417 / 475
今日は何の日
しおりを挟む
「あ、あのっ!」
「ん?どうしました?」
お昼ご飯も終えイリスたちと後片付けをしていたのだが、何か言いたそうに両手を握り締めるシャイアに手を止めた。
「………あ、あの……わ、わたし、また、つくるの、やっ、やってみたい…です」
何のことかと思ったが、こうして料理を作りみんなに喜んでもらえたことが嬉しかったと言われ、それはよかったと微笑んだ。
まだ慣れない環境で緊張もあるだろうが、それでも楽しかったと思えることがあったなら嬉しい。
「シャイアさんがそう思ってくれて良かったです。少しずつやっていきましょう。そうですね……次はお菓子にしてみましょうか。みんなお仕事頑張っているので甘い物がいいでしょうから」
自給自足の生活では何かとやることが多いが、それでも小まめに休憩を挟むように子どもたちには言ってある。
5分でも10分でも休憩しないのとしたのでは気持ちも身体への負担も少なく、縁が遊びに来た時は時々甘い物を出してやってたりしている。
「や、やります!や、やりたい、です!」
「………………わ、私も」
小さな声ではあったがイリスもやりたいと言ったため頷いてやる。
やって欲しいと頼んだのは縁ではあるが、それはあくまでもお願いであり2人が望んでいたことではなかったので自分からやってみたいと思ってくれたのには安心した。
「シャイアさんもイリスさんもとても器用ですからきっと美味しく出来ますよ。気に入ったら時々でいいですからまたみんなに作って上げて下さいね」
自身の子どもたちには毎日おやつの時間があるが、ここにいる子どもたちにはそれも難しい。
作る人間がいないのもそうだが、そこまでの金銭的余裕と時間が足りていないのだ。
嬉しそうに頷くシャイアの頭を撫でてやると、時間まで家の掃除をすることにする。
縁も一緒にするとは思っていなかったのか、雑巾を手に窓を拭き始めた時はかなり驚かれた。
「2人は読み書きは出来るんですか?」
「……少しなら。書くのは苦手」
ある程度なら読めるらしいが、書く方は難しいらしい。
そもそも奴隷であった彼女たちが字を書くことがそうなかったらしいのでそのせいだろう。
「ならそちらも少しずつ覚えていきましょうか。大丈夫、簡単なものだけでいいですよ」
欲を言えば計算なども将来のため学んで欲しくはあるが、やりたくもないことを無理にやらせようとまでは思っていない。
最低限の読み書きさえ出来るようになってくれれば問題はないのだ。
「それは…………また私たちを売るため?」
「っ!や、やだ……」
まさかそんなことを思っていたとはおらず驚いた。
泣きそうな顔で見上げてくるシャイアに首を振ると、俯くイリスの頭も撫でてやる。
「ちがいますよ。ただ……2人が少しでいいから自分に自信を持ってもらえたらなと。あとは単純に子どもたちには難しいことを2人が補ってもらえたら嬉しいなと思ったからです」
子どもたちもいつかは大人になる。
いつかはここを旅立っていく子もいれば、居場所を求めてここを訪ねてくる子もいるかもしれない。
その時のため生きる術を縁の代わりに教え、支えていってくれる存在が必要だったのだ。
「勿論2人がここを離れ別に暮らして行きたいと思った時は言ってもらって構いません。ただ子どもたちが大きくなるまで見守ってくれてあげてくれたら嬉しいとも思ってます。そのために必要かなと思っただけですよ」
名前や味噌の販売による収入などの帳簿など子どもたちが出来ないことを頼みたかったのだ。
「わ、わたし、ここがいい、です」
「ありがとうございます。そう言ってもらえてすごく嬉しいです」
まだ来たばかりとは言え、彼女たちがここにいたいと思えるほど居心地良く感じてくれたならば何よりだ。
「さぁ、掃除はこのぐらいにして約束のお菓子を作りましょうか。簡単なものがいいですけど………あっ、焼きりんごにしましょうか。昨日アレンがたくさん採ってきてくれたみたいですし」
肉はそれほどだったみたいだが、道々見つけたとたくさん採ってきてくれていた。
帰りに愛依のためにも少し採っていこうかと話していたのだ。
2人を連れキッチンへ向かうと、縁はなるべく手を出さないようにしながら指示していく。
「そう…そうです。真ん中をくり抜いたらバターを詰め込んで……」
あくまでうろ覚えのレシピなので正しいかは分からないが、言われた通り手を動かす2人にそのことは言わないでおく。
あとは昼にも使った釜で焼いていくと、仕上げにたっぷりと蜂蜜をかけてやった。
いい匂いに2人も笑顔になり、子どもたちを呼んでくるとみんなで仲良く休憩にするのだった。
「ん?どうしました?」
お昼ご飯も終えイリスたちと後片付けをしていたのだが、何か言いたそうに両手を握り締めるシャイアに手を止めた。
「………あ、あの……わ、わたし、また、つくるの、やっ、やってみたい…です」
何のことかと思ったが、こうして料理を作りみんなに喜んでもらえたことが嬉しかったと言われ、それはよかったと微笑んだ。
まだ慣れない環境で緊張もあるだろうが、それでも楽しかったと思えることがあったなら嬉しい。
「シャイアさんがそう思ってくれて良かったです。少しずつやっていきましょう。そうですね……次はお菓子にしてみましょうか。みんなお仕事頑張っているので甘い物がいいでしょうから」
自給自足の生活では何かとやることが多いが、それでも小まめに休憩を挟むように子どもたちには言ってある。
5分でも10分でも休憩しないのとしたのでは気持ちも身体への負担も少なく、縁が遊びに来た時は時々甘い物を出してやってたりしている。
「や、やります!や、やりたい、です!」
「………………わ、私も」
小さな声ではあったがイリスもやりたいと言ったため頷いてやる。
やって欲しいと頼んだのは縁ではあるが、それはあくまでもお願いであり2人が望んでいたことではなかったので自分からやってみたいと思ってくれたのには安心した。
「シャイアさんもイリスさんもとても器用ですからきっと美味しく出来ますよ。気に入ったら時々でいいですからまたみんなに作って上げて下さいね」
自身の子どもたちには毎日おやつの時間があるが、ここにいる子どもたちにはそれも難しい。
作る人間がいないのもそうだが、そこまでの金銭的余裕と時間が足りていないのだ。
嬉しそうに頷くシャイアの頭を撫でてやると、時間まで家の掃除をすることにする。
縁も一緒にするとは思っていなかったのか、雑巾を手に窓を拭き始めた時はかなり驚かれた。
「2人は読み書きは出来るんですか?」
「……少しなら。書くのは苦手」
ある程度なら読めるらしいが、書く方は難しいらしい。
そもそも奴隷であった彼女たちが字を書くことがそうなかったらしいのでそのせいだろう。
「ならそちらも少しずつ覚えていきましょうか。大丈夫、簡単なものだけでいいですよ」
欲を言えば計算なども将来のため学んで欲しくはあるが、やりたくもないことを無理にやらせようとまでは思っていない。
最低限の読み書きさえ出来るようになってくれれば問題はないのだ。
「それは…………また私たちを売るため?」
「っ!や、やだ……」
まさかそんなことを思っていたとはおらず驚いた。
泣きそうな顔で見上げてくるシャイアに首を振ると、俯くイリスの頭も撫でてやる。
「ちがいますよ。ただ……2人が少しでいいから自分に自信を持ってもらえたらなと。あとは単純に子どもたちには難しいことを2人が補ってもらえたら嬉しいなと思ったからです」
子どもたちもいつかは大人になる。
いつかはここを旅立っていく子もいれば、居場所を求めてここを訪ねてくる子もいるかもしれない。
その時のため生きる術を縁の代わりに教え、支えていってくれる存在が必要だったのだ。
「勿論2人がここを離れ別に暮らして行きたいと思った時は言ってもらって構いません。ただ子どもたちが大きくなるまで見守ってくれてあげてくれたら嬉しいとも思ってます。そのために必要かなと思っただけですよ」
名前や味噌の販売による収入などの帳簿など子どもたちが出来ないことを頼みたかったのだ。
「わ、わたし、ここがいい、です」
「ありがとうございます。そう言ってもらえてすごく嬉しいです」
まだ来たばかりとは言え、彼女たちがここにいたいと思えるほど居心地良く感じてくれたならば何よりだ。
「さぁ、掃除はこのぐらいにして約束のお菓子を作りましょうか。簡単なものがいいですけど………あっ、焼きりんごにしましょうか。昨日アレンがたくさん採ってきてくれたみたいですし」
肉はそれほどだったみたいだが、道々見つけたとたくさん採ってきてくれていた。
帰りに愛依のためにも少し採っていこうかと話していたのだ。
2人を連れキッチンへ向かうと、縁はなるべく手を出さないようにしながら指示していく。
「そう…そうです。真ん中をくり抜いたらバターを詰め込んで……」
あくまでうろ覚えのレシピなので正しいかは分からないが、言われた通り手を動かす2人にそのことは言わないでおく。
あとは昼にも使った釜で焼いていくと、仕上げにたっぷりと蜂蜜をかけてやった。
いい匂いに2人も笑顔になり、子どもたちを呼んでくるとみんなで仲良く休憩にするのだった。
42
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる