上 下
153 / 257
五章

11、計画が頓挫しそうです

しおりを挟む
「や、やめてぇ。後生ですから堪忍してください」

 膝立ちになった絲さんは、切なげに眉根を寄せている。
 いや、普段とはちょっと違て眉間にしわが寄っている。

 うんうん、気持ち悪いよなぁ。俺かて、そんなとこに指突っ込まれたら、さすがにきついわ。

 俺の右手は、柔らかくて小さい絲さんの尻を左右に開く。
 見慣れた自分の手やから、普段はでかいとも思わへんのやけど。絲さんの尻が小さすぎる所為やろか。やたらと手がごつくて大きく思える。

 左の指に泡をたっぷりとつけ、そのままゆっくりと絲さんの尻の奥へと挿れていく。
 当然の如く、絲さんは体に力を入れる。

「あかんで。ちゃんと中を洗わな」
「ど、どうして、そんなところ、を」

 すでに絲さんの声は切れ切れや。天井から湯面に落ちる水音の方が大きいくらいに、彼女の声は微かで震えている。

 この震えは、期待やのうて怖さからやな。
 大丈夫やで、絲さん。痛いことも怖いこともせぇへん。ちゃんと馴らしてあげるから、安心し。
 俺は優しい男やからな。

「絲さんの全部は俺のもんやからな。知らんとこがあったら、あかんやろ」
「そ、それなら……ひっ」

 喋りかけた絲さんの、さらに奥へと指を入れていく。抵抗がきつい。まぁ、当然やろけど。

「どんな感じや? 絲さん」
「き、きもちわるい、です」
「力抜いた方がええで」

 彼女の中でぐるりと指先をまわす。指先が拾う感触は、いつもの慣れた場所とは違う。
 
「く……ぅ、うう……ぅ」

 絲さんは後ろ手に縛られたまま、首を逸らした。湿った髪が彼女の背にかかり、水滴が俺の腕に落ちて泡を流していく。

「そろそろ夕飯やなぁ。さきに食べてからにしよか」
「な、なにを、ですか?」
「そんなん決まっとうやん。絲さんを抱く以外に何があるん」

 今日は絲さんがお出かけするのに、波多野が付き添っとったから、寂しかったんや。
 
◇◇◇

 わたしは混乱した頭を抱えたくなりましたが。両手を封じられているので、それもできません。
 
 おかしいわ。今日は波多野さんに付き合ってもらってお誕生日のお酒を買って。日付が変わったら、それを蒼一郎さんの枕元にそっと置こうかと思ったの。

 翌朝、目が覚めたら蒼一郎さんが驚くのよ。
 わたし、まるで師走にある生誕祭のさんたくろうのようではなくて?

 なのに……何故早々に計画が頓挫しているの?

 湯から上がってしばらく経つので、体が冷えたのでしょうか。わたしは小さく身震いしました。

「ああ、寒かったな。ごめんな、絲さん。もう一回温まろな」

 ようやく蒼一郎さんが指を抜いて、わたしはまともに息をすることが出来ました。そして腕の腰紐を解いてくださったの。
 でも、その思いやりを別な所に使ってください。お願いですから。

 ああ、後ろが気持ち悪いです。まだ蒼一郎さんの指が入っているような心地がして。

 お湯の中で体をもぞもぞと動かしていると、蒼一郎さんがにやりと笑いました。
 
「絲さん。これは大人の階段やで」
「階段、ですか?」
「せや。我慢しぃな。人はこうやって大人の階段を上っていくんやで」

 大きな手がわたしの頭を撫でてくださいます。
 そうなのですか?
 わたし、艶事には疎くって。女學院に通っていても、町さんやお友達とはこんな情事についてのお話はしませんもの。

 そうなのね、知らなかったわ。普通のことだったのね。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

狂愛的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執着愛〜

羽村美海
恋愛
 古式ゆかしき華道の家元のお嬢様である美桜は、ある事情から、家をもりたてる駒となれるよう厳しく育てられてきた。  とうとうその日を迎え、見合いのため格式高い高級料亭の一室に赴いていた美桜は貞操の危機に見舞われる。  そこに現れた男により救われた美桜だったが、それがきっかけで思いがけない展開にーー  住む世界が違い、交わることのなかったはずの尊の不器用な優しさに触れ惹かれていく美桜の行き着く先は……? ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ ✧天澤美桜•20歳✧ 古式ゆかしき華道の家元の世間知らずな鳥籠のお嬢様 ✧九條 尊•30歳✧ 誰もが知るIT企業の経営者だが、実は裏社会の皇帝として畏れられている日本最大の極道組織泣く子も黙る極心会の若頭 ✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦ *西雲ササメ様より素敵な表紙をご提供頂きました✨ ※TL小説です。設定上強引な展開もあるので閲覧にはご注意ください。 ※設定や登場する人物、団体、グループの名称等全てフィクションです。 ※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。 ✧ ✧連載期間22.4.29〜22.7.7 ✧ ✧22.3.14 エブリスタ様にて先行公開✧ 【第15回らぶドロップス恋愛小説コンテスト一次選考通過作品です。コンテストの結果が出たので再公開しました。※エブリスタ様限定でヤス視点のSS公開中】

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

極上エリートは溺愛がお好き

藤谷藍
恋愛
(旧題:強引社長とフラチな溺愛関係!? ー密通スキャンダルなんてお断り、ですー) 素顔は物凄く若く見えるベイビーフェイスの杉野紗奈は、メガネをかけて化粧をすると有能秘書に早変わり。いわゆる化粧映えのする顔で会社ではバリバリの仕事人間だが、家ではノンビリドライブが趣味の紗奈。妹の身替りとして出席した飲み会で、取引会社の羽泉に偶然会ってしまい、ドッキリ焦るが、化粧をしてない紗奈に彼は全然気付いてないっ! ホッとする紗奈だが、次に会社で偶然出会った不愛想の塊の彼から、何故か挨拶されて挙句にデートまで・・・ 元彼との経験から強引なイケメンは苦手だった紗奈。でも何故か、羽泉からのグイグイ来るアプローチには嫌悪感がわかないし、「もっと、俺に関心を持て!」と迫られ、そんな彼が可愛く見えてしまい・・・ そして、羽泉は実はトンデモなくOOたっぷりなイケメンで・・・ 過去の恋の痛手から、一目惚れしたことに気付いていない、そんな紗奈のシンデレラストーリーです。

【完結】もう二度と離さない~元カレ御曹司は再会した彼女を溺愛したい

魚谷
恋愛
フリーライターをしている島原由季(しまばらゆき)は取材先の企業で、司馬彰(しばあきら)と再会を果たす。彰とは高校三年の時に付き合い、とある理由で別れていた。 久しぶりの再会に由季は胸の高鳴りを、そして彰は執着を見せ、二人は別れていた時間を取り戻すように少しずつ心と体を通わせていく…。 R18シーンには※をつけます 作家になろうでも連載しております

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません

和泉杏咲
恋愛
両片思いの2人。「年下上司なんてありえない!」 「できない年上部下なんてまっぴらだ」そんな2人は、どうやって結ばれる? 「年下上司なんてありえない!」 「こっちこそ、できない年上の部下なんてまっぴらだ」 思えば、私とあいつは初対面から相性最悪だった! 人材業界へと転職した高井綾香。 そこで彼女を待ち受けていたのは、エリート街道まっしぐらの上司、加藤涼介からの厳しい言葉の数々。 綾香は年下の涼介に対し、常に反発を繰り返していた。 ところが、ある時自分のミスを助けてくれた涼介が気になるように……? 「あの……私なんで、壁ドンされてるんですか?」 「ほら、やってみなよ、体で俺を誘惑するんだよね?」 「はあ!?誘惑!?」 「取引先を陥落させた技、僕にやってみなよ」

もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

泉南佳那
恋愛
 イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!  どうぞお楽しみいただけますように。 〈あらすじ〉  加藤優紀は、現在、25歳の書店員。  東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。  彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。  短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。  そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。  人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。  一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。  玲伊は優紀より4歳年上の29歳。  優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。  店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。    子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。  その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。  そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。  優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。  そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。 「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。  優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。  はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。  そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。  玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。  そんな切ない気持ちを抱えていた。  プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。  書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。  突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。  残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……

女性執事は公爵に一夜の思い出を希う

石里 唯
恋愛
ある日の深夜、フォンド公爵家で女性でありながら執事を務めるアマリーは、涙を堪えながら10年以上暮らした屋敷から出ていこうとしていた。 けれども、たどり着いた出口には立ち塞がるように佇む人影があった。 それは、アマリーが逃げ出したかった相手、フォンド公爵リチャードその人だった。 本編4話、結婚式編10話です。

処理中です...