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第13章 新たなる出会い

七賢人の宝石とはいったい・・・

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デルフィーからセネルまでは結構な距離がある。
中間地点には小さな村があるという話で、まずはその村に滞在する予定を立てていた。

「七賢人か・・・古代には錬金術が盛んだったのかな?デュランダルのマダスカスとヴァリアスのディストラも、その七賢人が作ったものなのかもな。それと、今持っている4つの宝石も七賢人が作ったものなのかもしれない。あと一つもどこかにあるんだと思う。そうすれば7つだろ?七賢人ていうくらいだから、それぞれが作ったんじゃないかな・・・目的は分からんけど」

「確実にあと一つはありそうね。それと、鍛錬しててわかったんだけど、エリーからもらった結晶の使い方。あれね、剣に力を込める感じにすると、そんなに体力を消耗しないことがわかったわ。それと、剣だけじゃなくて自身にも風の力を付与できるみたい。かなり素早い動きができるわ。アリシアも早いけど、それを上回る速度で間合いを詰めることが出来るわ」


暫く馬を走らせていくと、小さな村が見えてきた。
村に入ると、農業が盛んな村なのか、そこら中が田畑で覆われていた。
店は少なく、宿屋と食堂。それと作物を売る屋台みたいな店があるだけだった。
二人は村長がいないか村人に聞いてみると、村人が一軒の家を指をさして教えてくれた。
なにか情報がないか、村長のところに受かった。
村長とみられる人が外でクワや鎌屋のこぎりなどをメンテナンスしている風に見えた。

「すみません、村長さんですか?」

「ああ、この村を一応まとめておるが、こんな辺境の地へ何をしに来たのですかな?」

村長は言うと、和人は事情を話してみたが、この村には伝承とか、そういったものは無いという感じだった。
流れ者がたまに訪れる程度で、若い住人はほとんどいなくて、年老いた住人が大半だった。
村長の話によると、若い住人のほとんどがデルフィーかセネルに移住していったらしい。
貴族にも見放されて、領主もいない状態で放置されている。

「何もなさそうだな・・・腹減ったし飯にするか?」

和人が言うと食堂へ向かった。
中に入ると閑散としていて、客は数名しか見られず、武装をしていることから察するに流れ者なのだろうと。
食堂で食事をしていると、流れ者たちのパーティーから噂話が耳に入った。
どうやらセネルにデュランダルの兵士一行が軍に入らないかとギルドに張り付いているらしい。
そしてその流れ者は報酬の高さにつられて志願しに行く途中とのこと。

「セネルに行ったら、私の存在がばれる可能性が高いわね。ギルドでなんか情報がないか行ってみたいところなんだけど、和人に任せるわ」

「俺は剣士の格好でギルドに向かってみるよ。ここは剣の国だからな。魔法の使い手だとバレるとヴァリアスからの密偵と思われる可能性も考えた方が良い」

打ち合わせ後に、一晩を明かして、翌朝すたれてしまった村を後にセネルに向かって出発した。
セネルまではそんなに距離もなくすぐに到着できた。
街の入り口には幸い見張りの兵士はおらず、そのまま踏み込んだ。
真っ先に武器屋に向かって、一番安いショートソードとスモールシールドを買い、宿屋に向かい部屋を確保した。
和人は剣士の格好をすると、早速ギルドへと向かった。
街中は武装された人々で物騒な感じがする。
ギル後に入ると、依頼の掲示板と受付所ともう一つ軍隊への志願者の受付もあった。
ギルドの依頼を目当てにしている人よりも志願者の方に多くの列をなしていた。
和人は掲示板に注目していると掲示板を見る5人のパーティーが何やら話している。

「えぇっと、依頼内容は・・・湖に沈む遺跡の調査と宝石にまつわる古書と宝石の確保・・・か」

「この依頼、報酬が高いな。依頼主が貴族だからかな?でも水中にある遺跡なんて行けるやつなんかいるのかな?俺達には無理だろうな。湖に沈む遺跡なんて潜れっこないぜ。これはパスだな」

「やっぱりか・・・あったな。毎度のことだけど、また古代の遺跡か・・・ここから遠くはないな。読むと今までの遺跡とは違って湖の底にに建てられた感じなのか。というより、湖になってしまったんだろうな。今回はエリーもいないし、強敵が出たらやばいな」

和人は周りを見渡してみると金髪のロングヘアーの女剣士に目が止まった。
いかにも戦いなれていそうで、2本の剣を腰に下げている。
女剣士の目線の先には同じ依頼を見ていた。
和人の視線に気づくと、こちらに向かって歩いてきた。

「あなたもこの依頼を?ショートソード?あなたには無理な依頼だと思うのだけれど・・・あ、私は賞金稼ぎを生業にしているのよ。雇われて戦争に加担したりとかね」

「へぇー、そうなんだ?見た感じ戦いなれていそうだけど、軍の志願にはいかないのか?報酬は高いみたいだけど」

和人は軍隊の志願者の受付を指さしていた。
あんな剣士も視線を向けたが反応は、あまり乗り気ではないように思えた。

「私は興味がないわ。少し前に聞いた噂だと、凄腕の剣士と魔法使いがいて戦場が激しかったのは耳にしたけど、それ以来ぱったりね。なんだか以前と同じ小競り合いになっているみたいね。そこで軍を強化するために、ここで募集をかけているんじゃないかしら。戦争なんてくだらないわ」

和人は心の中で、たぶん俺たちのことかな、と思いつつも話を合わせることにした。
そんなに悪いやつでもなさそうに思えたのと戦争は好まないといったことが気に入った。

「俺は、ある事情があって各地を回って旅をしているんだ。相方は宿屋にいる。女剣士だけど、強いぞ?突然の提案なんだけど、勝負して俺たちが勝ったら仲間にならないか?ちょっとばかし、この遺跡に興味があってね。二人だと強敵が出た時に心もとなくて」

「それは面白そうね。共に戦いを学ぶ者同士、その子と一戦交えてみたいわね。案内してくれるかしら?興味があるわ。それで、あなたは戦わなくって?」

和人はショートソード抜いて見せた。

「この通り、ショートソードさ。戦いは不慣れでね、主にバックアップをしてる。相方にも話しておくから、明日の朝、街から出たところに大きな木があるだろ?そこで待ち合わせってことでどうだろう?そこならやり合っても人目に付かないし、ちょうどいい場所だと思う」

「そうね、わかったわ。明日の朝ね。そうそう、私の名前はソフィアン、ソフィーでいいわ。あなたは?」

和人は名前を名乗ると金髪の女性、ソフィーと別れて宿屋に戻って涼音に事情を説明した。
涼音は昔から負けず嫌い、挑まれたら逃げることは絶対にしない性格をしている。

「おかえり、和人。で、どうだったの?収穫はあった?」

「んー、合ったには合ったけど、今回は水中の中に遺跡があるらしい。まあ、それは魔法で膜を張れば侵入できるだろう。問題なのは魔物の住処になっている可能性が高いのと、だんだんと魔物たちが狂暴化してきている。そこでだ、ギルドで知り合った金髪の女剣士がいてね、勝ったら仲間になってくれるらしい。剣を2本ぶら下げている。見たところ細い剣だったな。ラノベで見る限りだとレイピアなんじゃないかな?」

「えぇー!私に、そのソフィーと戦えと?あんたねぇ、勝手に決めてこないでよ~。そりゃ仲間は欲しいけど・・・っていまさら言っても仕方ないか~。逃げたと思われるのもしゃくに触るし、挑戦されたら受けて立つわ。どれだけの腕前なのかも興味があるし」

和人が情報集めにギルドに行っている間、涼音は鍛錬を重ねていた。
風の結晶を使いこなすためには、剣術もそうだが、精神の鍛練も必要だと感じていた。
涼音からのオーラというか、闘気というか、それに似た何かが感じ取れた。

「そういえば、もう一つソフィーのことなんだけど、隠してはいるみたいだったけど、かすかな魔力を感じ取れた。ただ者じゃあなさそうだ。それに戦いなれている感じもあったな。気を抜かない方が良いかもしれない。何らかのスキルでもあるのかもしれない」

「なるほどねぇ~。でもちょっと楽しみだわ。やっぱり人同士の戦いの方が楽しい。殺し合いは嫌だけどね」

そして、翌朝、二人は馬に乗り、約束の場所へ向かった。
木に寄りかかる感じでソフィーが座っていたが、二人に気づいて、立ち上がった。

「待っていたわ。その子が和人の相方さんね・・・あなた、若いわりには強そうね。練り上げられた闘気を感じるわ。ルールはいたって簡単、殺し合いはなしよ。どちらか一方が動けなくなるか、負けを認めるまでってことでどうかしら?」

「あなたがソフィーさんね。私は涼音。ん?2本のレイピア?・・・黒いレイピアと白いレイピアか。私の獲物はこれよ」

涼音は剣を抜いて見せた。
朝日で光り輝いている。

「その剣、ただの剣じゃなさそうね。私にはわかるわ。言ってみれば宝剣の類ね。それじゃあ、早速始めましょうか?話はそれからよ」

和人がカウントをとり、腕を振り下ろすと同時に、二人が素早く前に出た。
素早さは、ほぼ互角。
ソフィーが黒いレイピアを抜くと横なぎををして、涼音は仰け反る形で紙一重に交わした・・・が、その時だった。
ソフィーはすかさず、もう一本のレイピアで追撃した。
剣速がまったく見えなかった。

「ぐはっ・・・」

ソフィーの二段構えの攻撃により、もう一本のレイピアが涼音の横っ腹にダイレクトにヒットし、涼音が吹き飛んで、横っ腹を抑えている。

「速いっ・・・まさか2連撃してくるなんて・・・」

ソフィーの戦法が分からず、うかつにも飛び込んでしまった涼音は後方へ吹き飛び、笑みを浮かべながら横っ腹を押さえていた。

「このレイピアは母の遺産なのよ。黒のレイピア「黒龍」それと、白のレイピア「白龍」母は騎士団長をしていて、剣術を教わっていたのよ。大きな戦争が起こったときに仲間の救うために犠牲になってしまって戦死して、このレイピアを私が受け継いだのよ。本気を出してもいいかしら?あなたも本気を出した方が良くってよ。さしづめ様子見ってところなんでしょ?私にはわかるわ、その剣には力を感じるもの」

「そうね、油断したわ。ソフィーさんもまだ本気を出していないんでしょ?じゃあ、本気で行くわ!」

涼音は剣に水の力と風の力を込めた。
剣から水の竜巻が出来ている。
それを見たソフィーは笑みを上げながら、2本のレイピアを抜くと同時に素早い動きで一気に間合いを詰めたと同時に姿が消えた。
涼音は目の前から突然消えたソフィーに驚き、周りを見渡すと後方から姿を現し、白龍で涼音の足めがけて横なぎをした。
涼音は風の力で素早く飛び上がり、振り返ると同時に水の刃の連撃を食らわせた。
ソフィーは白龍を抜き、いとも簡単に水の刃を切り刻むと白龍から激しい光を放った。
涼音と同様に白龍を何度も振ると、光の刃だろうか、涼音に向かって飛んで行く。

「え?なにこれ?光の攻撃?」

水の刃に対して閃光の刃。そして謎の黒龍・・・
涼音は必死に避けながらも隙を窺って水の刃で応戦している。

「あなた、なかなかやるわね。私の閃光を交わすどころか水の飛び技を出すだなんて。初めて見たわ。一つ教えてあげる。この白龍には光の加護がかかっているのよ。そして、この黒龍には幻影の闇の加護がかかっているのよ。あなたの剣、水と風の力を感じるわ。触れるだけで切れるのでしょ?だいたいわかったわ。それじゃあ、行くわよ!」

素早い動きで間を詰めたと思ったら黒龍の力で姿を消し、白龍で閃光を放ち、涼音を翻弄していく。
涼音は戸惑いながらも周囲を警戒し、現れる場所を予想して剣を振るが、そこには残像、本命は涼音とは逆方向にいる。
なんとか防ぎながらも攻撃のチャンスをうかがっている。

「強い・・・アリシア以上の強さだわ。白龍は何とかなるけど、問題なのが黒龍ね。姿が消えたらどこに現れるか分からないわ」

涼音は何度か色々な攻撃を織り交ぜて攻撃をしているが、幻影なのかまったく当たらない。
激しい攻防が繰り広げている。
かなりの長期戦となっている。
長引けば、その分、涼音には分が悪い。
風の結晶の力は魔力のない涼音にはしんどい展開になるのは明白。
涼音は目を閉じて深呼吸を始めた。

「意識をもっと風の結晶に向けないと・・・ふぅ~。幻影に惑わされてはダメだわ。意識を集中して相手の気を感じ取らないと」

涼音が剣を鞘に納めると、構え始めた。
それは居合抜きの構えに見えた。
涼音は剣道の他に、高校に上がってから居合道にも通っている。
涼音の闘気が練り上げられていくと、風の力が涼音を覆い始めた。
更に体制を低くすると、一直線にソフィーに向かっていった。
これまでで一番素早い動きを見せた。
和人は目で追えなかった。
一気に間を詰めると涼音の水と風を帯びた剣がソフィーに一線、横なぎをした。
これまでで一番早い俊足の涼音の攻撃にソフィーは仰け反る形で避けた・・・が、その瞬間、涼音の鞘がソフィーの横っ腹に直撃していた。
ソフィーは苦痛の声を上げて、押さえながら片膝をついた。

「っ・・・まさか私の真似をするなんて・・・さすがに効いたわ。」

暫くするとソフィーは立ち上がり、2本のレイピアを鞘に納めた。

「涼音さん、あなたが気に入ったわ。仲間になってあげるわ。それと、あなたはまだまだ強くなる可能性を秘めているわね」

和人は安堵の表情を浮かべて、ほっとしている」

「あのまま続けていたら私の負けだと思うのだけれども良いの?今の私じゃソフィーさんにはかなわないわ。だって、あの攻撃が全力だったんだもの」

「それと、あなた。和人、あなたは剣士じゃないわね。魔力を感じるわ。本当は魔法師なんでしょ?私の話を教えてあげるわ。父はヴァリアス出身の高ランクの魔法師なの。母親はさっき話した通りデュランダルの騎士団長。父と母の出会いは戦場だったのよ。二人とも戦争が嫌いでね。たまたま戦場で合った二人は少しの間、一騎打ちをしてね。それが出会いで、詳しくは聞いていないけど父はヴァリアスを抜け出してデュランダルに来たのよ。その時に作ったのが、この黒龍と白龍なの。黒龍には幻影魔法が付与されていて、白龍には光の魔法が付与されているの。私は小さい頃から、父には魔法を教わり、母には剣術を教わったわ。でも大きな戦争が起きた時に母は仲間を助ける為に戦死してしまったのよ。父は荒れ果てた戦場をさまよって母を探したわ。首をはねられていたらしいの。その時にこの2本のレイピアと母を担いで家にたどり着いて母を弔ったわ。その後、兵士が押しかけてきて父は拘束されて捕らわれの身になって死刑になったのよ。私は母のように強くなりたくて、この2本のレイピアを手にして腕を磨いたわ」

「なんだかつらい過去ね。私たちも目的があってね、旅をしているの。それで必要なのが七賢人が作り出した宝石を手に入れる事。私たちはこの世界の住人じゃないのよ。理解するのは難しいと思うけど。それらの宝石を集めれば、元の世界に帰れるんじゃないかって思ってね」

「ソフィー、少しの間だけ力を貸してくれないか?俺は知っての通り魔法師だ。元はヴァリアスにいた。炎の魔法と水の魔法が使える。あとはこの結晶を使えば風魔法も多少なら使えるんだ。俺たちは別々の国に召喚されてしまってね。涼音はデュランダル、俺はヴァリアスにいた。戦場でたまたま出会って抜け出してきたんだ。その戦争が激化したってあったろ?あれはたぶん俺たちのことなんだと思う。簡単な説明だけど、そんなところだ」

ソフィーはしばらく考えたのちに心よく引き受けてくれた。

「俺たちは湖の底にある遺跡に向かう予定だ。ソフィーも同じ依頼を見てただろ?それだよ。この後、宿に戻ったら。俺はギルドに行って依頼を受けてくる予定だ。ソフィーがいてくれたら心強い」

こうして3人は一度宿へ向かうことになり、和人は剣士の振りをして再びギルドに向かって依頼を受ける署名をした。
和人が戻ると涼音たちの姿が見えなかった。
暫く探したがどこにもいなかったので、宿屋で待つことにした。
日が傾いてきた頃に二人が戻ってくると、涼音はソフィーから剣術と剣を最大限に使えるように指南を受けていたらしい。
3人は早速、明日に遺跡のある湖に向かうこととなった。
そこで待ち受けているものは一体どんなものなのか、宝石はどんな力を秘めているのか。
七賢人とはいったい何者で何のために宝石を作ったんだろうか。
和人はベッドに横になりながらぼんやりと考えていた。
出発は早朝、和人たちは宿屋で一晩を明かした。
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