二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

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魚食べたい

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 「………すごっ」

 数日後、腰も無事完治したが鞄に魚を放置していたことを思い出し「あ、魚腐ったかも!」と慌てて出してみれば、そこには今獲ってきたと言わんばかりの魚たちの姿が。

 「随分優秀な鞄さんだったんでね~」

 「……縁はやっぱり縁だな」

 「ん?」

 そこで初めてマジックバックの凄さを通過した縁であったが、それでも凄いな~ぐらいの感想しかなく他の使い道を知る由もなかった。

 「昆布は出汁をとって、魚は……とりあえず焼いてみますか」

 もうどれが何の魚か分からない縁は、じゃあ焼いてみればいいかと大雑把さを発揮していた。
 魚が食べられればそれで良かったのである。

 「緑色の魚って……大丈夫なんですか?」

 「美味いよ?」
 「これが一番美味しいんだから!」
 「今日は魚!」

 普段魚をあまり口することはないらしいが、それでもみんな魚は好きらしく、焼いて食べようと言った時にはとても喜んでいた。
 縁も魚を捌くことは出来たが危ないからダメと、獣人仲間の過保護な理由で断念した。
 仕方なくアズと仲良く魚を捌くみんなを見守りながらジュースを作る縁であった。

 「ママおさかなすき?」

 「好きですねぇ」

  「じゃあアズもおさかなとる!」

 魚が好きだという縁のために頑張るというアズが可愛い過ぎてツライ!!

 「ありがとうございます。じゃあ今度行った時はみんなで魚をとってみましょう」

 「がんばる!」

 アズ可愛いなぁと思っている縁たが、そんな2人の会話をさらに周りの人たちが微笑ましく見てるいるなど気付いていない2人であった。

 「今日のメシ魚ってほんとッスかっ!」

 「「「「「………」」」」」

 バンッ!と調理場の戸が開いたかと思えば、そう叫びながら入ってくる人の姿が。

 「おはようございます。シンクさん」

 「エニシさん!おはようございますッス」

 魚を探しているのかキョロキョロと周りを見回すシンクに挨拶すれば、そこで初めて縁がいることに気付いたのかシンクも挨拶を返してくる。

 「魚!今日は魚ってほんとッスか?」

 鬼気迫る顔で近づいてくるシンクに、しかし縁はのほほんとしたものだった。

 「そうですよ。この間獲ってきたものが無事だったようなので今日のご飯はお魚です」

 「よっしゃー!魚!オイラの大きいヤツにしてほしいッス!」

 シンクはかなり魚が好きなようだ。

 「なら今日の夜はシンクさんのために魚づくしにしましょうか」

 「マジッスか!やった!俺、仕事頑張ってくるッス~~」

 これまた叫びながら調理場を後にするのであった。

 「「「「「……すげぇ」」」」」

 誰もがシンクのテンションに引いていた。
 もちろん縁を外してだが。

 「随分喜んでましたね~」

 「「「「「………(それでいいのか?)」」」」」

 本当はお昼に焼いて食べようと思ったのだが、シンクのためにも夜に魚をいっぱい使って食べてもらうことにする。
 あれだけ期待されれば頑張るしかないと、魚の説明を聞きながら出来るだけ縁も手伝いながら調理することに。

 「そちらの淡白な味のものは一口大にして塩胡椒をして素揚げにしましょう。胡麻をまぶしても美味しいかもしれません。味か濃いものはそのままでも美味しいと思うので野菜と一緒に薄切りにしてサラダに。あとは焼いた魚をほぐして炊きたてのご飯に混ぜましょう。ご飯には昆布を入れて炊けば旨味が出ます。汁物がないので量は少ないですがアズと獲ってきたあさりと魚でスープも作りましょう。それでも物足りない人のためお肉も焼いて……どうしました?」

  何故か静かにこちらを見るみんなに首を傾げる。

 「「「美味そう!」」」
 「「「美味しそう!」」」

 アレンたちが頑張ってくれたため魚は量がある。
 簡単ではあるが使えるだけ使って色々食べれたらと思ったのだが、思いの外喜んでもらえたようだ。

 「お昼はいつも通りになってしまいますが、その代わり夜は豪華に。今から下準備しておけば後は楽なはずです。私も出来るだけお手伝いしますので一緒に頑張りましょう」

 「「「「「おー!」」」」」

 ノリがいい人たちだ。
 アズも手伝いたいと言うのでサラダ作りを手伝ってもらうことにした。
 手早く昼食を済ませるとみんなで下準備を始める。

 「「「「「………」」」」」

 普段見ることのない黙々と作業する姿に、縁も安易に声をかけることが出来ずチラチラと様子を伺いながらも作業を進める。
 いつもならもっと和気あいあいと話しながら作っているのだがあまりにも静かなみんなに、もしかして面倒なことを押し付けてしまったかと申し訳なさに落ち込んでいれば、ふっと頭に何が触れた。

 「……ジーク?」

 「どうした?」

 昼食を食べ終えてすぐ調理場に籠ってしまった縁に心配で様子を見にきてくれたらしい。
 いつもの賑やかさはなく黙々と作業する仲間たちの異様な姿に驚き、次いで端の方で落ち込んだように俯きながら作業する縁に何かあったかと頭を撫でてくれたようだ。

 「あの……夕食の準備を」

 「今からか?」

 食べ終えたばかりだろと言われれば、確かにこれは縁が提案した魚料理のせいであるため何も言えない。
 シンクには申し訳ないが諦めてもらうしかない。

 「……やっぱりやめた方がーー」

 「え!やめちゃうの!?」
 「うそっ、食べたいのに!」
 「俺、頑張るからさ!」
 「私も頑張るから!」
 「俺も食べたい!」

 「………」

 「……って、言ってるぞ?」

 必死に縁を引きとめる声たちにジークは呆れていたが、縁はホッとした。
 面倒なことさせられていると嫌われたらどうしようかと思っていたのだ。
 
 「だいたいお前ら静かすぎて怖ぇんだよ。いつものムダなおしゃべりはどうした?」

 「あ、ひどい。ムダじゃないです!」
 「そうそう。為になる話し!」
 「しゃべりながらの方が楽しいし」
 
 「ならしゃべれよ。黙ってたら縁が心配すんだろ」

 「「「「「……あ」」」」」

 こちらを見るみんなに苦笑いすると、一斉に駆け寄ってきた。
 出来上がりを想像し、集中するあまり無言になっていたのに気づいてなかったようだ。
 ごめん、ごめんなさいと謝るみんなに大丈夫だと返すと、今度はお話ししながら作ろうと言えばみんな笑顔で頷いてくれるのであった。
 
 
 
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