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おいしい、なんて………
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「今日のお昼はピザにしましょうか」
洗濯も終え、お昼にも近い時間帯になると彼がそう言ってきた。
ピザというものが何かは分からなかったが、自分なんかが文句を言うこともそれは何だと尋ねることも出来はしないため黙って後をついていく。
「イリスさんたちは何か苦手なものはあったりしますか?」
「ない………たぶん」
奴隷として碌に食事も与えられない中、その中でも特にマズくて食べられないというものはなかったが、それでも苦手な物がないかと聞かれればよく分からなかった。
「それは良かった。ならピザと……あとはフライドポテトにしましょうか。イリスさんはじゃがいもを切ってもらっていいですか?シャイアさんはピザのお手伝いをお願いします」
「…………」
「は、はいっ!」
先程合流した妹は緊張しながらもどこか張り切るように元気よく返事していた。
お願いしますと渡された包丁に固まる。
あまりにも簡単に渡されたそれは、使い方を変えれば彼を殺せるものでもあるにもかかわらず。
「これぐらいの大きさに切っていってもらえますか?少し量が多いかもしれませんがお願いしますね」
だがそんなこと考えもしていないのか、お願いしますと笑いながら離れていく姿に呆然とするしかなかった。
先程の家族という言葉といい、彼が何を考えているのか謎でしかなかった。
どうしたらいいのかとも思ったが、とりあえず言われた通り無心でじゃがいもの皮を剥いていくと大きさに切っていく。
時折りチラチラと妹の様子を確認してはいたが、彼女は彼女で一生懸命に野菜や肉やらを謎の白いものの上に盛り付けていた。
隣りでは彼が美味しそうですねと笑っている。
「よし。ではそちらはもういいのでイリスさんもこちらをお手伝いしてくれますか?」
そのまま外に連れ出されたかと思えば……
「この釜戸に先程シャイアさんが頑張って盛り付けてくれたものを入れて暫く待ちます。今後イリスさんがご飯を作る時には好きに使ってくれて構いませんからね」
その言葉に彼が本当に自分に家事をさせようというのが分かった。
態々獣人でもある自分たちを買ってまで本当に家事をさせようとは思っていなかった。
「いい感じに焼けてきたら取り出して………はい、どうぞ」
出来たてですよと渡されたそれに妹と2人固まる。
見たこともないもののため抵抗があったのもそうだが、食べ物だとして主人であるあの少年を差し置いて自分たちが先に手をつけるのは憚られた。
「味見です。みんなに食べてもらう前に変な味になっていないか確認するのも大切でしょ?」
そういうならばとビクビクしながらも一口齧ってみれば、のせられていたチーズがとろりと伸び慌てる。
「ほ、ほびたっ」
隣りでは同じように伸びるチーズに苦戦する妹の姿が。
「どうですか?」
「ん、く……お、おいしい、です。は、はじ、はじめて、たべました」
「それは良かった。シャイアさんが頑張ってくれたおかげですね」
初めて自分が作ったものを食べたせいか嬉しそうに笑っている。
「シャイアさんの手作りはどうでした?」
「……おいしかった」
妹が頑張ってくれたのだ、美味しくないわけがない。
それを抜きにしても普通に美味しかったが。
「では他の子たちにもあと数枚焼いておいてもらえますか?火傷には注意して。焦らなくていいですからね。怪我はしないようにですよ」
自分はそこまで危なっかしく見えるのだろうか?女の子なのだからとかなり真剣に言い聞かされた。
「お、おんなのこ、だからだって。へへっ」
「………変なヤツ」
妹は素直に喜んでいるが、慣れない扱いに自分は戸惑いの方が大きく素直になれなかった。
彼が今までの人間たちとは違うとは何となく分かってはいるのだが、やはり長年の辛い奴隷生活にそう簡単に信じられずにいた。
それから何枚か焼いていくと、子どもたちを呼びお昼ご飯となった。
「今日はイリスさんとシャイアさんが頑張って作ってくれました。色んな味があるのでどれが美味しかったか後で2人に教えて上げて下さいね」
「「「「はーい!」」」」
元気な返事と共にお腹を空かせた子どもたちがおいしいねと食べる姿に落ち着かずソワソワしてしまう。
「みんな喜んでくれてますね。これはイリスさんが頑張って切ってくれたじゃがいもです。食べてみて」
散々食べ慣れたイモではあったが、油で揚げたと言っていたそれはホクホクとしており味付けられた塩が合っておりなんとも美味しい。
「美味しいでしょ?みんなも喜んでくれているのでまた作って上げて下さいね」
「……………うん」
どうしていいか分からない感情に泣きそうになる。
「イリスおねぇちゃん、わたしコレ!」
「おれ肉の!」
「あたしこっち」
「ポテトもおいしかった」
「またつくってね!」
次々と嬉しそうに伝えてくる子どもたちに我慢出来ず涙を流せば、大丈夫かと心配してくれる言葉に更に涙が止まらなかった。
自分がしたことでみんながこんなに喜んでくれている。
作ってくれてありがとうと、また食べたいと言ってくれるその言葉は自分を本当に1人の人として見てくれているのだと分かり暫く涙が止まることはないのだった。
洗濯も終え、お昼にも近い時間帯になると彼がそう言ってきた。
ピザというものが何かは分からなかったが、自分なんかが文句を言うこともそれは何だと尋ねることも出来はしないため黙って後をついていく。
「イリスさんたちは何か苦手なものはあったりしますか?」
「ない………たぶん」
奴隷として碌に食事も与えられない中、その中でも特にマズくて食べられないというものはなかったが、それでも苦手な物がないかと聞かれればよく分からなかった。
「それは良かった。ならピザと……あとはフライドポテトにしましょうか。イリスさんはじゃがいもを切ってもらっていいですか?シャイアさんはピザのお手伝いをお願いします」
「…………」
「は、はいっ!」
先程合流した妹は緊張しながらもどこか張り切るように元気よく返事していた。
お願いしますと渡された包丁に固まる。
あまりにも簡単に渡されたそれは、使い方を変えれば彼を殺せるものでもあるにもかかわらず。
「これぐらいの大きさに切っていってもらえますか?少し量が多いかもしれませんがお願いしますね」
だがそんなこと考えもしていないのか、お願いしますと笑いながら離れていく姿に呆然とするしかなかった。
先程の家族という言葉といい、彼が何を考えているのか謎でしかなかった。
どうしたらいいのかとも思ったが、とりあえず言われた通り無心でじゃがいもの皮を剥いていくと大きさに切っていく。
時折りチラチラと妹の様子を確認してはいたが、彼女は彼女で一生懸命に野菜や肉やらを謎の白いものの上に盛り付けていた。
隣りでは彼が美味しそうですねと笑っている。
「よし。ではそちらはもういいのでイリスさんもこちらをお手伝いしてくれますか?」
そのまま外に連れ出されたかと思えば……
「この釜戸に先程シャイアさんが頑張って盛り付けてくれたものを入れて暫く待ちます。今後イリスさんがご飯を作る時には好きに使ってくれて構いませんからね」
その言葉に彼が本当に自分に家事をさせようというのが分かった。
態々獣人でもある自分たちを買ってまで本当に家事をさせようとは思っていなかった。
「いい感じに焼けてきたら取り出して………はい、どうぞ」
出来たてですよと渡されたそれに妹と2人固まる。
見たこともないもののため抵抗があったのもそうだが、食べ物だとして主人であるあの少年を差し置いて自分たちが先に手をつけるのは憚られた。
「味見です。みんなに食べてもらう前に変な味になっていないか確認するのも大切でしょ?」
そういうならばとビクビクしながらも一口齧ってみれば、のせられていたチーズがとろりと伸び慌てる。
「ほ、ほびたっ」
隣りでは同じように伸びるチーズに苦戦する妹の姿が。
「どうですか?」
「ん、く……お、おいしい、です。は、はじ、はじめて、たべました」
「それは良かった。シャイアさんが頑張ってくれたおかげですね」
初めて自分が作ったものを食べたせいか嬉しそうに笑っている。
「シャイアさんの手作りはどうでした?」
「……おいしかった」
妹が頑張ってくれたのだ、美味しくないわけがない。
それを抜きにしても普通に美味しかったが。
「では他の子たちにもあと数枚焼いておいてもらえますか?火傷には注意して。焦らなくていいですからね。怪我はしないようにですよ」
自分はそこまで危なっかしく見えるのだろうか?女の子なのだからとかなり真剣に言い聞かされた。
「お、おんなのこ、だからだって。へへっ」
「………変なヤツ」
妹は素直に喜んでいるが、慣れない扱いに自分は戸惑いの方が大きく素直になれなかった。
彼が今までの人間たちとは違うとは何となく分かってはいるのだが、やはり長年の辛い奴隷生活にそう簡単に信じられずにいた。
それから何枚か焼いていくと、子どもたちを呼びお昼ご飯となった。
「今日はイリスさんとシャイアさんが頑張って作ってくれました。色んな味があるのでどれが美味しかったか後で2人に教えて上げて下さいね」
「「「「はーい!」」」」
元気な返事と共にお腹を空かせた子どもたちがおいしいねと食べる姿に落ち着かずソワソワしてしまう。
「みんな喜んでくれてますね。これはイリスさんが頑張って切ってくれたじゃがいもです。食べてみて」
散々食べ慣れたイモではあったが、油で揚げたと言っていたそれはホクホクとしており味付けられた塩が合っておりなんとも美味しい。
「美味しいでしょ?みんなも喜んでくれているのでまた作って上げて下さいね」
「……………うん」
どうしていいか分からない感情に泣きそうになる。
「イリスおねぇちゃん、わたしコレ!」
「おれ肉の!」
「あたしこっち」
「ポテトもおいしかった」
「またつくってね!」
次々と嬉しそうに伝えてくる子どもたちに我慢出来ず涙を流せば、大丈夫かと心配してくれる言葉に更に涙が止まらなかった。
自分がしたことでみんながこんなに喜んでくれている。
作ってくれてありがとうと、また食べたいと言ってくれるその言葉は自分を本当に1人の人として見てくれているのだと分かり暫く涙が止まることはないのだった。
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