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類は友を呼ぶ
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気まずい。それはもうかなり。
「ふぅむ」
「……おかわり入れましょうか?」
「すまないね。お願いするよ」
お茶のお代わりを入れようと席を立つが、その視線が縁から外れることはない。
この人物が部屋に現れてからというもの、ジッと観察するように縁だけを見てくる。
まるで動物園の動物にでもなったようだ。
あまりに見てくるため、もしや不審人物にでも思われているのかとも思ったが、終始にこやかに笑っている上に縁が出したお茶もケーキも警戒することなく手をつけていることからそれはないだろう。
「エニシくんだったかな?以前は依頼を受けてくれてありがとう。とても助かったよ。挨拶が遅れたが私がーー」
「その気持ち悪い喋り方やめなさい。全身鳥肌が立つ」
「そういうお前もだろ。ま、いいわ、アルバトロスじゃ。アルでも、ジジイでもなんでもいいわい」
一気にガラが悪くなった。
物語りに出てくる魔法使いのローブようなものを着た白髪白髭のお爺さんはにこにこと笑っていればとても素敵な老紳士なのだが、マーガレットたちの影響なのかとんでもなく顔に似合わない話し方だった。
「よろしくお願いします。おじ…ジンさんたちにはいつもよくしてもらってます」
「こいつらが誰かをこれだけ可愛いがるとはな。お前さんどんな魔法使ったんじゃ?」
使ってない。断じて使ってない。
「よく分かりませんが、お2人共とても優しいですよ。マーガレットさんは照れると怒るのが可愛いらしいですし、ジンさんは……少々暴走気味ですがうちの子をとても可愛いがってくれてます」
「お前さん本当に十代か?」
十代です。外見は。
とは言えず、にっこり笑って頷いておく。
「にしても話しを聞いた時は耳を疑ったが、本当にお前さんがその坊を産んだんか?」
未だぐっすりと眠りにつく繋にアルバトロスが信じられないというように見てくるため、ならば見やすいようにと隣に座るジンに繋を頼めば、これまたニコニコとダラシな…嬉しそうに抱っこしアルバトロスに見せている。
アルバトロスはそんなジンを何だコイツとばかりに気持ち悪そうに見ていたが。
「見たところ普通の赤子じゃな。名は?」
「繋と名付けました」
「こやつが人の子を抱く日が来るとはな。どれ、私にも抱っこさせてくれ」
「断る!!」
ジンは即座にそう返すと一気にアルバトロスから距離をとった。
「ケチなジジイじゃい」
「ジジイがジジイ言うな!」
「おうおう、酷いジジイじゃて。こんなジジイやめて儂の孫にならんか?」
何の話しだ。
逸れていく話しについていけない。
「えーーと?あ、そういえばここに来る前に薬草を摘んで来たんです。以前のお詫び、と言っては何ですが良ければどうーー」
「やはり儂の孫にならんか!!」
合間を見ては採取していたので量はそれなりにあった。
以前依頼を断ったことへのお詫びにとそれを渡せば、喜んでくれたのか大興奮のアルバトロスにガシッと腕を掴まれた。
「私らの孫だって言ってんだろ!」
「それはズルいじゃろ!儂にも分けろ!」
「誰が渡すか!」
もう何が何やら。
言い合う3人を放置し、治まるまでエルと仲良くお茶をしておくことにする。
「みなさん元気ですねぇ」
「元気過ぎでしょ。ってか、あの人何なの?あの2人相手に言い合うって中々ーーちょ、マジ!?ムチ!ムチ持ってる!」
いつの間に取り出したのか片手に武器を構えるジンとマーガレットに、アルバトロスも対抗するように鞭を取り出していた。
いやいや、本当に何者ですか!?
「いいだろう。久々に相手してやるよ。表に出なっ!」
「エニシくんもケイちゃんも渡さねぇ。潰す!」
「ほほほ、まだまだお前さんらに負ける儂じゃあるまいて。どれ、ちょっくら指導してやろうかの」
元とはいえ、冒険者というのはどうしてこうも喧嘩っ早い生き物なのだろうか。
自分には到底無理だと呆れてしまう。
「諍いするのは構いませんが、それなら私たちは帰らせてもらいますからね」
「ダメに決まってんだろ!」
「それはダメだよ!」
「主役がいなくなったらダメじゃろ」
だったら喧嘩はやめなさい。
未だ繋を抱えたままのジンに手を伸ばせば、さすがにマズかったと気付いたのか素直に渡してくれた。
「別にいいんですよ?私は特にここにいる理由もありませんし、3人が仲良くしたいというのであれば止めはしませんから」
「「………」」
「この2人相手に何とも剛毅じゃな」
「迷惑料として薬草を返してもらっても?」
「すまなんだ」
もう何でここにいるのか本気で分からなくなってきた。
いくら時間があったとは言え、態々マーガレットたちが縁をアルバトロスと会わせたのだから何か意味があるのだろうと思っていた。
なのにそんな話しをするどころか、縁を置き去りにして言い争う3人に少々腹立たしくもあった。
「それで?アルバトロスさん……ああ、アル爺でいいですか?それで、アル爺に会わせたのには何か理由があるんですよね?」
あるなら早く話せと机を叩けば、3人は慌てて席に着くのであった。
「ふぅむ」
「……おかわり入れましょうか?」
「すまないね。お願いするよ」
お茶のお代わりを入れようと席を立つが、その視線が縁から外れることはない。
この人物が部屋に現れてからというもの、ジッと観察するように縁だけを見てくる。
まるで動物園の動物にでもなったようだ。
あまりに見てくるため、もしや不審人物にでも思われているのかとも思ったが、終始にこやかに笑っている上に縁が出したお茶もケーキも警戒することなく手をつけていることからそれはないだろう。
「エニシくんだったかな?以前は依頼を受けてくれてありがとう。とても助かったよ。挨拶が遅れたが私がーー」
「その気持ち悪い喋り方やめなさい。全身鳥肌が立つ」
「そういうお前もだろ。ま、いいわ、アルバトロスじゃ。アルでも、ジジイでもなんでもいいわい」
一気にガラが悪くなった。
物語りに出てくる魔法使いのローブようなものを着た白髪白髭のお爺さんはにこにこと笑っていればとても素敵な老紳士なのだが、マーガレットたちの影響なのかとんでもなく顔に似合わない話し方だった。
「よろしくお願いします。おじ…ジンさんたちにはいつもよくしてもらってます」
「こいつらが誰かをこれだけ可愛いがるとはな。お前さんどんな魔法使ったんじゃ?」
使ってない。断じて使ってない。
「よく分かりませんが、お2人共とても優しいですよ。マーガレットさんは照れると怒るのが可愛いらしいですし、ジンさんは……少々暴走気味ですがうちの子をとても可愛いがってくれてます」
「お前さん本当に十代か?」
十代です。外見は。
とは言えず、にっこり笑って頷いておく。
「にしても話しを聞いた時は耳を疑ったが、本当にお前さんがその坊を産んだんか?」
未だぐっすりと眠りにつく繋にアルバトロスが信じられないというように見てくるため、ならば見やすいようにと隣に座るジンに繋を頼めば、これまたニコニコとダラシな…嬉しそうに抱っこしアルバトロスに見せている。
アルバトロスはそんなジンを何だコイツとばかりに気持ち悪そうに見ていたが。
「見たところ普通の赤子じゃな。名は?」
「繋と名付けました」
「こやつが人の子を抱く日が来るとはな。どれ、私にも抱っこさせてくれ」
「断る!!」
ジンは即座にそう返すと一気にアルバトロスから距離をとった。
「ケチなジジイじゃい」
「ジジイがジジイ言うな!」
「おうおう、酷いジジイじゃて。こんなジジイやめて儂の孫にならんか?」
何の話しだ。
逸れていく話しについていけない。
「えーーと?あ、そういえばここに来る前に薬草を摘んで来たんです。以前のお詫び、と言っては何ですが良ければどうーー」
「やはり儂の孫にならんか!!」
合間を見ては採取していたので量はそれなりにあった。
以前依頼を断ったことへのお詫びにとそれを渡せば、喜んでくれたのか大興奮のアルバトロスにガシッと腕を掴まれた。
「私らの孫だって言ってんだろ!」
「それはズルいじゃろ!儂にも分けろ!」
「誰が渡すか!」
もう何が何やら。
言い合う3人を放置し、治まるまでエルと仲良くお茶をしておくことにする。
「みなさん元気ですねぇ」
「元気過ぎでしょ。ってか、あの人何なの?あの2人相手に言い合うって中々ーーちょ、マジ!?ムチ!ムチ持ってる!」
いつの間に取り出したのか片手に武器を構えるジンとマーガレットに、アルバトロスも対抗するように鞭を取り出していた。
いやいや、本当に何者ですか!?
「いいだろう。久々に相手してやるよ。表に出なっ!」
「エニシくんもケイちゃんも渡さねぇ。潰す!」
「ほほほ、まだまだお前さんらに負ける儂じゃあるまいて。どれ、ちょっくら指導してやろうかの」
元とはいえ、冒険者というのはどうしてこうも喧嘩っ早い生き物なのだろうか。
自分には到底無理だと呆れてしまう。
「諍いするのは構いませんが、それなら私たちは帰らせてもらいますからね」
「ダメに決まってんだろ!」
「それはダメだよ!」
「主役がいなくなったらダメじゃろ」
だったら喧嘩はやめなさい。
未だ繋を抱えたままのジンに手を伸ばせば、さすがにマズかったと気付いたのか素直に渡してくれた。
「別にいいんですよ?私は特にここにいる理由もありませんし、3人が仲良くしたいというのであれば止めはしませんから」
「「………」」
「この2人相手に何とも剛毅じゃな」
「迷惑料として薬草を返してもらっても?」
「すまなんだ」
もう何でここにいるのか本気で分からなくなってきた。
いくら時間があったとは言え、態々マーガレットたちが縁をアルバトロスと会わせたのだから何か意味があるのだろうと思っていた。
なのにそんな話しをするどころか、縁を置き去りにして言い争う3人に少々腹立たしくもあった。
「それで?アルバトロスさん……ああ、アル爺でいいですか?それで、アル爺に会わせたのには何か理由があるんですよね?」
あるなら早く話せと机を叩けば、3人は慌てて席に着くのであった。
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