二度目の人生ゆったりと⁇

minmi

文字の大きさ
上 下
37 / 475

よかった

しおりを挟む
 蹲る2人の少年。

 「可愛いすぎるんですけどーー!」

 「もう、もう!あの人はなんなんですか!」

 床をゴロゴロと転がりヤバイヤバイと叫ぶ少年。
 もうもう!と床を叩くのは銀髪のアルであった。

 「花冠って!縁さんが一番似合ってるから!」

 「舞い散る花にあの笑顔。ぜひとも写真に納めたかった」

 いつものように仲良く縁の様子を覗いて(もはや隠さない)いた2人は花畑にダイブする辺りから可愛い縁の姿に悶えて仕方なかった。
 はたから見れば芋虫のようだ。
 
 「あぁやばい背中痛い」

 「私は手が痛いです」

 あの姿にしたのは自分たちとはいえ、あまりの縁の可愛いさに2人共人格崩壊寸前である。

 「……しかし、あの人のおかげで少しは危機感を持ってくれればいいんですが」

 放っておけば何をするか分からない縁は、嬉々として見慣れぬキノコやら何やらにすぐ手を出してしまう。
 一緒にいるはずの番たちは注意するにはするのだが、いかんせん弱い(意志が)。
 それに比べ、年齢的にも森で育った知識の多さでもジークは番2人には優っており、危ないことははっきり危ないと叱ってやれるのだ。
 頼もしい存在にこれで少しは落ち着いてほしいと思うアルであった。

 「それは僕も思うけど、でも、あーでもやっぱりイヤ。あーでも、縁さんに危ない目にあってほしくないし~」

 また始まった。
 うぜぇ。

 「だから聞こえてるって!」

 「だから知ってるっつってんでしょ!」

 日増しにアルの言葉遣いが悪くなっていく気がする神であった。

 「だいたいあの馬鹿王子はなんですか!あの馬鹿のせいであの獣人とも会うことになったんです。貴方が作った馬鹿のせいでこうなったんですから全て貴方のせいでしょう!」

 「それは…そうだけど。でも、でもでも別に僕があいつを馬鹿に作ったわけじゃないもん!あいつが自分で勝手に馬鹿に育っただけで、別に僕が馬鹿になるようにあいつを作ったわけじゃないもん!」

 確かにあの世界を作るにあたり、必要な人間などは作るには作ったが、そこから先は作られた人間の人生であり、自分で自分のことを決定していくのだ。
 時々、神の神託として言葉を授けることもあるがそれ自体は些細なものだ。
 人間たちが間違った解釈をしても何も言えず、間違ってるよと正すこともできない。
 実際、獣人のことに関しても面白そうという思いだけで作ったが、人間たちによってあんなに冷遇されるとは思っていなかったのである。
 人間より遥かに優れているにも関わらず自分たちより下と見なし、自分たちが神かのように振る舞う人間たちには呆れたものだった。
 獣人たちが日々怯え慎ましく生きる中、己の私利私欲のために人を騙し、奪い、殺す醜い人間の姿には辟易していた。
 だからと言ってはなんだが、縁の優しさに触れ、側にいると癒される。

 「そうですね。私も言い過ぎました。が、結果的に愚かな人間を作りだしたのは貴方にはかわりないので、やはり貴方のせいです」

 「だから僕じゃなくてあいつら馬鹿の責任でしょ!ったく、あいつらのせいで縁さんにまで嫌われたらどうしてくれるんだよ、あいつらーー!」

 自業自得だろうが。
 再び蹲るバカは放っておくと、アルはどこからともなくカメラを取り出す。
 パシャパシャと音をさせながら3人仲良く花冠を被った姿を撮る、撮る、撮りまくる。
 主に縁を中心に。
 時々アズとジークに微笑む3人を。
 迷うことなくシャッターを切る姿はどこぞのカメラマンのようであった。

 「……僕も写真ほしい」

 「ならちゃんと仕事して下さいね」

 「はい」

 仕事をちゃんとするのであれば恵んでやらんでもないというアルに頷くしかない神であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

偽物の番は溺愛に怯える

にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』 最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。 まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...