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絶対に離れない
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縁に言ったことは半分嘘だった。
付けてもらった従属の首輪は親の形見であるわけないし、捨てられたか置いてかれたか覚えてないと言ったが本当は覚えている。
親は人間に捕まりそうだったのを自分が助かりたいがためにアレンを奴隷商人に売り飛ばしたのだ。
子どもだからと油断していたのだろう。
すぐに首輪を付けられることはなく、隙をついて商人の元から逃げ出した。
追っ手から逃れるため森の中に入り、姿を隠しながらも体力が続く限り走り続けた。
しかしまだ5歳の子どもが森の中で一人で暮らすには難しく、すぐに生き倒れてしまったところをあの大蛇に拾われたのだ。
最初は餌にでもされるかと思ったが、大蛇は倒れて動かないアレンを甲斐甲斐しく世話してくれた。
何とか体調もよくなり、身振り手振りで礼を言えば子どもを褒めるかのようにその長い舌で舐められた。
それからは大蛇を本当の親のように慕い、少しでも役に立とうと近くで木の実や薬草を取っている時だった。
食べ物を探しに来たのだろう、種族が違えど同じ耳と尻尾を持つ獣人の仲間を見つけた。
嬉しさに近寄ろうとすれば相手も気付いたようで、こちらを見る瞳が驚きに見開かれる。
「あの…」
「近寄るなっ!!」
「っ!?」
鋭い叫びと共になにかが投げつけられ、額に痛みが走った。
驚き額に触れてみれば少しだが手に血がついていた。
「……なんで」
訳がわからず目の前の男の獣人を見れば、恐怖に引きつった表情でこちらを見ている。
よく考えれば分かることだったが、その時アレンの後ろには一緒に採取に来ていた大蛇がおり、男は大蛇に怯えていたのだ。
牽制するように投げられた石はしかし大蛇には届かず、運悪くその前にいたアレンの額に石が当たった。
幼かったアレンは仲間であるはずの獣人に気付けられたショックと恐怖で後ずさると逃げるようにその場を走り去ったのだった。
それからは人間だけでなく、獣人さえ敵だと考え家族である大蛇たちを守れるよう必死に強くなる努力をした。
そして数年、それなりに強くなったと感じていた時にアレンの親でもある大蛇の卵が盗まれるという事件がおきた。
もう少しで兄弟の誕生だと喜んでいたアレンと、親である大蛇は必死に森を探し回った。
だが森は広い。不安ではあったが二手に分かれ探しているとしばらくして強い血の匂いがした。
慌てて駆けつければ血塗れで横たわる大蛇と、目の前には探していたはずの卵があった。
大丈夫かと怪我の様子を診れば、その太い首の後ろには深々と槍が刺さっている。
出血量からいって助からないのはすぐに分かった。
「ごめん。ごめんなさい。俺が、俺がもっと早く駆けつけてればーー」
「シャァーシャァー」
痛むだろう身体を必死に動かすと、お前のせいじゃないとばかりに泣き出しそうなアレンの頰を舐めてくれる。
しばらくそうして大人しく舐められていれば、ふいに大蛇が頭を上げシャァーシャァーと何処かに向かって鳴き始めた。
「なに?」
どうしたのかと問うが大蛇は鳴き続ける。まるで誰かを呼ぶかのように。
そうして現れたのがエニシだった。
人間が何の用だと警戒したが、エニシは大蛇を怖がる様子もなく、逆に鳴き続ける大蛇を心配するように近付いてきた。
「どうしました?」
「卵がどうしました?どこか割れていましたか?」
キズでもあったのかと綺麗に洗うエニシの姿に、こんな綺麗な人間もいるのかと驚いた。
それはその綺麗な整った容姿だけでなく、大蛇に怖がることなく見上げるその瞳に、本気で心配してくれているのだろうその表情に。
エニシのその姿全てが輝いて見えた。
大蛇の大きい胴体でエニシはアレンに気づいてなかったようだが。
「お前にその子を託したいそうだ」
気付けばそう声をかけていた。
いきなり声をかけたせいか驚いたエニシが倒れそうになるのを腰を掴んでおさえた。
あまりの細さに確かめるように撫でてしまったが、エニシは気付いたようで離れようとするのを捕まえ離さない。
どういことかと説明を求めるエニシに大蛇はもう助からないことを伝えれば、驚きなんとかしようと腕の中で暴れ出したため落ち着けと抱き込む。
「可哀想か?何も出来ず辛いか?ならコイツの最期の願いをきいてやってくれ」
卵を差し出したということは、この先の子どものことをエニシに頼んでいるということは分かっていた。
アレンにとっては兄弟になるのだ。
自分が大蛇の代わりに育てようと思っていたが、エニシと一緒に育てられるならそれ以上はないだろう。
卵を受け取り、お疲れ様でしたと優しく大蛇の頭を撫でるエニシはまるで女神のように美しく目を離すことができない。
人間も獣人も信用できないとずっと思っていた。
でもエニシなら、エニシならば大丈夫だと思えた。
相手は同じ男だとか、自分は忌み嫌われる獣人だとか、そんなことどうでもいいと思えるくらいエニシが愛おしく思えて仕方がなかった。
だから誓ったのだ。
風に舞っていく亡骸に、エニシと必ず幸せになってみせるからと。
残された子どもをエニシと一緒に大切に育ててみせると。
これまで愛情深く育ててくれた恩ある大蛇に、アレンはエニシとずっと一緒にいることを誓ったのだった。
付けてもらった従属の首輪は親の形見であるわけないし、捨てられたか置いてかれたか覚えてないと言ったが本当は覚えている。
親は人間に捕まりそうだったのを自分が助かりたいがためにアレンを奴隷商人に売り飛ばしたのだ。
子どもだからと油断していたのだろう。
すぐに首輪を付けられることはなく、隙をついて商人の元から逃げ出した。
追っ手から逃れるため森の中に入り、姿を隠しながらも体力が続く限り走り続けた。
しかしまだ5歳の子どもが森の中で一人で暮らすには難しく、すぐに生き倒れてしまったところをあの大蛇に拾われたのだ。
最初は餌にでもされるかと思ったが、大蛇は倒れて動かないアレンを甲斐甲斐しく世話してくれた。
何とか体調もよくなり、身振り手振りで礼を言えば子どもを褒めるかのようにその長い舌で舐められた。
それからは大蛇を本当の親のように慕い、少しでも役に立とうと近くで木の実や薬草を取っている時だった。
食べ物を探しに来たのだろう、種族が違えど同じ耳と尻尾を持つ獣人の仲間を見つけた。
嬉しさに近寄ろうとすれば相手も気付いたようで、こちらを見る瞳が驚きに見開かれる。
「あの…」
「近寄るなっ!!」
「っ!?」
鋭い叫びと共になにかが投げつけられ、額に痛みが走った。
驚き額に触れてみれば少しだが手に血がついていた。
「……なんで」
訳がわからず目の前の男の獣人を見れば、恐怖に引きつった表情でこちらを見ている。
よく考えれば分かることだったが、その時アレンの後ろには一緒に採取に来ていた大蛇がおり、男は大蛇に怯えていたのだ。
牽制するように投げられた石はしかし大蛇には届かず、運悪くその前にいたアレンの額に石が当たった。
幼かったアレンは仲間であるはずの獣人に気付けられたショックと恐怖で後ずさると逃げるようにその場を走り去ったのだった。
それからは人間だけでなく、獣人さえ敵だと考え家族である大蛇たちを守れるよう必死に強くなる努力をした。
そして数年、それなりに強くなったと感じていた時にアレンの親でもある大蛇の卵が盗まれるという事件がおきた。
もう少しで兄弟の誕生だと喜んでいたアレンと、親である大蛇は必死に森を探し回った。
だが森は広い。不安ではあったが二手に分かれ探しているとしばらくして強い血の匂いがした。
慌てて駆けつければ血塗れで横たわる大蛇と、目の前には探していたはずの卵があった。
大丈夫かと怪我の様子を診れば、その太い首の後ろには深々と槍が刺さっている。
出血量からいって助からないのはすぐに分かった。
「ごめん。ごめんなさい。俺が、俺がもっと早く駆けつけてればーー」
「シャァーシャァー」
痛むだろう身体を必死に動かすと、お前のせいじゃないとばかりに泣き出しそうなアレンの頰を舐めてくれる。
しばらくそうして大人しく舐められていれば、ふいに大蛇が頭を上げシャァーシャァーと何処かに向かって鳴き始めた。
「なに?」
どうしたのかと問うが大蛇は鳴き続ける。まるで誰かを呼ぶかのように。
そうして現れたのがエニシだった。
人間が何の用だと警戒したが、エニシは大蛇を怖がる様子もなく、逆に鳴き続ける大蛇を心配するように近付いてきた。
「どうしました?」
「卵がどうしました?どこか割れていましたか?」
キズでもあったのかと綺麗に洗うエニシの姿に、こんな綺麗な人間もいるのかと驚いた。
それはその綺麗な整った容姿だけでなく、大蛇に怖がることなく見上げるその瞳に、本気で心配してくれているのだろうその表情に。
エニシのその姿全てが輝いて見えた。
大蛇の大きい胴体でエニシはアレンに気づいてなかったようだが。
「お前にその子を託したいそうだ」
気付けばそう声をかけていた。
いきなり声をかけたせいか驚いたエニシが倒れそうになるのを腰を掴んでおさえた。
あまりの細さに確かめるように撫でてしまったが、エニシは気付いたようで離れようとするのを捕まえ離さない。
どういことかと説明を求めるエニシに大蛇はもう助からないことを伝えれば、驚きなんとかしようと腕の中で暴れ出したため落ち着けと抱き込む。
「可哀想か?何も出来ず辛いか?ならコイツの最期の願いをきいてやってくれ」
卵を差し出したということは、この先の子どものことをエニシに頼んでいるということは分かっていた。
アレンにとっては兄弟になるのだ。
自分が大蛇の代わりに育てようと思っていたが、エニシと一緒に育てられるならそれ以上はないだろう。
卵を受け取り、お疲れ様でしたと優しく大蛇の頭を撫でるエニシはまるで女神のように美しく目を離すことができない。
人間も獣人も信用できないとずっと思っていた。
でもエニシなら、エニシならば大丈夫だと思えた。
相手は同じ男だとか、自分は忌み嫌われる獣人だとか、そんなことどうでもいいと思えるくらいエニシが愛おしく思えて仕方がなかった。
だから誓ったのだ。
風に舞っていく亡骸に、エニシと必ず幸せになってみせるからと。
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