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今日は何の日
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「あ、あのっ!」
「ん?どうしました?」
お昼ご飯も終えイリスたちと後片付けをしていたのだが、何か言いたそうに両手を握り締めるシャイアに手を止めた。
「………あ、あの……わ、わたし、また、つくるの、やっ、やってみたい…です」
何のことかと思ったが、こうして料理を作りみんなに喜んでもらえたことが嬉しかったと言われ、それはよかったと微笑んだ。
まだ慣れない環境で緊張もあるだろうが、それでも楽しかったと思えることがあったなら嬉しい。
「シャイアさんがそう思ってくれて良かったです。少しずつやっていきましょう。そうですね……次はお菓子にしてみましょうか。みんなお仕事頑張っているので甘い物がいいでしょうから」
自給自足の生活では何かとやることが多いが、それでも小まめに休憩を挟むように子どもたちには言ってある。
5分でも10分でも休憩しないのとしたのでは気持ちも身体への負担も少なく、縁が遊びに来た時は時々甘い物を出してやってたりしている。
「や、やります!や、やりたい、です!」
「………………わ、私も」
小さな声ではあったがイリスもやりたいと言ったため頷いてやる。
やって欲しいと頼んだのは縁ではあるが、それはあくまでもお願いであり2人が望んでいたことではなかったので自分からやってみたいと思ってくれたのには安心した。
「シャイアさんもイリスさんもとても器用ですからきっと美味しく出来ますよ。気に入ったら時々でいいですからまたみんなに作って上げて下さいね」
自身の子どもたちには毎日おやつの時間があるが、ここにいる子どもたちにはそれも難しい。
作る人間がいないのもそうだが、そこまでの金銭的余裕と時間が足りていないのだ。
嬉しそうに頷くシャイアの頭を撫でてやると、時間まで家の掃除をすることにする。
縁も一緒にするとは思っていなかったのか、雑巾を手に窓を拭き始めた時はかなり驚かれた。
「2人は読み書きは出来るんですか?」
「……少しなら。書くのは苦手」
ある程度なら読めるらしいが、書く方は難しいらしい。
そもそも奴隷であった彼女たちが字を書くことがそうなかったらしいのでそのせいだろう。
「ならそちらも少しずつ覚えていきましょうか。大丈夫、簡単なものだけでいいですよ」
欲を言えば計算なども将来のため学んで欲しくはあるが、やりたくもないことを無理にやらせようとまでは思っていない。
最低限の読み書きさえ出来るようになってくれれば問題はないのだ。
「それは…………また私たちを売るため?」
「っ!や、やだ……」
まさかそんなことを思っていたとはおらず驚いた。
泣きそうな顔で見上げてくるシャイアに首を振ると、俯くイリスの頭も撫でてやる。
「ちがいますよ。ただ……2人が少しでいいから自分に自信を持ってもらえたらなと。あとは単純に子どもたちには難しいことを2人が補ってもらえたら嬉しいなと思ったからです」
子どもたちもいつかは大人になる。
いつかはここを旅立っていく子もいれば、居場所を求めてここを訪ねてくる子もいるかもしれない。
その時のため生きる術を縁の代わりに教え、支えていってくれる存在が必要だったのだ。
「勿論2人がここを離れ別に暮らして行きたいと思った時は言ってもらって構いません。ただ子どもたちが大きくなるまで見守ってくれてあげてくれたら嬉しいとも思ってます。そのために必要かなと思っただけですよ」
名前や味噌の販売による収入などの帳簿など子どもたちが出来ないことを頼みたかったのだ。
「わ、わたし、ここがいい、です」
「ありがとうございます。そう言ってもらえてすごく嬉しいです」
まだ来たばかりとは言え、彼女たちがここにいたいと思えるほど居心地良く感じてくれたならば何よりだ。
「さぁ、掃除はこのぐらいにして約束のお菓子を作りましょうか。簡単なものがいいですけど………あっ、焼きりんごにしましょうか。昨日アレンがたくさん採ってきてくれたみたいですし」
肉はそれほどだったみたいだが、道々見つけたとたくさん採ってきてくれていた。
帰りに愛依のためにも少し採っていこうかと話していたのだ。
2人を連れキッチンへ向かうと、縁はなるべく手を出さないようにしながら指示していく。
「そう…そうです。真ん中をくり抜いたらバターを詰め込んで……」
あくまでうろ覚えのレシピなので正しいかは分からないが、言われた通り手を動かす2人にそのことは言わないでおく。
あとは昼にも使った釜で焼いていくと、仕上げにたっぷりと蜂蜜をかけてやった。
いい匂いに2人も笑顔になり、子どもたちを呼んでくるとみんなで仲良く休憩にするのだった。
「ん?どうしました?」
お昼ご飯も終えイリスたちと後片付けをしていたのだが、何か言いたそうに両手を握り締めるシャイアに手を止めた。
「………あ、あの……わ、わたし、また、つくるの、やっ、やってみたい…です」
何のことかと思ったが、こうして料理を作りみんなに喜んでもらえたことが嬉しかったと言われ、それはよかったと微笑んだ。
まだ慣れない環境で緊張もあるだろうが、それでも楽しかったと思えることがあったなら嬉しい。
「シャイアさんがそう思ってくれて良かったです。少しずつやっていきましょう。そうですね……次はお菓子にしてみましょうか。みんなお仕事頑張っているので甘い物がいいでしょうから」
自給自足の生活では何かとやることが多いが、それでも小まめに休憩を挟むように子どもたちには言ってある。
5分でも10分でも休憩しないのとしたのでは気持ちも身体への負担も少なく、縁が遊びに来た時は時々甘い物を出してやってたりしている。
「や、やります!や、やりたい、です!」
「………………わ、私も」
小さな声ではあったがイリスもやりたいと言ったため頷いてやる。
やって欲しいと頼んだのは縁ではあるが、それはあくまでもお願いであり2人が望んでいたことではなかったので自分からやってみたいと思ってくれたのには安心した。
「シャイアさんもイリスさんもとても器用ですからきっと美味しく出来ますよ。気に入ったら時々でいいですからまたみんなに作って上げて下さいね」
自身の子どもたちには毎日おやつの時間があるが、ここにいる子どもたちにはそれも難しい。
作る人間がいないのもそうだが、そこまでの金銭的余裕と時間が足りていないのだ。
嬉しそうに頷くシャイアの頭を撫でてやると、時間まで家の掃除をすることにする。
縁も一緒にするとは思っていなかったのか、雑巾を手に窓を拭き始めた時はかなり驚かれた。
「2人は読み書きは出来るんですか?」
「……少しなら。書くのは苦手」
ある程度なら読めるらしいが、書く方は難しいらしい。
そもそも奴隷であった彼女たちが字を書くことがそうなかったらしいのでそのせいだろう。
「ならそちらも少しずつ覚えていきましょうか。大丈夫、簡単なものだけでいいですよ」
欲を言えば計算なども将来のため学んで欲しくはあるが、やりたくもないことを無理にやらせようとまでは思っていない。
最低限の読み書きさえ出来るようになってくれれば問題はないのだ。
「それは…………また私たちを売るため?」
「っ!や、やだ……」
まさかそんなことを思っていたとはおらず驚いた。
泣きそうな顔で見上げてくるシャイアに首を振ると、俯くイリスの頭も撫でてやる。
「ちがいますよ。ただ……2人が少しでいいから自分に自信を持ってもらえたらなと。あとは単純に子どもたちには難しいことを2人が補ってもらえたら嬉しいなと思ったからです」
子どもたちもいつかは大人になる。
いつかはここを旅立っていく子もいれば、居場所を求めてここを訪ねてくる子もいるかもしれない。
その時のため生きる術を縁の代わりに教え、支えていってくれる存在が必要だったのだ。
「勿論2人がここを離れ別に暮らして行きたいと思った時は言ってもらって構いません。ただ子どもたちが大きくなるまで見守ってくれてあげてくれたら嬉しいとも思ってます。そのために必要かなと思っただけですよ」
名前や味噌の販売による収入などの帳簿など子どもたちが出来ないことを頼みたかったのだ。
「わ、わたし、ここがいい、です」
「ありがとうございます。そう言ってもらえてすごく嬉しいです」
まだ来たばかりとは言え、彼女たちがここにいたいと思えるほど居心地良く感じてくれたならば何よりだ。
「さぁ、掃除はこのぐらいにして約束のお菓子を作りましょうか。簡単なものがいいですけど………あっ、焼きりんごにしましょうか。昨日アレンがたくさん採ってきてくれたみたいですし」
肉はそれほどだったみたいだが、道々見つけたとたくさん採ってきてくれていた。
帰りに愛依のためにも少し採っていこうかと話していたのだ。
2人を連れキッチンへ向かうと、縁はなるべく手を出さないようにしながら指示していく。
「そう…そうです。真ん中をくり抜いたらバターを詰め込んで……」
あくまでうろ覚えのレシピなので正しいかは分からないが、言われた通り手を動かす2人にそのことは言わないでおく。
あとは昼にも使った釜で焼いていくと、仕上げにたっぷりと蜂蜜をかけてやった。
いい匂いに2人も笑顔になり、子どもたちを呼んでくるとみんなで仲良く休憩にするのだった。
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