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ごめんね
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会いに行くと約束していたにもかかわらず色々あり忘れ去っていた縁は教会に向かうことにした。
「ごめん。オレここから先に入れない」
門の前、嫌そうに顔を歪めるエルにならば仕方ないと待っててもらうことにしリックを連れ中に入る。
魔族のエルには神聖な場所である教会は辛いのだろう。
「お祈りは?」
「ありません。そういう行事も業務も参加させてもらえなくて…」
俯くリックに、ならば今からいくらでもすればいいと言えば頷いていた。
小さいが掃除が行き届いている中は古さからいってもとても綺麗で、前方中心部におかれた神を模ったという石像は縁も知る少年の姿と重なった。
近くにいた神父に挨拶をし石像に近づく。
正しいお祈りの仕方など知らなかったが、その場に膝をつくと両手を胸の前で合わせる。
元気にしているかな?と思いながらも目を閉じれば、その瞬間世界が真っ白になりあの世界に戻ってきたのだと分かった。
「えにしさーーん!」
そんな涙声の大きな声に懐かしさを感じた。
「お久しぶりです。元気にしていましたか?」
突撃するがごとく抱きついてきた少年を受け止め挨拶すれば、案の定涙や鼻水でぐちゃぐちゃの顔を上げこくこくと頷く姿が。
「お久しぶりです」
「アルくんも元気そうですね。会いに来るのが遅れてしまってごめんなさい」
おいでおいでと手招きすれば、恥ずかしそうにしながらもアルも抱きついてくる。
アズと暮らしているせいか若干2人への扱いが小さい子へのそれだった。
「2人のおかげで毎日楽しく過ごせてます。ありがとうございます」
「よかったぁぁぁ」
「貴方に喜んでもらえたなら私も嬉しいです。ずっと心配してましたが楽しいならよかった」
この機会をくれた2人には感謝してもしきれない。
ありがとうと縁も2人を抱きしめる。
「色々ありましたが、とても幸せですよ。男性ですが伴侶もできましたし、血は繋がってませんが可愛い子どももできました」
「知ってる。ずっと縁さんといられるなんて羨ましい」
「……知ってる?」
話したことはなかったがなぜ?と首を傾げる縁がどういうことかと聞こうとするがーー
「そんなことより渡したマジックバックはどうでしたか?役立ちそうなものを色々入れておいたんですが……」
「大変助かりました。コレ本当に凄いですね。あちらでは冷蔵庫みたいなものがなかったので腐らず保管できたのは有り難かったです。それに見た目以上に入りますしね」
某猫型ロボットみたいだと思ったが、出てくるものにそんな近未来的なものはない。
「縁さんの助けになれたなら良かったです。護身用に武器なども入れておいたのですがよく考えたら縁さんには持てそうにないものだと後から気付いてしまって……すいませんでした」
若干話を逸らされた気もしたが、申し訳ないと謝るアルにそんなこと吹き飛んでしまう。
そんなことない、大丈夫だありがとうと礼を述べればアルも頷いてくれる。
「魔法はどうでした?日本ではなかったものですが慣れれば生活もかなり楽になるでしょう?」
「……あ」
すっかり忘れていた。
アズと一緒にエルに習おうとは思っていたが、自分に才能かあるか不安だったのだ。
「すいません、まだ使ったことがなくて。そもそも私って魔法使えたんですかね?特に杖も何も持ってないんですが」
やはり魔法使いというのが実感出来ず、縁の中では魔法使い=白髪の三角帽子被ったおばあちゃんが毒々しい色の鍋を掻き混ぜている光景しか思い浮かばなかったのである。
「(やはりか……)使えますよ。(というか使えるようにしました)人間では使える者は限られてきますが、縁さんは全ての属性が使えます」
「属性?」
昔若い子が言っていたツンデレ属性?とかいうやつだろうか?
と、やはり斜め上をいく発想をしている縁であった。
「(以前にも説明しましたが)魔法にも四大元素である火・水・土・風があります。もちろん火は炎を操り、水は水源がない所でも水を出すことができますので最悪…なことは起こってほしくありませんが最悪何もない所でも生活できます」
何と便利なものをくれたことか。
人間水さえあれば暫くは生きていけるというが、その水に困らないというのはとても嬉しかった。
これで何かあってもアズたちを死なすことはないと。
「他にも闇魔法や聖魔法などもありますがそれはおいおい話していきましょう」
どうやら今後も色々と教えてくれるらしいアルに感謝し、ではどうすれば使えるのか聞いていく。
ーーが
「念じて下さい。基本魔法というものはその人が想像、こうしたいああしたいという念で魔力を具現化しているんです」
そんなことでいいのだろうか?
そんなお手軽に出来てしまっていいのだろうか?
「と言うのは簡単ですが、やはり人それぞれ考え方も想いも違うのでみんながみんな出来るものではないですし、そもそも魔力がないと出来ないので出来る人は限られてきます」
どうやら全ての人間が出来るわけではないらしい。
そう言わればジークたち獣人で使っている人はいなかったと言えば、獣人には魔力がないらしい。
その分身体能力がかなり高く、戦闘力が高いという。
逆にエルやアズのような魔族は見た目は人間とさほど変わらないが魔力が高いためそれで全てを補えるらしい。
と、そこまで教えてもらうといかに人間が弱く他の種族に劣っているのかが分かる。
それなのにあれほど偉そうにふんぞり返っている人間には驚いたものだ。
「人間の中にも使える者もいますが、元々魔法特化型として生まれてきた魔族には勝てるわけありません」
ならば自分もか?と思ったが、そこはそれ神さまによる恩恵によってえらいことになっているらしい。
「縁さんが困らないように魔力♾にしておいたよ!」
「え?」
それはマズイのでは?
「ごめん。オレここから先に入れない」
門の前、嫌そうに顔を歪めるエルにならば仕方ないと待っててもらうことにしリックを連れ中に入る。
魔族のエルには神聖な場所である教会は辛いのだろう。
「お祈りは?」
「ありません。そういう行事も業務も参加させてもらえなくて…」
俯くリックに、ならば今からいくらでもすればいいと言えば頷いていた。
小さいが掃除が行き届いている中は古さからいってもとても綺麗で、前方中心部におかれた神を模ったという石像は縁も知る少年の姿と重なった。
近くにいた神父に挨拶をし石像に近づく。
正しいお祈りの仕方など知らなかったが、その場に膝をつくと両手を胸の前で合わせる。
元気にしているかな?と思いながらも目を閉じれば、その瞬間世界が真っ白になりあの世界に戻ってきたのだと分かった。
「えにしさーーん!」
そんな涙声の大きな声に懐かしさを感じた。
「お久しぶりです。元気にしていましたか?」
突撃するがごとく抱きついてきた少年を受け止め挨拶すれば、案の定涙や鼻水でぐちゃぐちゃの顔を上げこくこくと頷く姿が。
「お久しぶりです」
「アルくんも元気そうですね。会いに来るのが遅れてしまってごめんなさい」
おいでおいでと手招きすれば、恥ずかしそうにしながらもアルも抱きついてくる。
アズと暮らしているせいか若干2人への扱いが小さい子へのそれだった。
「2人のおかげで毎日楽しく過ごせてます。ありがとうございます」
「よかったぁぁぁ」
「貴方に喜んでもらえたなら私も嬉しいです。ずっと心配してましたが楽しいならよかった」
この機会をくれた2人には感謝してもしきれない。
ありがとうと縁も2人を抱きしめる。
「色々ありましたが、とても幸せですよ。男性ですが伴侶もできましたし、血は繋がってませんが可愛い子どももできました」
「知ってる。ずっと縁さんといられるなんて羨ましい」
「……知ってる?」
話したことはなかったがなぜ?と首を傾げる縁がどういうことかと聞こうとするがーー
「そんなことより渡したマジックバックはどうでしたか?役立ちそうなものを色々入れておいたんですが……」
「大変助かりました。コレ本当に凄いですね。あちらでは冷蔵庫みたいなものがなかったので腐らず保管できたのは有り難かったです。それに見た目以上に入りますしね」
某猫型ロボットみたいだと思ったが、出てくるものにそんな近未来的なものはない。
「縁さんの助けになれたなら良かったです。護身用に武器なども入れておいたのですがよく考えたら縁さんには持てそうにないものだと後から気付いてしまって……すいませんでした」
若干話を逸らされた気もしたが、申し訳ないと謝るアルにそんなこと吹き飛んでしまう。
そんなことない、大丈夫だありがとうと礼を述べればアルも頷いてくれる。
「魔法はどうでした?日本ではなかったものですが慣れれば生活もかなり楽になるでしょう?」
「……あ」
すっかり忘れていた。
アズと一緒にエルに習おうとは思っていたが、自分に才能かあるか不安だったのだ。
「すいません、まだ使ったことがなくて。そもそも私って魔法使えたんですかね?特に杖も何も持ってないんですが」
やはり魔法使いというのが実感出来ず、縁の中では魔法使い=白髪の三角帽子被ったおばあちゃんが毒々しい色の鍋を掻き混ぜている光景しか思い浮かばなかったのである。
「(やはりか……)使えますよ。(というか使えるようにしました)人間では使える者は限られてきますが、縁さんは全ての属性が使えます」
「属性?」
昔若い子が言っていたツンデレ属性?とかいうやつだろうか?
と、やはり斜め上をいく発想をしている縁であった。
「(以前にも説明しましたが)魔法にも四大元素である火・水・土・風があります。もちろん火は炎を操り、水は水源がない所でも水を出すことができますので最悪…なことは起こってほしくありませんが最悪何もない所でも生活できます」
何と便利なものをくれたことか。
人間水さえあれば暫くは生きていけるというが、その水に困らないというのはとても嬉しかった。
これで何かあってもアズたちを死なすことはないと。
「他にも闇魔法や聖魔法などもありますがそれはおいおい話していきましょう」
どうやら今後も色々と教えてくれるらしいアルに感謝し、ではどうすれば使えるのか聞いていく。
ーーが
「念じて下さい。基本魔法というものはその人が想像、こうしたいああしたいという念で魔力を具現化しているんです」
そんなことでいいのだろうか?
そんなお手軽に出来てしまっていいのだろうか?
「と言うのは簡単ですが、やはり人それぞれ考え方も想いも違うのでみんながみんな出来るものではないですし、そもそも魔力がないと出来ないので出来る人は限られてきます」
どうやら全ての人間が出来るわけではないらしい。
そう言わればジークたち獣人で使っている人はいなかったと言えば、獣人には魔力がないらしい。
その分身体能力がかなり高く、戦闘力が高いという。
逆にエルやアズのような魔族は見た目は人間とさほど変わらないが魔力が高いためそれで全てを補えるらしい。
と、そこまで教えてもらうといかに人間が弱く他の種族に劣っているのかが分かる。
それなのにあれほど偉そうにふんぞり返っている人間には驚いたものだ。
「人間の中にも使える者もいますが、元々魔法特化型として生まれてきた魔族には勝てるわけありません」
ならば自分もか?と思ったが、そこはそれ神さまによる恩恵によってえらいことになっているらしい。
「縁さんが困らないように魔力♾にしておいたよ!」
「え?」
それはマズイのでは?
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