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事件の爪痕

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「要~そろそろ離れてくれない?」

ストーカー事件の次の日、要は登校した皐月に抱きついたまま離れなかった。
ストーカーかもしれないと悩んでいた皐月を心配して連絡をした事で事件を知った要は、自分が蚊帳の外で皐月が危ない目にあった事がショックだった。

「1人にするべきじゃなかった…。ごめん…。」

「ううん。要が巻き込まれなくて良かったよ。それに拓海達がいてくれたしね!」

要の頭を撫でながら皐月は平気だと要に訴え続けた。
しかし、昼休みになっても要から解放されず雪斗から熱い視線が注がれる。

「皐月ちゃん…ちょっと俺と代わってみないか。」

「「黙れ変態。」」

「要、要が気に病む事じゃないって何回も言ったでしょ?」

「今日だけ……。」

皐月は諦めて要の好きにさせる事にした。

「拓海、雪斗。改めて助けてくれてありがとう。母さんがお礼に行きたいって言ってるんだけど今度の土日どちらか二人の家に行っていいかな?」

「撃退したの俺たちじゃないけどな。」

「そうだね~撃退されはしたけど。」

事情聴取後、それぞれ母親が迎えに来た時、物凄い頭の下げあいが行われた。
皐月の母親は娘を助けてもらったお礼と雪斗の怪我の謝罪。
拓海と雪斗の母親は皐月の母親に相談を受けていたのに一人で帰した事への謝罪で永遠ペコペコ頭を下げあっていた。

「それについては謝ったでしょ!後暫く放課後残れなくなったからごめん。」

「まあ、無事で良かったよ。」

拓海は皐月の頭をポンポンしながら皐月に微笑んだ。
その行動に事件の夜を思い出した皐月は顔を真っ赤にして俯き、皐月のその様子に拓海も顔を真っ赤にした。
そんな二人の様子に要と雪斗はアイコンタクトをとって頷きあった。

「皐月、今日遊びに行っていい?」

「拓海、放課後ちょっと時間あるか?」

疑問形なのにパワーのある言葉に皐月と拓海は否とは言えなかった。

「あ、文化祭の準備ラストスパートは…」

「「担当分は終わってる。」」

「「デスヨネ。」」


放課後、諦めてそれぞれ引っ張られていく姿はさながら売られていく子牛のよう。
二人はとても遠い目をしていた。
それとは対照的にランランと瞳を輝かせる要と雪斗は、獲物を捕らえた猛禽類のようにガッシリと互いのパートナーを掴み学校を後にした。
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