二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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初耳です

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 ♾にしておいた?何を?魔力を。

 「それは……どういうことですか?」

 何となくそれが異常なことは分かったが、それによってどうなるかはよく分かっていなかった。

 「運動するにも人は体力をつかいますよね。それと一緒です。魔法を使うには魔力を使いますがそれも無限ではありません。走り過ぎて息切れを起こすように魔法を使う者も魔力が底を着けば魔力切れを起こし、魔族であれば身体の機能が止まり死に至ることもあります」

 「……つまり魔力が♾である私はそんな制限はなく、好きな時に好きなだけ使えるということですね」

 本来ならないはずであり、あったとしても有限であった魔力を彼らは縁のために限界をなくしてくれたということだ。

 「いいんでしょうか?そんな特別待遇」

 「それに関してはコイツが勝手にやったことなので貴方が気にすることはありません。むしろ有効活用してもらえれば助かります(私が)」

 そう言い指差されたコイツと呼ばれた神さまは、ぷっくりと頰を膨らませている。

 「だって!縁さんが危ない目に合わないようにって。アルだって反対しなかったじゃない」

 「だから別に責めてはいないでしょう?縁さんに気にしないで下さいと言っているだけです」

 「むぅ~~」

 確かに明確にお前が悪いと言っているわけではない。
 わけではないが、言い方が責めているのだ。

 「そこまでにしてあげて下さい。大丈夫。そこまで考えてくれて私はとても嬉しいですよ」

 自分だけいいのかな?とは思ったが、それも縁の身を案じてだと言われれば感謝しかない。
 ありがとうと言えば、今度は逆に神さまがアルにどうだとばかりに鼻で笑っている。
 アルの額に青筋が。
 この2人はどうやらケンカするのが日常茶飯事のようだ。
 逆に言えばこうして言い合えることはいいことなのかもしれないが。
 
 「こらこらケンカはダメですよ。2人共私のことを想って色々してくれたんですよね?本当にありがとうございます。たくさん使えるように頑張りますね」

 2人の想いに応えるためにも頑張ると言えば、ケンカをやめ嬉しそうに笑うのだった。

 「それにしても随分長居してしまいましたね。2人にも色々と手間をかけさせてしまって申し訳ないです」

 そもそも最初にちゃんと話しを聞いていなかったのが悪いのに、2人共そんなこと一言も言わず丁寧に教えてくれた。
 頼りっきりで申し訳ないと言えば、ブンブンと音が鳴りそうなほど首を振られる。

 「そ、そんなこと気にしないで。僕は縁さんの力になりたいだけだから!」

 「そうです。そもそもコイツが縁さんに迷惑かけたのですからそんなこと気にせずもっと頼って下さい。……私もその方が嬉しいです」

 アルは随分素直になったものだと笑い、何度目か分からぬ礼を述べる。

 「ではお言葉に甘えてまた来ますね。今度は3人でお茶でもしましょう」

 「うん!」
 「はい」

 喜んでと笑う2人に挨拶すると、元の世界に戻してもらう。

 「会わないうちに2人も随分変わったものです」

 「え?何ですか?」

 ふとそう呟いた縁に反応したのは、隣で縁と同じくお祈りしていたリックだった。

 「何でもありませんよ。リックはちゃんとお祈りできましたか?」

 「ちゃんと…かは分かりませんが、出来たと思います」

 お祈りに正しいも何もないだろう。
 想いがこもっていればどんな状況でも、どんな場所でも構わないはずだ。
 ならば問題ないと頷けば、エルを迎えに教会を後にするのだった。

 「では時間も時間なので今日はここまでにしましょうか。次は何をしたいか考えておいて下さい。あと、服装はもっと…みすぼらしい?いえ、もっとこう、あー、お金がかかってないものにして下さい」

 王子に言うような言葉ではないが、それでも目立つ服装にもう少し加減してくれと言えば不思議な顔をしながらも頷くのであった。

 「エルは神さまに何か祈ったことはありますか?」

 「なにそれ?ないよそんなの」

 「ですよね」

 いきなりの縁からの質問にエルが不思議そうに首を傾げる。
 魔族であるエルにとって神に何かを祈ること事態きっと意味が分からないのだろう。
 縁もそうだ。いや、そうだった。
 彼らに会うまでは。
 あんなに懸命に縁に尽くしてくれる2人には申し訳ないが、前世で死ぬまでは神さまなんて嫌いだった。
 突如として両親を失った縁に神は何もしてくれなかったのだから。
 もちろん今ではそれが彼らのせいではないと理解しているし、今こうして幸せなのだから感謝している。
 だが、それでも心のどこかで何故あの時助けてくれなかったのだと思ってしまう気持ちもあるのだ。
 交通事故から帰ってきた両親の身体は傷だらけで、瞳を閉じた青白い顔は見たこともないほど無表情だった。
 いつも笑顔でおかえりと言ってくれた2人はもうどこにもいない。
 仕事が休みの日は一緒にキャッチボールをしてくれた父。
 毎日美味しいご飯を作ってくれた母。
 大好きだと、大切だと笑って言ってくれた両親はもうどこにもおらず、しかし幼かった縁はそれを理解できるほど心が強くなかった。
 両親が死んだことを受け入れられず毎日家の周りを探し回った。
 お父さん!、お母さん!と泣きながら探して、探して、探し回って、そんなこと数日続けていたがそんなこと長く続くわけもなく力尽きて倒れたのを近所の人に助けられ病院に運ばれたのであった。
 それから数日後、漸く退院した縁は母親の弟である叔父の家に引き取られた。
 落ち込む縁を元気つけてくれたのが当時警察官であった叔父だったのだ。
 何度も願って、願って、いくら祈っても叶えてくれない神さまなど縁は信じなかった。
 あれだけ願っても叶えてくれない神さまなどではなく、こうして現実に、泣き続ける縁を元気づけてくれる叔父こそ神のようだと、彼の意志を継ぎ警察官になったのであった。
 
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