銃と少女と紅い百合

久藤レン

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私がいたいのは

10-10 みいなの為に

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 煙の中から現れた少女達。

「凛々奈・・・ 大丈夫?」

 その中で一番背の高いスラリとした背中が振り返る。

「サクラ・・・ なんで、ってかアンタこそ大丈夫なの!?」

 凛々奈は吹き飛ばされた場所で立ち上がる。振り向いたサクラの姿を確認すると服の下には全身グルグルに真っ白な包帯が巻かれているのが見えた。そしてその顔にも左目を隠すように大きく包帯が巻かれている。それを見た凛々奈が声を荒らげる。

「そんな怪我してるなら大人しくしてなさいよ!! チビ達もなんでこんなとこにッ!・・・」

 たった今サクラ達のお陰で自分のピンチを救われた事も忘れて凛々奈が言うと。

 ブルルルルル

 凛々奈のスマートフォンが振動する。確認すると知らない番号が表示されている。

「なによこんな時に!!」

「・・・出て」

 乱暴に着信を拒否しようとする凛々奈にサクラは指示する。

「あん!? なんでよ!」

「・・・・・・」

「・・・なんだってのよッ」

 少し訝しんだ後サクラの真面目な顔を見て大人しく通話ボタンを押しスマートフォンを耳に当てる。

「もしも」

「ハァーーーーハッハァ!!! 久しぶりだねぇ!! 白銀凛々奈君!!」

 芝居がかった大袈裟な声が大音量で凛々奈の耳を襲う。

「うるさッ! ん、この声って」

 凛々奈は思い出す。この芝居がかった癖のある喋り方を。

「あ、あの時のトランプマンだ」

 以前フーカとライカと初めて出会った日にステージ上から聞いた声。

「うん? トランプマンって誰だい? そんな事より助っ人到着だよ、早く君のプリンセスの所へ行き給えよ」   

「助っ人っ・・・ てサクラはともかく何でアンタ達が・・・」

「ハァーーーーハッハァ!! 緊急事態と言う事で浅葱という人物から連絡があってね!! 神代唯牙に借りを作れるなんて最高にアガるじゃないか!?」

(もしかして、これもセンセが根回ししてくれてた?)

「そんな事より! ですねぇ」

 すると急に電話の先から別の声も聞こえて来た。

「うわっと! いきなり割り込まないでくれ給えよ!」

「あれ、この声はアキ?」

 聞こえて来たのはフラムの調整者であり保護者の佐隈明希の声。

「そんな事よりも、フラム達の大事なお友達のみいなちゃんが攫われたなんて! そんなの放っておける訳ないですよ~! フラム達の為にも早くみいなちゃんを取り返して来てください!」

「ハハハッ! そういう訳だよ!ウチの娘達の為にも頑張ってくれ!」

 ブツッ

 通話が切られる。

「大体事情は分かったけど・・・」

 スマートフォンをポケットに仕舞う。

「ほら早く行けよな!! みーなの事任せたのにまんまと攫われやがって!! 責任持ってちゃんと取り戻して来い!!」

 フラムが振り返り言う。フラム達の正面からはゆっくりと先程の爆発で吹き飛ばされていた戦闘スーツの3人が歩いて来ている。

「今度みいなちゃんはおもたんに入隊する予定だからちゃんと取り戻して来てね~」

「そう! このチームに足りないのは気弱な妹タイプだと思うのよね!!」

 フーカとライカも凛々奈を見て言う。

「行って・・・! 凛々奈!」

サクラは前を向く。

「だ、だけどサクラ・・・・ あんた・・・」

 包帯に包まれた背中を不安そうに凛々奈は見る。

「大丈夫・・・ この子達も・・私が守るから・・ 新兵器もあるし・・」

「いいから早く行けって! サクラと私達が負けるわけないだろ!!」

 フラムも凛々奈を急かす。

「あははは、確かに私アンタ達全員と戦った事あったけど、心配する必要ないか!」

 凛々奈はそう言うと何度か膝を曲げて足を動かす。そしてスゥーっと大きく息を吸った。

「まかせた!!」

 叫ぶと同時に全力で前へ駆ける。サクラとフラムの横を通り過ぎ男達へと真っ直ぐに。それに反応する様にブレードを装備した男が凛々奈へ飛び掛った。

 ガギンッ

 重い金属音が鳴る。

「させない・・・」

 凛々奈へ振り下ろされたブレードは割り込んで来たサクラの手にする深紅の大鎌によって防がれる。その横を走り続ける凛々奈に今度は大量の小型ミサイルと共に別の男が襲いかかる。

「邪魔すんなぁおらぁ!!」

 多数のミサイルは爆炎に包まれ凛々奈へ到達する前に爆発する。そしてそれを発射した男へとフラムは飛び蹴りを放つ。最後の男が突き進み続ける凛々奈へ飛び掛ろうと鎧殻の足で飛び上がった。
しかしその勢いはゆっくりと弱まっていく、吹き荒ぶ暴風によって。そのまま凛々奈とは反対方向まで飛ばされてしまう。着地した男の前に双子の少女が立ち塞がる。

「フーカ! 今日は手加減無しでいいのよね!!」

「うん~ 何でもありの限界バトルだぁ~」 

凛々奈は少女達を背にして走る。大切な人の元へと。

「アンタ達!! 帰ったら何でも好きな物奢ってあげるから!!! 死ぬんじゃないわよ!!!」

 それだけ振り返る事なく叫び凛々奈は倉庫地帯の奥へ消えて行った。
 


 サクラ、フラム、フーカとライカ。それぞれが男の前に立つ。

巨大な武装した戦闘服の男達と、可憐な少女達が対峙する。

「というわけで~ みんな~決める所だよ~!」

 フーカがニコッと笑って両手を高く上げ言った。

少女達が構える。

「・・・・私が」

「私が!!」

「私達が!!」

      「「「相手だ!!!」」」
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