ヤクザと犬

美国

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勢揃い

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あの後なぜか沈んだ顔で黙ってしまった田嶋さんを放って事務所をあとにした。なんだか知らない人になってしまったような気がして、あれからも自分からは接触しないようにしている。


久々の幹部が全員集まる会合。当然のごとく俺は組長の横に席が設けられ、幹部6人とそれぞれのボディーガード、そして俺という13人が顔を突き合わせた。
最初は畏まって今後の組の動向について話し合っていたが、夜もふけると酒も用意され場の空気も緩んでくる。酔いが回ってくると、足を崩し、顔も火照ってくる。
普段、組員の前では真面目で堅物な姿しか見せない組長も、今日はかなり機嫌がよろしいようで、御園の腰を抱き、側に引き寄せたまま酒を飲む。
御園は組長のお酌をし、組長はそのおちょこで御園に酒を飲ませる。そのいちゃつきように、他の幹部たちは顔を歪めていた。


山手たち4人は、組長を羨ましそうに見つめる。いつかは俺が組長になって御園を俺の手に…!いや、その前に駆け落ちを…。など頭の中はいろいろな思惑が駆け巡るが、たまにちらっとそちらを見た御園と目が合うと、顔を赤くし、今はこれだけでも十分か…。と幸せに浸る。
まあ結局、しばらく2人のベタつきを見続けるとまた連れ去りたい思いに駆られるのだが。

向野は、2人のガードをしながら、組長に僅かなりとも嫉妬を覚える。普段は尊敬し敬愛している相手であるが、こうも間近で想い人を好き勝手されては、やはり忠実な部下といえども雑念が混じる。
だが、向野さんもどうぞ、と御園におちょこを渡され酒をつがれると、心があたたまり嫉妬心も薄れる。


だが、一際鋭い視線をこちらに向ける田嶋は、一度たりとも顔が緩むことはなかった。その空気は憎悪にも近い殺気を含んだものだったが、周りの人間には御園しか視界には入っていなかった。
いや、それでも組長はそんな視線に感づいていただろうが、そんなものは気にも止めてはいなかった。もう、御園を田嶋に返すつもりはさらさらなかった。


御園は田嶋にだけはフォローをしなかった。田嶋には関わるつもりもなかった。目も合わせないし、会話をすることもない。今までは当たり前のことだったが、それが今の田嶋にはどうしようもなく腹立たしかった。

組長の隣に当たり前のように寄り添い、屈託のない笑顔を晒す御園が憎らしかった。
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