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文化祭なんて嫌いだ!1

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 高校生活最後の文化祭。クラスでは出し物を何にするかの話し合いをしている。
 展示、カフェ、縁日、屋台、遊園地etc。色んな案がある中で、うちのクラスは迷路に決まった。理由は作るのはさほど難しくないし、お金もほとんどかからないけど楽しめるし、数人スタンバってればいいという自由さからだった。
 確かにこれなら時間で数人がついていればいいので、他のメンバーは自由に文化祭を見て回ることができる。そして、準備だって見取り図通りに壁を設置すればいいだけ、と簡単だ。これ考えたやつ天才じゃね?
 これで俺の高校生活最後の文化祭は比較的自由に文化祭を見て回れることが決まった。担当は拓真と組むことになったので、係になっても退屈することはない。
 問題は誰と見て回るかだ。中学時代の友人は遊びにくると言っているけれど、ずっとガイドする必要はない。クラスの出し物に案内すれば、後は自由に見て回るだろう。その友人たちと文化祭を見て回るか、拓真と見て回るか。そう考えて涼介が思い浮かぶ。
 涼介とは家が近所で子供の頃から一緒だったし、今もなんだかんだ一緒にいる。でも、大学はそれぞれ別だ。もちろん二人とも自宅通学だけど、涼介は自宅から少し遠くなる。それにお互いにサークルやバイトで今までのようには会うことはできなくなるだろう。そう思ったら、文化祭で何か思い出を作りたいと思った。二人で過ごす時間がさほど残っていないことが寂しい。文化祭、誘ってもいいかな?

「で、文化祭どうするの?」

 学校帰りのファーストフード店で拓真が言う。
 
「中学時代の友達が来るよ」
「一緒に回るのか?」
「んーどうだろ。拓真は?」
「俺も友達くるけど、一緒には回らない。ちょっと会うくらい」
「そっか」
「香川と回らないのか?」

 考えていたことを言われて、ちょっと恥ずかしくなる。お見通しだよな。

「回りたいけど、彼女いるし……」
「でも、言ってみたら? 決めるのは香川だろ」
「うん……」
「なにウジウジしてるんだよ。大学は別なんだろ。そしたら今みたいに会えなくなるんだぞ。今思い出作らなくていつ作るんだよ」

 わかってる。わかってるよ。だから誘ってみようか、って考えたりもしたんだ。

「誘ってみようかな」
「おー。そうしろそうしろ。香川のクラス何やるか知ってる?」
「カフェだって」
「うわー。香川目当ての女子いっぱい来そうだな。ってカフェだとうちのクラスと違って拘束時間結構長いな」
「そうなんだよ。だから、彼女と回るって言われたら時間ないかな、って」
「そこは調整して貰おうぜ。まぁ、陽翔大好きな香川だからうまくやってくれるんじゃね?」
「そうかな」

 短い自由時間に、彼女と回る以外にも俺とも一緒に回って欲しいって……言うか。言ってみるか。

「うん。言ってみるわ」
「良かったな、一緒に回れて」
「まだ決まってないよ」
「えー。絶対大丈夫だって。陽翔は俺のだ、発言しちゃうやつだよ。彼女より大事にしたいんだよ。断るわけ絶対ないじゃん。あ、香川と回るのもいいけど、俺とも回ろうぜ」
「もちろん拓真とも回るよ」
「文化祭、楽しみだな」
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