銃と少女と紅い百合

久藤レン

文字の大きさ
上 下
101 / 113
私がいたいのは

10-11 双子と脚マン

しおりを挟む


 双子の少女、フーカとライカは両足に鎧殻を装備し全身を黒い戦闘スーツで包んだ男と対峙する。その様子だけを見れば闘いになどなる筈もない。か弱い少女と武装した兵士。

 しかし彼女達は異能の少女。

「うおぉおお! 行くぞフーカ!」

「おっけい、ライカ!」

 双子は同時に攻撃を開始する。

ライカは頭上に飛び上がり回転しつつ襲い掛かり、男の頭に踵落としを。フーカは低く走り足を狙う。男はそれに対して腰を低く構えると、右足を高く上げて地面に叩きつける。地面を抉る衝撃と爆音。陥没する地面と鉄の脚からの衝撃で近づこうとしたフーカは吹き飛ぶ。そして男の顔のヘルメットの一つ目のカメラアイがライカをギロリと睨んだ。空中から踵落としを試みるライカに向け、大木と見違える程の太さの脚による上段蹴りが放たれた。

「びゅびゅ~ん」

 踵落としと蹴り上げがぶつかり合う刹那、フーカの声が聞こえるとライカの軌道が空中で変わる。男の蹴りを空かすようライカは男を飛び越えて後ろへズレた。フーカの起こす風で押し出された事による予想もつかない動き。

「おりゃぁあ!!!」

 ライカの回転の勢いは止まっていない。むしろ風により増した回転の力を乗せた渾身の踵落としを男の後頭部へ叩き込む。ブチ込んだ踵と後頭部から電光が光る。バリバリバリと激しい音が弾けた。これがライカの電撃の能力。

「どーだ!」

 一撃を決め着地したライカが振り返ると鉄の塊が目の前に迫る。

バゴォン!!

 ライカの居た位置が爆ぜる。男が叩きつけた脚によって。電撃を意に介さず振り上げた脚をライカへ振り返ると同時に叩きつけた。

「あっぶな~ ライカ気を付けてよ~」

「あはは~ ! あれで気を失わないなんて、中々やるじゃん!」

 少し離れた所でフーカがライカの手を引いてしゃがんでいる。ギリギリの所でフーカが風と共に引っ張って移動し回避に間に合っていた。だが男の脚は止まらない。
双子に一気に距離を詰めると男は二人に蹴りによる攻撃を繰り返す。

「おわっと!」

 その威力は凄まじく、もし少女達に掠りでもすればその部位は間違いなく破壊されるだろう。しかし

「ひょいっと」

 少女達には当たらない。フーカの風、それに加え一人では回避し切れない攻撃も互いが手を引き合い、足場になり、お互いがお互いに必要な動きでサポートし合い汗一つ流す事なく余裕の表情で躱し続ける。
一心同体の華麗な動きはまるで楽しそうに踊っているだけにも見えてしまう。そして。

「ライカ! 久しぶりにアレ使うよ!!」

「おっけ! やっちゃおう!!」

 当たれば一撃で命に届きうる攻撃に晒されながら二人は笑いながら言う。二人はパーカーのポケットから何かを取り出した。手にしたのは薄い黄緑色をした綺麗な羽だった。その先端は鋭く尖り銀色に鈍く輝く。形だけ見れば羽根ペンのようなそれを二人が片手に5本ずつ握る。

「多分固くて刺さらないからライカ~ 頼んだよ~」

「おまかせッ!!」

 そこから再び双子が攻めに出た。ライカは男の正面へ、フーカは少し遠回りに男の背後に回る。男は迫るライカを迎撃する為脚に力を込める。脚を包む装甲が光る。そしてライカが間合いに入ろうかというその瞬間───

「あらよっと!」

 男の攻撃範囲のギリギリ外で急停止したライカは男の顔へ人差し指を突きつける。そこから黄色く輝く雷撃が放たれた。電撃と閃光が男を襲う、が指先から発射されるそれは男に届く前に拡散し、少し男の目をくらまし痺れさせるだけだった。

ザザザッ

 しかし流れた電流によって男の顔を覆うマスクに異常が起こる。マスクの中央のカメラアイを通して外を見るその映像にノイズが走った。軽度な痺れと視界の異常に男は右手を上げてマスクの上から顔を覆い仰け反った。

「ライカ!! 今だよ!!」

 その隙を見逃さなかったフーカが叫ぶ。

「シュート!!」

 それを合図に二人は手にしていた羽を投げる。美しい羽を靡かせてそれは飛ぶ。そしてフーカは目を閉じ右手を天に掲げた。彼女が操る風は舞う羽を狙いへ導く。

ダダダダダダッ!

 羽の針は仰け反った男の右脇、首筋。ぶ厚い戦闘スーツの装甲の隙間へ吸い込まれるよう突き刺さる。

「ツっ!?」
 
 男はその痛みに驚くがそのダメージは大したことはない。細く鋭い針だが浅く刺さっただけに過ぎない。それを確認すると男は距離の近いライカに迫ろうとするが。

「フェザーダーツ、時雨が用意してくれた僕達専用の武器だよ」

 背後のフーカが口を開く。

「刺さった瞬間に反撃じゃなくて、すぐに抜くべきだったね~ それフェザーダーツは ライカの為の・・・」

「避雷針だ!!!」

 叫んだのはライカ、いつの間にか高くジャンプして飛び上がり男の真上に居た。

「いっけ~ ライカ~ 10万ボルト~!!」

 両手を上げるフーカ。

「ピーカーチューっ! っじゃなくて羽の雷撃プルームヴォルト!!!」

 ライカが宙で全身から電撃を放つ。その雷撃は先程のように霧散することなく真っ直ぐ男に向かって疾走する。男に刺さる羽へと。

 バリバリバリバリバリバリバリッ!

男の体を雷撃が襲う、針を通して戦闘用の厚く硬い装甲を超えて肉体を直接破壊する。

「ん~ でも狙いに電気を流すから避、雷針じゃなくて呼雷針?受雷針?」

 電撃に攻撃されている男を尻目にフーカは腕を組み首を傾げる。

「まあいっか!」

 そして10秒近くライカは宙から全力で雷撃を撃ち込み続けて落下した。黒焦げになった男からはプスプスと黒い煙が上がりそれはもう、動かない。

「やったね~ ライカ~」

 着地したライカの元へスキップでフーカがやってきた。

「あーフーカって私の事ポ○モンだと思ってた? 酷いわー、ダルいわー、もう帰って時雨とお風呂入って寝たいわー もう何もかも面倒くさーい」

 着地したまま座り込んだライカは死んだ目で何かブツブツ言っている。

「あ、電池切れか~ よいしょっと」

 フーカはいつもの事だと何処からかスタンガンを取り出して。

「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ」

 再びの少女が少女の首にスタンガンを押し付けるの図。

「どうだ! 私達の勝ちじゃあい!!」

 元気いっぱいに回復したライカ、そして。

「やったね~」

「「イェイ!!」」

       パチンッ!


 二人は飛び跳ねてハイタッチ、勝利したのは小さな双子。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...