408 / 475
いつかは慣れる
しおりを挟む
2人を寝かせ部屋に戻れば、玲を抱え抱き付いてきたアレンを受け止める。
「遅かったな」
「また泣いてしまって。きっと明日は目蓋が腫れますね」
「構い過ぎた。そこまでしてやる必要ないだろ」
そんなことしないで俺に構えと擦り寄ってくるアレンに謝りつつベッドに腰を下ろせば、問答無用で腰を引き寄せられ膝に乗せられた。
「確かに彼女たちの主人はサウルですけど、彼もまだ子どもでどう接すればいいのか分かっていないでしょう?」
ずっと周りで見てきた獣人の扱いは、今住むこの家では当てはまらない。
サウルは出来る子であるとは思うが、だからと言ってやったこともないことをいきなりやれと言って出来るものではない。
「そうだけど………」
「彼女たちを買うと決めたのはサウルです。けど……そうやって彼に促したのは私でもあります。だったらその手助けはしてあげないと」
「分かってる」
気に食わないと言いつつも頷いてくれたアレンに感謝する。
「けど姉の方は何とかさせろ。さっき見た感じ大人しそうだったけど、初めはそうでもなかったんだろ?」
何故それを知っているんだろうか?
確かに出会い頭の彼女の態度はよろしくはなかったが。
「誰に聞いたんですか?」
「サウルってガキ」
いつの間に。
しかもサウルが態々アレンに話したことに驚いた。
「あのガキは気にくわねぇけど、縁のこと大事にしてんのは分かってる。自分はガキだから何も出来ねぇかもしんないけど、あの女が縁に何かしてきたら言ってくれって」
「あの子はまた……」
そんなこと気にしなくていいのに。
元気に育って欲しいとは思ってはいるが、そこまで急いで大人になろうとしなくていい。
縁だっていい大人なのだ。傷付かないとは言わないが軽く流すことだって出来る。
そもそも彼女の態度は妹を含めた自己防衛だ。
むしろ反抗的でも自分の意思を持っていられる彼女はとても強く………そして弱い。
「彼女泣いていたでしょ?きっとそうやって心を保っていたんですよ。自分の心も、勿論妹さんの心も」
縁がどれだけ優しく接しようが、主人なのだからと言ったところで気に食わないとはねつけることだって出来た。
人間なんか信じるかと縁を突き飛ばすことだって出来たのに彼女はしなかった。
「ルーだってそうだったでしょ?まぁ、彼の場合ロンがちょっとあれでしたけど」
自由人であったルーの行動をロンは抑えられてはいなかったようだが、最後の家族として大切に想っていたことは知っている。
性格の違いもあり比べるものではないかもしれないが、心の余裕がなく周りを警戒していのは確かだ。
「人間への不信感がなくなりはしないでしょう。それだけのことをしてきた人間を許して欲しいとも私が言えるはずもありません。でも、私たちみたいな人間もいるんだと彼女たちに知って欲しい」
「………あいつらはあのガキの奴隷だろ」
「本当にそう思ってます?」
「…………」
何より奴隷と言う言葉を彼ら獣人は嫌っているはずだ。
「ここに来た時から、サウルが彼女たちを買った瞬間から、彼女たちは奴隷ではなく仲間になりました」
本人たちにはまだ言ってはいないが縁は態度でそう彼女たちに伝えた。
受け入れてもらえるかは分からないが、その時はその時であり他の方法を考える。
「明日は玲のこともアレンのこともちゃんと紹介しましょう」
同じ獣人であるアレンがここではどう思われているのか、ここにいる子どもたちにとって獣人がどういう存在なのか、すぐに理解してもらえずとも話し合いたいと思っている。
自慢の自身の番であるアレンも、大切な大切な宝物の玲のことも。
「子どもたちが玲を見てかわいいねって言ってくれたんです。アレンおにぃちゃんといっしょでかわいいミミだねって。…………とても嬉しかった。彼女たちにもそう思ってもらえたら私はもっと嬉しい」
自分が愛した人に似た愛しい我が子。
ここにいる子どもたちも可愛いと思ってはいるが、やはり我が子とは別であり褒められれば嬉しい。
「……………はぁ、分かった。好きにしろ」
「ありがとうアレン」
「ならご褒美もあるんだろ?」
こういう所は何とも抜け目ないが、ならばと口付けすれば容赦なく舌を絡ませられるのだった。
「…………玲がいるのに」
「両親の仲がいいなら玲だって嬉しいだろ?」
子どもの前で何をするんだと怒るが、ニヤリと笑われるのだった。
「遅かったな」
「また泣いてしまって。きっと明日は目蓋が腫れますね」
「構い過ぎた。そこまでしてやる必要ないだろ」
そんなことしないで俺に構えと擦り寄ってくるアレンに謝りつつベッドに腰を下ろせば、問答無用で腰を引き寄せられ膝に乗せられた。
「確かに彼女たちの主人はサウルですけど、彼もまだ子どもでどう接すればいいのか分かっていないでしょう?」
ずっと周りで見てきた獣人の扱いは、今住むこの家では当てはまらない。
サウルは出来る子であるとは思うが、だからと言ってやったこともないことをいきなりやれと言って出来るものではない。
「そうだけど………」
「彼女たちを買うと決めたのはサウルです。けど……そうやって彼に促したのは私でもあります。だったらその手助けはしてあげないと」
「分かってる」
気に食わないと言いつつも頷いてくれたアレンに感謝する。
「けど姉の方は何とかさせろ。さっき見た感じ大人しそうだったけど、初めはそうでもなかったんだろ?」
何故それを知っているんだろうか?
確かに出会い頭の彼女の態度はよろしくはなかったが。
「誰に聞いたんですか?」
「サウルってガキ」
いつの間に。
しかもサウルが態々アレンに話したことに驚いた。
「あのガキは気にくわねぇけど、縁のこと大事にしてんのは分かってる。自分はガキだから何も出来ねぇかもしんないけど、あの女が縁に何かしてきたら言ってくれって」
「あの子はまた……」
そんなこと気にしなくていいのに。
元気に育って欲しいとは思ってはいるが、そこまで急いで大人になろうとしなくていい。
縁だっていい大人なのだ。傷付かないとは言わないが軽く流すことだって出来る。
そもそも彼女の態度は妹を含めた自己防衛だ。
むしろ反抗的でも自分の意思を持っていられる彼女はとても強く………そして弱い。
「彼女泣いていたでしょ?きっとそうやって心を保っていたんですよ。自分の心も、勿論妹さんの心も」
縁がどれだけ優しく接しようが、主人なのだからと言ったところで気に食わないとはねつけることだって出来た。
人間なんか信じるかと縁を突き飛ばすことだって出来たのに彼女はしなかった。
「ルーだってそうだったでしょ?まぁ、彼の場合ロンがちょっとあれでしたけど」
自由人であったルーの行動をロンは抑えられてはいなかったようだが、最後の家族として大切に想っていたことは知っている。
性格の違いもあり比べるものではないかもしれないが、心の余裕がなく周りを警戒していのは確かだ。
「人間への不信感がなくなりはしないでしょう。それだけのことをしてきた人間を許して欲しいとも私が言えるはずもありません。でも、私たちみたいな人間もいるんだと彼女たちに知って欲しい」
「………あいつらはあのガキの奴隷だろ」
「本当にそう思ってます?」
「…………」
何より奴隷と言う言葉を彼ら獣人は嫌っているはずだ。
「ここに来た時から、サウルが彼女たちを買った瞬間から、彼女たちは奴隷ではなく仲間になりました」
本人たちにはまだ言ってはいないが縁は態度でそう彼女たちに伝えた。
受け入れてもらえるかは分からないが、その時はその時であり他の方法を考える。
「明日は玲のこともアレンのこともちゃんと紹介しましょう」
同じ獣人であるアレンがここではどう思われているのか、ここにいる子どもたちにとって獣人がどういう存在なのか、すぐに理解してもらえずとも話し合いたいと思っている。
自慢の自身の番であるアレンも、大切な大切な宝物の玲のことも。
「子どもたちが玲を見てかわいいねって言ってくれたんです。アレンおにぃちゃんといっしょでかわいいミミだねって。…………とても嬉しかった。彼女たちにもそう思ってもらえたら私はもっと嬉しい」
自分が愛した人に似た愛しい我が子。
ここにいる子どもたちも可愛いと思ってはいるが、やはり我が子とは別であり褒められれば嬉しい。
「……………はぁ、分かった。好きにしろ」
「ありがとうアレン」
「ならご褒美もあるんだろ?」
こういう所は何とも抜け目ないが、ならばと口付けすれば容赦なく舌を絡ませられるのだった。
「…………玲がいるのに」
「両親の仲がいいなら玲だって嬉しいだろ?」
子どもの前で何をするんだと怒るが、ニヤリと笑われるのだった。
31
お気に入りに追加
3,728
あなたにおすすめの小説


僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる