異世界マネージャー~島流しに処された最弱の剣聖、ポンコツで底辺配神者なお狐様を全力でプロデュースッ!!~

龍威ユウ

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第一章:最弱の剣聖

第1話

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「――、雷志。お前はここでパーティーから抜けてもらう」


 そう口にしたのは英傑、源次郎であった。

 英傑とは、血筋や才能といったあらゆる面で秀でた者のみに与えられる称号である。

 かく言う源次郎は、女好きで他人をよく見下すとして性格に少々……否、かなり難のある男ではあったが英傑に選ばれるだけあって実力は確かである。

 一歩的な解雇通告に雷志、と呼ばれた男は慌てるわけでもなく抗議する気もない。

 至って冷静なままな態度は、まるでこうなることを予見していたかのようにとても落ち着いている。

 だからこそ彼の口からは「わかった」と、この四文字があっさりと出た。

 源次郎と雷志を含む、計四人で構成されたパーティーは禍鬼まがつき討伐のために死の森へと訪れていた。

 死の名を冠するだけあって、鬱蒼と木々が生い茂る森はまだ日が高くあるというのにどんよりとして大変薄気味悪い。

 また狂暴な禍鬼まがつき多数いることから、生存確率は他所と比較すると格段に異なる。

 一度踏み入れたが最後、生きて戻ってきた者は一人としてなし。それだけに死の森は、この先に居を置く禍鬼まがつきにとっては最高の自然防備壁でもあるのだ。

 さて、あっさりと受諾した雷志をまず訝し気に見やったのが、解雇通告を出した張本人である源次郎だった。


「……おい。お前は何も思わないのかよ」


 源次郎は、雷志がみっともなく喚き取り乱す様を期待していたのだろう。

 しかし返ってきた反応レスポンスはあまりにも淡々としたもので、源次郎の予想とは正反対の結果となってしまっている。

 源次郎は、それがどうやら心底気に食わないらしい。

 怒りを露わにした顔は真っ赤で、今にも火が噴きそうな勢いですらある。


「本当は悔しいんじゃないのかよ!? だってそうだよな? せっかくここまで頑張って来たのにクビになったら、手柄は全部俺らだけのものになっちまうんだからよぉ!」

「興味ないな」

「ぐっ……てめぇいつまでも余裕ぶっこいてんじゃねーぞ!?」


 がぁぁ、とがなる源次郎だが雷志は依然冷静なまま。

 むしろ落ち着きすぎた態度は、見る側にとっては見下しているようにも受け取れる。

 実際に雷志が源次郎を見下しているかはさておき。

 自分の予想どおりに事が進まないそれ自体が、源次郎を余計苛立たせているのは火を見るよりも明らかだった。


魔泥鬼までんきすら満足に倒せない奴がよ!!」

「それについては、特に否定するつもりはない。俺は確かにまだまだ弱いからな」


 この世界に生息する禍鬼まがつきには、六段階形式で闘級が降られている。

 一番下がEで上限がSで、この基準については意外とバラバラな部分があるから、冒険者はいかなる闘級であろうと細心の注意と万全の支度をして挑むのが鉄則であった。

 しかし、その中でも魔泥鬼までんきはE闘級禍鬼まがつきであることは、共通認識なのは確かである。

 主にじめじめとした薄暗い洞窟やダンジョンに生息し、息をひそめ天井から獲物へと襲いかかる。

 身体は強力な酸性の液体で構築されていて、触れればたちまち激痛と共に肉と骨がどろりと溶けていく様をまざまざと見せつけられよう。

 壮絶な死は不可避と、ここまで聞けばさぞ恐ろしい禍鬼まがつきであるが、反面極めて鈍重で歩くスピードでも追いつけないと言った致命的な弱点がある。

 つまり奇襲さえ注意を払っていれば、どれだけ実力がない者でもあっさりと倒せてしまえるのだ。


「ったくよぉ、てめぇが凄腕の剣士っつーから仕方なくパーティーに入れてやったってのに。まさか魔泥鬼までんきごときも倒せないなんて、とんだハズレ野郎だぜ」

「確かに。他の禍鬼まがつきは倒せてたけど、それってつまりみんながとてつもなく強いって喚いていただけで実際は闘級よりもずっと下だったってことじゃない?」

「間違いないな。でなければ、この役立たずが倒せるわけもない」


 源次郎が率いる呪術使いのアヤネと、女武者のカエデも同感だとうんうんと頷く。

 あまりにも一方的すぎる言葉の暴力を目前に、それでも雷志は依然表情一つさえも変えない。

 やがてくるり、と踵を返して歩き出す。彼が向かう方向は、死の森の入り口へ。

 もはや英傑パーティーの一員ですらないし解雇までされたのだから、わざわざ無理矢理でも付き従う道理は雷志にはない。

 来た道を戻る彼の背中に向かって、源次郎が吼える。


「じゃあな役立たず野郎! せいぜい帰ってきた俺達が有名になっているのを指をくわえて眺めてるんだなぁ!」


 挑発としては、いささか語彙力がなさすぎるが言い切った源次郎の表情はひどく晴れ晴れとしていた。

 言うまでもなく、その言葉に雷志が結局なにかしらの反応を示すこともなく。

 とうとうその姿が全員の視界より完全に消失した。
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