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乙女心

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拓海が皐月の父親と初対面した次の日、皐月は要に昨日の出来事を全て話した。

「ずるいな~。私がいない時に……。」

少し拗ねた様子の要だが昨日は俳句雑誌に特集が載るため取材を受けていた。どうやっても皐月と一緒にはいられない。膨らむ要の頬を突っつきながら皐月は本題を切り出す。

「今日か明日…服、買いに行きたいんだけど…要に選んで欲しいな。」

「いく!今日いく!!」

身を乗り出し食い気味に返事をした要は、やる気満々でクラスの女子に雑誌を借りに行った。



放課後、休み時間にファッション雑誌を読み漁った要とそんな要に全てを委ねた皐月はいつもとは違う電車にのり乙女の戦場へ赴いた。二人が向かったのは大型のショッピングモールで、四階建てで入っているショップは二桁もある。いつも母親の選んできた服を着ている皐月にはハッキリ未開の地だ。

「全身コーデするからいっぱいまわるよ~。」

要はまずカジュアルな服が多いショップに向かった。
皐月は身長が165cmありスタイルも良い。ジーンズ生地のミニスカにVネックの白のニットを合わせ少しセクシーさを出してみると拓海が悩殺される姿が容易に想像できた。

「ちょ…ちょっと色々出しすぎじゃないかな…。」

「大丈夫。」

「スカートもう少し長めでも…。」

「大丈夫。」

「でも「大丈夫。」…。」

皐月は要を信じてとりあえず試着してみる事にした。
膝上10cmのタイトめのスカートは皐月の脚を美しく魅せ、Vネックからのぞく谷間は間違いなく視線を釘付けにしそうだ。
実際に着てみて皐月は恥ずかしさと着慣れない服にドキドキする。カーテンを開けて要に確認してもらうと親指を立てて自信満々の顔をしていたので、皐月は勢いで購入を決定した。

「次はそれに合う靴と下着を選ばなきゃね~。」

「え。下着とか必要?」

「すごく必要だよ!下着が違うとテンションも違うよ~。そ・れ・に、デートで可愛い下着を付けるのはマナーだよ~。」

「そ、そうなの…?」

要の言葉を鵜呑みにする恋愛初心者の皐月は「見せることもあるかもしれないしね~。」と小声で言った要の言葉は耳に入らなかった。

その後、無事に下着と靴を選んで買った要と皐月はカフェで休憩して帰ることにした。
帰り道に通り過ぎようとした雑貨屋で皐月は色付きリップが気になり足を止める。リップをジーッとみつめる皐月に要は後ろからひょっこり顔を出しリップをみた。

「皐月には淡いピンク系かな~?買うの?」

少し頬を赤くしてコクリと頷いた皐月に、当日は皐月を完璧に仕上げようと要は誓った。
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