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しおりを挟む「―――寒いな」
あと3時間後には世界が滅亡するという時間に、俺は学校へと来ていた。
ため息と共に口から吐き出した息は白い煙となって空に消える。マフラーを鼻まで持ち上げて校門に手をかけた。毎日潜っていた立派な門は開きっぱなしで、中に入ると暗く、閑散としていた。
キィと、古めかしい音を鳴らしながら校門が開く。何だかイケないことをしているみたいで、クスリと笑みが漏れた。
「……にしても、マジ寒い」
仕事どころじゃなくなったからか学校には人の気配が微塵もなくて、校門同様校舎の鍵も掛かっていなく容易に入ることが出来た。
しかし、1月という冬ドンピシャな季節。どれだけ防寒していたとしても、寒い。夜なのも相まって尋常じゃない程寒い。寒い。寒い。さむ…、
「……やべー、自分から来たのに馬鹿みたいじゃん」
まとめると、何だかちょっとヤバくなるくらい寒い、ってこと。
苦笑を洩らしながら階段を登る。手袋をしたままの手でカイロを擦って、登りきった先にあるドアを開いた。
「……………寒ッ!」
思わず肩を抱いて叫んだ。
久しぶりに来た屋上はやっぱり変わらなくて。冷気に体を震わせながら、柵に手をかけて下を眺めた。
暗く、街の電灯しか明かりが灯っていない街の景色は、あの人と見た景色とは全然違ったけど。それでも鮮明に思い浮かぶあの時の景色。
『ーー何だ、お前も夕陽を見に来たのか?』
夕暮れ時の太陽。真っ赤に燃えるそれをバックに、無邪気に笑ったあの人は最高に格好良かった。
その頃イジメにあっていた俺は、逃げ込んだ屋上であの人と出逢ったんだ。
今思えばあの時既に俺は恋に落ちていたのだろう。一目惚れ、なんて…小学生じゃあるまいし。何て気付いたときに思ったけど、しょうがないよね。だって…、
「……、なんだもん」
これ以上ないほどに。
だって、あの人が俺の『最愛』なんだから。
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