36 / 475
心配
しおりを挟む
サッズとシンクに頼まれ木苺を探しにきたのはいいのだが、目を離したはしからエニシが危険物ばかりとってくるのにジークは呆れはてていた。
自信満々に差し出してくる姿はめちゃくちゃかわい……おもしろいが心配で仕方がない。
「美味しいかと思ったんですが……」
どこをどう見たら美味そうに見えたのか。
一見して毒々しいとしか言えないものをそれはそれは楽しそうに摘もうとする。
目が離せない。
「それにしてもアズは随分ジークに懐きましたね」
先程から抱っこしてやりながら歩く2人にエニシは嬉しそうだった。
確かに最初は怯えられていたが、今では違和感なく抱っこされているアズに嬉しくなり頭を撫でてやる。
血は繋がっていないと言ってはいたが、その懐きようにアズがエニシを慕っているのは分かっていた。
叶うことがなかった子どもの存在に自然と顔が弛む。
仲間の子どもたちを抱っこしたこともあったが、何かが違う気がするのは何故だろう。
自分の感情を持て余しながらも、木苺がなる場所に案内してやれば目の前に広がる色とりどりの花畑にエニシは綺麗と呟きながら歩きだそうとしてーー
バタンッ!
転けた。それも顔面から。綺麗に。
「……お前は、どれだけ俺の予想を裏切れば気が済むんだ?」
目の前に広がる花畑に足下をしっかり見てなかったのだろう。
顔面から花畑に突っ込んでいったエニシは、しかし花が下敷きになったおかげかさほど怪我らしい怪我はなく、少々鼻を擦りむいたくらいだ。
「少し赤くなってんな。まぁ、すぐ治んだろ」
花まみれになったエニシを救出してやると、少し赤くなっている鼻を撫でてやる。
「すいません。花に見惚れてました。それにしても綺麗な場所ですね」
「っ!そ、そうか?まぁ、女共はよく来てるみたいだがな」
綺麗だと目の前で微笑むエニシにドキッとした。
怪我を確かめるのに近づいた顔にわけもなく心が騒めく。
このままでは危ないと素早く離れると、心配顔だったアズをエニシのそばに下ろしてやる。
「ママいたい?」
「大丈夫、少し擦っただけですよ。こんなのすぐ治ります。ジークも言っていたでしょう?」
ね?とこちらを見る2人に、戸惑う心を隠しながらも頷いてやる。
安心したのか笑うアズを、エニシは地べたに座る自分の膝に乗せてやると花を何本か摘みだした。
なにをしているんだと近づき、手元を覗き込めばなにやら器用に花を潰さぬよう茎の部分を編み込んでいた。
「器用なもんだな」
「昔、母に覚えさせられました」
覚えたではなく、覚えさせられたというエニシに笑ってしまった。
その手際の良さにアズと2人で魅入っていれば、完成です!と言葉と共にアズの頭に乗せられた。
「花冠です。可愛いでしょう?」
「あぁ、似合ってるな」
アズの白い髪に色とりどりの花はとても似合っており、アズの可愛いさを引き立たせていた。
頭に乗っているため見えないアズは不思議そうだったが、似合うと言われて嬉しいのか自分も作りたいと言い出した。
ならば3人で作ろうとエニシに教えられながら作ってみるが、体格もさることながら手も大きいジークには上手く編み込むことはできなかった。
逆にアズは器用なもので、小さい手を駆使しながら一生懸命編んでいく。
自分のは早々に諦め2人のものを眺めていると、できた!とアズが嬉しそうに縁に見せていた。
「これママにあげる」
力作を頭に乗せれば、エニシも嬉しそうにありがとうとアズを抱きしめてやる。
血が繋がっておらずともどこの誰より家族らしく見えた。
「では、これはジークに。お揃いです」
乗せられた花冠に似合いませんねと笑われ、外そうと思ったがお揃いという言葉に手を止めた。
周りからはどう見える分からない。
それでもジークにはそれが家族のようだと聞こえて、中途半端に上げていた手を下ろすのだった。
それからお土産にとエニシが少し花を摘むと、周りに生えていた木苺も手早く取っていく。
「これだけあれば大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ。足りないっつったらまたくればいいしな」
森にいる他の動物たちのためにも全てを取ることはせず、取ったものを貰った籠に詰めていく。
「お前ら町で暮らしてのか?家は?なんならもうしばらくあそこにいてもいいぞ」
気付けばそう言っていた。
「………」
沈黙が痛い。
「ま、まぁ、嫌ならべつにいいけどなっ。ベッドは固いし、メシだって町の方が美味いだろーー」
「いいんですか!」
前のめりに聞いてくるエニシに驚いたが、その目はキラキラと輝いていた。
「よかった。どうやって頼もうかと考えてたんです。町には色々あって便利ですけど、やはりアズたちには辛いだろうと思って。なにより私があの場所を気に入っています」
あんな場所に住んでみたかっと言われれば、頑張って改造して良かったと思える。
確かにエニシにはいいかもしれないが、アレンやセイン、アズには町は生きづらかろう。
その主人であり、家族でもあるエニシがいいというなら彼らも問題はないだろう。
なんとなく言ったことだったが、こうしてまだエニシたちと過ごすことができるのだと思えば言った自分を褒めてやりたいと思うジークなのであった。
自信満々に差し出してくる姿はめちゃくちゃかわい……おもしろいが心配で仕方がない。
「美味しいかと思ったんですが……」
どこをどう見たら美味そうに見えたのか。
一見して毒々しいとしか言えないものをそれはそれは楽しそうに摘もうとする。
目が離せない。
「それにしてもアズは随分ジークに懐きましたね」
先程から抱っこしてやりながら歩く2人にエニシは嬉しそうだった。
確かに最初は怯えられていたが、今では違和感なく抱っこされているアズに嬉しくなり頭を撫でてやる。
血は繋がっていないと言ってはいたが、その懐きようにアズがエニシを慕っているのは分かっていた。
叶うことがなかった子どもの存在に自然と顔が弛む。
仲間の子どもたちを抱っこしたこともあったが、何かが違う気がするのは何故だろう。
自分の感情を持て余しながらも、木苺がなる場所に案内してやれば目の前に広がる色とりどりの花畑にエニシは綺麗と呟きながら歩きだそうとしてーー
バタンッ!
転けた。それも顔面から。綺麗に。
「……お前は、どれだけ俺の予想を裏切れば気が済むんだ?」
目の前に広がる花畑に足下をしっかり見てなかったのだろう。
顔面から花畑に突っ込んでいったエニシは、しかし花が下敷きになったおかげかさほど怪我らしい怪我はなく、少々鼻を擦りむいたくらいだ。
「少し赤くなってんな。まぁ、すぐ治んだろ」
花まみれになったエニシを救出してやると、少し赤くなっている鼻を撫でてやる。
「すいません。花に見惚れてました。それにしても綺麗な場所ですね」
「っ!そ、そうか?まぁ、女共はよく来てるみたいだがな」
綺麗だと目の前で微笑むエニシにドキッとした。
怪我を確かめるのに近づいた顔にわけもなく心が騒めく。
このままでは危ないと素早く離れると、心配顔だったアズをエニシのそばに下ろしてやる。
「ママいたい?」
「大丈夫、少し擦っただけですよ。こんなのすぐ治ります。ジークも言っていたでしょう?」
ね?とこちらを見る2人に、戸惑う心を隠しながらも頷いてやる。
安心したのか笑うアズを、エニシは地べたに座る自分の膝に乗せてやると花を何本か摘みだした。
なにをしているんだと近づき、手元を覗き込めばなにやら器用に花を潰さぬよう茎の部分を編み込んでいた。
「器用なもんだな」
「昔、母に覚えさせられました」
覚えたではなく、覚えさせられたというエニシに笑ってしまった。
その手際の良さにアズと2人で魅入っていれば、完成です!と言葉と共にアズの頭に乗せられた。
「花冠です。可愛いでしょう?」
「あぁ、似合ってるな」
アズの白い髪に色とりどりの花はとても似合っており、アズの可愛いさを引き立たせていた。
頭に乗っているため見えないアズは不思議そうだったが、似合うと言われて嬉しいのか自分も作りたいと言い出した。
ならば3人で作ろうとエニシに教えられながら作ってみるが、体格もさることながら手も大きいジークには上手く編み込むことはできなかった。
逆にアズは器用なもので、小さい手を駆使しながら一生懸命編んでいく。
自分のは早々に諦め2人のものを眺めていると、できた!とアズが嬉しそうに縁に見せていた。
「これママにあげる」
力作を頭に乗せれば、エニシも嬉しそうにありがとうとアズを抱きしめてやる。
血が繋がっておらずともどこの誰より家族らしく見えた。
「では、これはジークに。お揃いです」
乗せられた花冠に似合いませんねと笑われ、外そうと思ったがお揃いという言葉に手を止めた。
周りからはどう見える分からない。
それでもジークにはそれが家族のようだと聞こえて、中途半端に上げていた手を下ろすのだった。
それからお土産にとエニシが少し花を摘むと、周りに生えていた木苺も手早く取っていく。
「これだけあれば大丈夫ですかね?」
「大丈夫だろ。足りないっつったらまたくればいいしな」
森にいる他の動物たちのためにも全てを取ることはせず、取ったものを貰った籠に詰めていく。
「お前ら町で暮らしてのか?家は?なんならもうしばらくあそこにいてもいいぞ」
気付けばそう言っていた。
「………」
沈黙が痛い。
「ま、まぁ、嫌ならべつにいいけどなっ。ベッドは固いし、メシだって町の方が美味いだろーー」
「いいんですか!」
前のめりに聞いてくるエニシに驚いたが、その目はキラキラと輝いていた。
「よかった。どうやって頼もうかと考えてたんです。町には色々あって便利ですけど、やはりアズたちには辛いだろうと思って。なにより私があの場所を気に入っています」
あんな場所に住んでみたかっと言われれば、頑張って改造して良かったと思える。
確かにエニシにはいいかもしれないが、アレンやセイン、アズには町は生きづらかろう。
その主人であり、家族でもあるエニシがいいというなら彼らも問題はないだろう。
なんとなく言ったことだったが、こうしてまだエニシたちと過ごすことができるのだと思えば言った自分を褒めてやりたいと思うジークなのであった。
88
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる