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祭りの季節

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その日の天気予報は大雨。
台風が近づいている事もあり風も強く皐月は休みたい気持ちに逆らいながら登校した。
理由は文化祭の出し物及び係決めというイベントのせいだ。
今日休んでしまえば皆がやりたがらない係を押し付けられる。
その為、台風だろうが少々の体調不良だろうが全員きちんと登校していた。

「では、文化祭のクラスの出し物で希望がある人は手をあげて下さい。」

クラス委員が声をかけると数人が手をあげた。
黒板に書かれた候補は【演劇~白雪姫~】【コスプレ喫茶】【お化け屋敷】の三つ。

「コスプレ喫茶とか楽しそうじゃない?」

「私はお化け屋敷かな~。」

皐月と要が何に投票するか話していると円陣を組むクラスの男子たちの気合いの入った声が聞こえた。
そして、開票してみるとクラスの約半数がコスプレ喫茶に投票しており女子たちは呆れた顔で男子を見ていた。

「よ~し!我々の願いは通じた!!同士たちよ後もうひと頑張りだ。」

「「隊長!アニマル路線なんてどうでしょう!」」

「うむ。悪くない。」

「メイドさんも捨てがたいです!」

男子の願望を前に女子たちは結託した。
心はひとつ、«奴らの好きにさせてはいけない»。
結局、男子たちの意見【アニマルメイド喫茶】は通った。
しかし、女子たちはアニマル執事、男子たちはアニマルメイドとなる事になり男子たちの夢は儚く散るのであった。

「男子たちのああいうところ、どうかと思うよね~。」

「要とか絶対狙われてたっしょ。」

「そういう扱い慣れてるよ~。」

「「「慣れちゃダメだから!!!」」」

女子側から聞こえてくる辛辣な声が男子たちに更なるダメージを与えた。
そんな生徒達を暖かい目で見守る担任から更なる追い討ちがくる。

「皆さん、生嶋さんは文化祭の当日に来賓の対応がありますのでコスプレ参加はできません。きちんと配慮してあげて下さいね。」

「「「「ナンダッテー?!」」」」

「そいえばそうだったかも~?」

「「「「「「「「「生嶋さ~ん…。」」」」」」」」」

「ザンネ~ン。」


放課後、拓海は軽音部の活動で部室に行ったので皐月と要は久しぶりに二人で帰り、カフェに寄った。
すると、皐月は背後から視線を感じたような気がして振り向く。
しかし、怪しい人物は居なかった。

「どうしたの~?」

「ん~何でもないよ。」

二人がカフェを出た直後、距離をとって後を追う人影に二人は気づかなかった。
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