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「陽翔、今日は遊べるか?」

 放課後、声をかけてきたのは拓真だった。二日連続で誘いを断っちゃったから、ちょっと気使わせたかもしれない。今日はバイトもないし、朝、黄色いチューリップを吐いて以来は、涼介の顔も見ていないし元気だ。

「大丈夫だよ。昨日は悪かったな」
「いや、体調悪かったんだから仕方ないよ。それよりさ、もう胃は大丈夫なんだよな? 普通に昼食べてたし」
「大丈夫だよ」
「そしたらさ、ちょっと寄り道して行かね? 腹減ったから、月見バーガー食いたい」
「いいよ。じゃ、行こうぜ」

 拓真と連れ立って校庭に出ると、涼介がサッカー部の後輩と一緒にいた。格好いいよな……。って、そうじゃない! そんなこと考えたら、ほら、また……。

「陽翔、どうした? 難しい顔してるぞ」
「大丈夫」

 急いで涼介から目を離して、校門へと急ぐ。涼介の姿は見たい。見たいけど、ここで吐くわけにはいかない。朝は涼介を見てときめいたら吐き気がした。キーワードが涼介なのかもしれない。まだわからないが。ただ、どうしたら吐き気がするのかわかるまでは、できるだけ姿を見ない方がいいかもしれない。だから心を鬼にして振り向かなかった。
 学校近くのファーストフード店は高校生でいっぱいだった。俺がバイトをしている店よりお手頃感のあるチェーン店なので、高校生など学生が多い。昼間のこの時間は、学校終わりの高校生と小さな子供連れで店内はいっぱいだ。
 拓真は言っていた通り、月見バーガーを注文し、俺はチーズバーガーを注文し。空いていた窓際の席を陣取る。

「なぁ。香川って幼馴染みなんだろう?」
「ん? うん。涼介がどうかした?」
「いや、朝さ、間近で顔見たけど、ほんとイケメンな。あれなら彼女が途切れないのわかるわ」

 話題は、今は嬉しくない涼介のことになった。拓真は涼介と同じクラスになったことはないので、涼介のことは噂程度でしか知らない。それでも、学校の有名人である涼介の噂はたくさんある。そして涼介の彼女については、噂を聞かなくてもわかる。誰と付き合い始めたらしい。誰と別れたらしい。今度は誰と付き合い始めたらしい。そんなのは噂に聞くまでもなく、涼介を見ていれば一目瞭然だ。だって、彼女と言われる女子が、牽制なのかいつも涼介に張り付いているから。それはどの女の子も変わらなかった。

「でも、チャラチャラしてるわけじゃないから、男ウケも悪くないしな。ほんと羨ましいわ。あんなイケメンなら、俺もすぐに彼女できるのに」
「別れてまだ三ヶ月だろ」
「そうだけどさー。早く彼女欲しいじゃん。って、そういう陽翔は? ほんとに彼女いないのかよ?」
「いないよ」
「でも、好きな女子もいないだろ。なんかなー。隠してないだろうな」
「隠してないよ。彼女もいないし、好きな女子もいない」
「えー、なんか怪しい」
「怪しくないよ。今はバイトと進学のことで頭いっぱいなの」
「すっげ、真面目ちゃん」
「そんなんじゃないよ」
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