二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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喜んでもらえて何より

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 みんなの頑張りにより出来上がった料理を食堂へ運びこんで行けば、すでにシンクが机に待機していた。

 「お仕事大丈夫なんですか?」

 「もち!ソッコーで終わらしてきたッス!」

 いい笑顔だ。
 余程楽しみにしていたらしい。

 「待ってて下さいね。全て運んだらみなさんで食べましょう」

 あと少しだと言えばシンクも率先して運ぶのを手伝ってくれた。
 
 「これが塩胡椒で味付けして素揚げしたもので他にも胡麻をまぶして揚げたものもあります。こちらは生のものを薄切りにしてサラダにのせてありますので一緒に食べて見てください。ご飯は昆布と一緒に炊いて焼いてほぐした魚の身を混ぜてありますし、スープには魚の他にあさりも入っているので美味しい出汁がでていると思いますよ。もちろん焼いたものもあるので色々食べてみて下さい」

 普段なら一人前ずつ皿に盛って出しているのだが、今回は新しいものばかりで皆の好みが分からなかったため大皿に各料理を盛り付けて食べたい料理を自分で好きなだけ盛ってもらうことにしていた。

 「やばっ、やばい!もうやばい!うまいッス~~」

 叫ぶシンクのテンションがおかしい。
 大きな声でそう叫んだかと思えば、それからは話すのも惜しいとばかりに黙々とご飯をかきこんでいた。

 「なんだアイツ?」
 「あれは…大丈夫なのか?」
 「うっせぇなぁ」
 「おいしい!」

 唯一アズだけがそんなシンクを無視し、美味しい魚料理を味わっていた。

 「こっちにはアズが獲ってくれた貝も入ってますからね」

 「うん!」

 やはり自分で獲ったのが嬉しかったのかスープをおかわりしていた。
 一応お肉も用意しておいたのだが、思いの外みんな魚料理を気に入ってくれたらしく殆どの料理が完売していた。
 その上最後に残っていたものはシンクが全て綺麗に平らげてくれ、あの細身の身体のどこにそれほど入っているのか摩訶不思議である。

 「すっーーーーげーーーーうまかったッス!また作って欲しいッス!」

 全て食べ終え若干お腹をポッコリさせながらそう言うシンクに笑ってしまったが、喜んでもらえてなによりとまた機会があればと約束するのであった。

 「うまかった!」

 「初めて食べたものばかりだったが美味かった」

 「お前すげぇな」

 3人もとても喜んでくれ、みんなで頑張ったかいがあったというものである。
 アズも普段しないおかわりをしていることから喜んでくれているのは分かった。
 それから後片付けを済ませると風呂に入りアズを寝かしつける。
 お腹いっぱい食べ、温かい風呂に入ったせいかいつもより寝つきが早かった。
 アレンたちとベッドの上で寛いでいると、自然膝に乗せられるのは何故だろう。
 風呂上がりのホカホカのセインの胸に背を預ければ、正面に座るアレンに足を抱えられ撫でられる。

 「みなさんに喜んでもらえて良かったです。私は簡単なものしか作れないので上手く出来るか不安だったんですけどみなさんのおかげですね」

 縁1人ではきっと無理だった作業も、みんなが手伝ってくれたおかげであんなに喜んでもらえた。
 感謝しかない。
 
 「それもそうだが、縁が提案してくれなければそもそも出来てなかった料理だろ?もっと自信をーー?」

 「セイン?」

 いきなり言葉が途切れたセインにどうしたかと振り向けば、しばらくジッと自身の手を見つめた後なんでもないと笑っていた。

 「どこか具合が?」

 「いや……大丈夫だ」

 笑う顔はいつものセインなのだが、どこかぎこちなく感じるのは縁の気のせいだろうか?

 「すまないが、ジークに用があったのを思い出したから縁たちは先に寝ててくれ」

 それだけ言うと縁たちの返事も待たずセインは部屋を出て行ってしまった。

 「………」

 「大丈夫だ。言われた通り俺たちは先に寝よう」

 いつにないセインの態度に不安になった縁は立ち上がると、アレンにアズを任せ部屋を出る。
 アレンの引きとめる声は聞こえてはいたが無視した。
 ジークに用があると言っていたのを思い出し部屋を訪ねるが、セインは来てないと言われてしまう。

 「どうかしたか?」

 「……分かりません。セインが急に部屋を出ていってしまって……」

 「お前を残してか?それは……あーー、もしかしてきたか?」

 きた?何が?
 顔に出ていたのだろう。ジークがすぐさま教えてくれる。

 「発情期だよ」

 「ーーあっ」

 言われて初めて気づいた。
 そう言われればずっと言っていたではないか。
 もうすぐだと。近いんだと。
 だが何故?

 「そうだとしてセインは何故部屋を出て行ったんですか?私がいるのに。私はセインのーー」

 「番、だからだろ?」

 「え?」

 どういう意味だろう?
 
 「お前のことを考えてギリギリまで粘ろうとしてるんじゃねぇか?普段でさえあれだ。発情期の獣人相手にお前がそう保たないと思ってギリギリまで我慢しようとしてんだろ。お前が…縁のことがそんだけ大事だってことだ」

 「………なんですかそれ」

 意味が分からない。
 本当になんだそれ。
 そんなバカなことセインは考えてたのか。
 だが、そんなバカなことと言いながらそんなに縁を思ってくれていたのが嬉しくて仕方がなく、泣きそうになるのを必死に耐える。

 「アイツがいるとしたら隔離部屋だろう。…行ってやれ」

 「はい!後をお願いします」

 それから一度部屋に戻り用意しておいた鞄を引っ掴むと隔離部屋に向かい走るのだった。



 
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