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その人は
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エニシと名乗ったその人はとても綺麗な人だった。
一瞬女性かとも思ったが、細身だがきちんと男性らしく筋肉もあり丸みもない。
だがその落ち着きように貴族なのかもしれないと頭を下げようとしたが、違いますよと笑われた。
妹にも違うらしいと一応説明したのだがその目から信じていないのは分かった。
「では今日はうちの子たちと狩りにでも行ってきて下さい」
町をで、こちらに引っ越してくる前に有り金で薬を買えるだけ買ってこいと言われたためまだ暫くは余裕がある。
最初こそ無一文になることに不安はあったが、彼らと数日一緒に過ごしてみれば、どうやら大丈夫そうだと安心した。
話しに聞いていたより子どもたちもしっかりしており、急にやってきた自分たちを見ても警戒はしても泣きわめくような子はおらず本当にホッとした。
少しでも役に立とうと自分でも出来そうなことは頑張ってみてはいるが、その半分以上は失敗に終わり子どもたちに呆れられてしまっていた。
そんな自分を見かねてか狩りに行って来いという言葉に反抗するなんてこともなく頷けば、彼の子だという双子に罠の作り方を教えられた。
中々言われた通り出来ず、ちがう!と何度も怒られながらも完成させられた時は嬉しかった。
狩りと言っても罠をしかけて待つだけならば何とか自分にも出来る。
何度か失敗し逃がしてしまったが、それでも2匹も捕まえられたのは自分にしては上出来だろう。
「………………」
ただ……隣りで頬を膨らませる少女にはどうしたらいいのか分からない。
自分なんかが下手に何か言って更に機嫌が悪くなってもと慰めることも、上手く元気付けることも言えない自分が本当に情けない。
「ほらもう帰るよ」
「………………アイとれてない……」
「また今度頑張ればいいよ。エニシが待ってるから今日はもう帰るよ」
イヤだと首を振るが、抱え上げられてしまえばどうすることも出来ず家に帰るのだった。
おかえりなさいと笑顔で出迎えてくれた彼は、母とも妹とも違う優しい声になんだか落ち着かなかったが嬉しかった。
その上子どもたちにもすごい、ありがとうとまで言われ喜びに変な顔になっていないか変な心配をしてしまうほどだった。
それから捌き方も教わってみたが自分には才能がなく、逆に一緒に教わっていた獣人の彼女は見事に素早く捌いていっていた。
「あとは私がやるからアンタはあの人たちと一緒にお風呂でも入ってくれば?」
完全に戦力外と言われ、トボトボ家に戻ると未だ頑張る子どもたちには申し訳ないが先に汗を流させてもらうことに。
「あれ?もう終わったんですか?」
丁度風呂上がりだったのか、双子の頭を拭きながら彼がこちらを見ていた。
「い、いえ……あの、上手く出来ないので先に風呂に入ってこいと言われて……」
自分で言っておいて傷付いた。
なんと情けないのだろう。
「ははっ、イリスさんですか?まぁ、彼女がいいと言うならいいんでしょう。食事のことは彼女にお願いしてますから」
女性って逞しいですねと言われ、そう言われれば妹も自分よりしっかりしているなと納得してしまった。
「貴方なら大丈夫だと思いますけど、イリスさんもシャイアさんも獣人で奴隷だったので以前は酷い扱いを受けてました」
町で彼女たちを見たことはなかったが、獣人の扱いが酷いのは知っていた。
自分とて初めて彼女たちを紹介された時に何も思わなかったわけではない。
本当に大丈夫なのかと思いはしたが、子どもたちと話す姿は人のそれだった。
ご飯よと、おいしい?と、手を洗いなさい、さっさと寝なさいとまるで子どもたちの母か姉のように接していた。
子どもたちも笑いながら返事をし頷いている。
それを近くで見てやっと理解出来た。彼女たちは人なんだと。
「ここで暮らすようになって少しずつ彼女たちも物ではなく、人になってきました。だからーーお願いします」
何を、とは言わなかった。
不当に扱うな、暴力を振るうなと注意するでもなく、ただ一言お願いしますと言う言葉は何よりも重かった。
色んな意味を含んでいるのだろうその言葉は、まるで自分を試すように、脅すように、そして懇願しているようでもあった。
「彼女たちは………」
「人と呼ばれるには何が必要なんでしょう。自分は人間だと言うには誰の許可が必要なんでしょうか?なら悪魔のようだと言われる人間は本当に人なんでしょうか?」
自分たちは本当に人なのか?当たり前だということさえ証明しろと言われれば出来ない。
そんなはっきりとした答えがない中で「お前たちは人間ではない」「人間の成り損ない」「獣如きが」と罵られ暴力を振るわれる理不尽。
受け入れられないのは当たり前だ。
ふざけるな暴れるのも、やってられないと逃げ出そうとするのも。
「全てを理解しろとも受け入れろとも言いません。けどこれから一緒に暮らしていく仲間として仲良くしてあげてくれたら嬉しいなとは思ってます」
それは命令ではなく、あくまでお願いであり希望だと言う彼に自分も深く頷き返すのだった。
一瞬女性かとも思ったが、細身だがきちんと男性らしく筋肉もあり丸みもない。
だがその落ち着きように貴族なのかもしれないと頭を下げようとしたが、違いますよと笑われた。
妹にも違うらしいと一応説明したのだがその目から信じていないのは分かった。
「では今日はうちの子たちと狩りにでも行ってきて下さい」
町をで、こちらに引っ越してくる前に有り金で薬を買えるだけ買ってこいと言われたためまだ暫くは余裕がある。
最初こそ無一文になることに不安はあったが、彼らと数日一緒に過ごしてみれば、どうやら大丈夫そうだと安心した。
話しに聞いていたより子どもたちもしっかりしており、急にやってきた自分たちを見ても警戒はしても泣きわめくような子はおらず本当にホッとした。
少しでも役に立とうと自分でも出来そうなことは頑張ってみてはいるが、その半分以上は失敗に終わり子どもたちに呆れられてしまっていた。
そんな自分を見かねてか狩りに行って来いという言葉に反抗するなんてこともなく頷けば、彼の子だという双子に罠の作り方を教えられた。
中々言われた通り出来ず、ちがう!と何度も怒られながらも完成させられた時は嬉しかった。
狩りと言っても罠をしかけて待つだけならば何とか自分にも出来る。
何度か失敗し逃がしてしまったが、それでも2匹も捕まえられたのは自分にしては上出来だろう。
「………………」
ただ……隣りで頬を膨らませる少女にはどうしたらいいのか分からない。
自分なんかが下手に何か言って更に機嫌が悪くなってもと慰めることも、上手く元気付けることも言えない自分が本当に情けない。
「ほらもう帰るよ」
「………………アイとれてない……」
「また今度頑張ればいいよ。エニシが待ってるから今日はもう帰るよ」
イヤだと首を振るが、抱え上げられてしまえばどうすることも出来ず家に帰るのだった。
おかえりなさいと笑顔で出迎えてくれた彼は、母とも妹とも違う優しい声になんだか落ち着かなかったが嬉しかった。
その上子どもたちにもすごい、ありがとうとまで言われ喜びに変な顔になっていないか変な心配をしてしまうほどだった。
それから捌き方も教わってみたが自分には才能がなく、逆に一緒に教わっていた獣人の彼女は見事に素早く捌いていっていた。
「あとは私がやるからアンタはあの人たちと一緒にお風呂でも入ってくれば?」
完全に戦力外と言われ、トボトボ家に戻ると未だ頑張る子どもたちには申し訳ないが先に汗を流させてもらうことに。
「あれ?もう終わったんですか?」
丁度風呂上がりだったのか、双子の頭を拭きながら彼がこちらを見ていた。
「い、いえ……あの、上手く出来ないので先に風呂に入ってこいと言われて……」
自分で言っておいて傷付いた。
なんと情けないのだろう。
「ははっ、イリスさんですか?まぁ、彼女がいいと言うならいいんでしょう。食事のことは彼女にお願いしてますから」
女性って逞しいですねと言われ、そう言われれば妹も自分よりしっかりしているなと納得してしまった。
「貴方なら大丈夫だと思いますけど、イリスさんもシャイアさんも獣人で奴隷だったので以前は酷い扱いを受けてました」
町で彼女たちを見たことはなかったが、獣人の扱いが酷いのは知っていた。
自分とて初めて彼女たちを紹介された時に何も思わなかったわけではない。
本当に大丈夫なのかと思いはしたが、子どもたちと話す姿は人のそれだった。
ご飯よと、おいしい?と、手を洗いなさい、さっさと寝なさいとまるで子どもたちの母か姉のように接していた。
子どもたちも笑いながら返事をし頷いている。
それを近くで見てやっと理解出来た。彼女たちは人なんだと。
「ここで暮らすようになって少しずつ彼女たちも物ではなく、人になってきました。だからーーお願いします」
何を、とは言わなかった。
不当に扱うな、暴力を振るうなと注意するでもなく、ただ一言お願いしますと言う言葉は何よりも重かった。
色んな意味を含んでいるのだろうその言葉は、まるで自分を試すように、脅すように、そして懇願しているようでもあった。
「彼女たちは………」
「人と呼ばれるには何が必要なんでしょう。自分は人間だと言うには誰の許可が必要なんでしょうか?なら悪魔のようだと言われる人間は本当に人なんでしょうか?」
自分たちは本当に人なのか?当たり前だということさえ証明しろと言われれば出来ない。
そんなはっきりとした答えがない中で「お前たちは人間ではない」「人間の成り損ない」「獣如きが」と罵られ暴力を振るわれる理不尽。
受け入れられないのは当たり前だ。
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