰ったんじゃなかったのか?
「あら、もう準備出来たの?」
「んっ」コクリ
「……~うう……」
「ルル……」
ルルが堪え切れずに涙を流してコレット、ラビィが慰めてる。こう言うの割と平気だと思ってたんだけどな。自分の事となると何か居心地悪い。
『共に涙しろとは言わんがその反応はどうなんじゃ』ジト目
「カリン、リリスちゃんの荷物は馬車に載せたのよね?」
「はい、ギルド長の荷物と見せかけて一緒に載せました」
「そう。リリスちゃん、改めて言うわね。貴女とミリアーナは私の護衛兼お世話係りとして、レイク達は護衛として雇う形になるわ。移動中もそのつもりで動いて頂戴」
「んっ」コクリ
「そしてサージェス達には別動隊として少し先行して色々調べて貰う事になったわ」
「まあ俺達は伯爵領との領境までだがな。よろしく頼むわ」
「んっ、お願い」
「……お前本当に、アイツなのか?」
「アイツ?」コテリ
ってああ、女装してるからな。
サージェスが変なモノを見るように俺を見てきた。俺だってこんな格好でいたくないわ! 笑いやがったら目を潰してやろうか。
「いや何でもない。……すまんな。それじゃ俺等は先に行くわ」
「ええ、特に教会の動きには気を付けてね?」
「分かってますよ」
サージェス達をジト目で見送る。命拾いしたな。
サージェスがあんな反応になったのはアイリスの見た目が数日前より更に若々しく、と言うより幼く見えたからだった。……が、周りにいたメンバーもアイリスの回復魔法を受けて若返ったように見えた為、下手に触れるとその全員を敵に回しそうで引き下がったのだ。
レイク達を先頭にしてギルド長の後ろを歩いて1階ロビーに降りて行く。両手をルルとラビィに握られコレットに服の裾を摘まれてる。両手塞がれて階段を降りるのって怖いな。
1階裏手の鍛練場に馬車が来ていた。普通の箱馬車だ。良かった。ギルド長なら偉いさんが乗るような豪華な馬車に平気で乗りそうだったからな。まあ良く考えれば目立つような迂闊なマネをギルド長がする訳無いか。
周りを見ると多くの職員達と傭兵達が集まっていた。暇人か?
「ようリリス、聞いてはいたけどマジで行っちまうんだな」
「ひっ!」
グリースト、この間の村での一晩イケる発言から見た目の怖さもあって苦手なんだよな。思わずルルとラビィに抱き付いちまったぜ。
「うひひっ、相変わらず可愛い反応だな」
「コレがあのアイツか? マジかよ、確かにお前の言う通りだな。ここまでとは思わなかったぜ」
「だろ? コレならイケるよな」
「ああ、イケるな。コレなら金払っても良いぞ」
チームメンバーも皆んな強面なんだよな。て言うか威圧感があり過ぎるだろ! 山賊か!? そしてイケる発言止めろ、怖気が走るわ!
「リッ、リリスちゃんが怯えてます!」
「離れて下さい!」「んっ、ダメ」
コレット達が止めに入ってくれた。けど君達も怯えてるよね?
「グリースト、その辺にしてやってくれ。本気で怯えてるぞ」
「ん? エリックか」
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