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そこにリリーが夕食の時間だと知らせに来た。
「話は夕食後にしましょう。今日はレオンハルトは戻らないから」
そう言い置いて、リリーの給仕で夕食を済ませた。主寝室に戻ったら夕食を使用人の食堂で済ませたノンナがノックをして入ってきた。
「お湯は侍女がいれてくれたそうですので、湯あみのお手伝いをします」
ノンナに浴室で髪を洗ってもらう。
「この香油はハーブを漬け込んだもので、ハーブの組み合わせで匂いも効能も違います。どれもお嬢様が現場の女性達と知恵を出し合って開発したものです」
ノンナに匂いを嗅がせてもらう。ほーとした落ち着いた気分になる匂いだ。
「お嬢様は中でもこの香油が一番お好きです。髪にも身体にも湯上がりに塗られておられました。だからお嬢様は汗をかくとほんのり匂われて、周りの人間がいい匂いだと言うので香油もそう言う使い方を勧めてより一層よく売れてます」
「ノンナは商売に詳しいのね」
「そうです。お嬢様が公爵領に行ってからずっとご一緒させていただいてますから」
お湯から上がって髪を乾かしてもらう。
「お嬢様のお世話は私の仕事ですから。それなのにお嬢様の過去をよく知ってる私を遠ざけた公爵様には怒りしかありません」
「レオンハルトからマリアに階段から突き落とされたところまで聞いたわ。ところで五年も別居していたのになぜユリアは急に王都の邸に出てきたの」
「お嬢様。何も覚えておられないのですね。では、これはお嬢様からお預かりしていた書類です」
紙袋の中には離縁承諾書にユリア・アイレンベルクの署名がされ、もうひとつの欄は空欄だった。それとユリア名義になってるハーブティとハーブ香油の権利の譲渡書だ。これをみると財産を全てレオンハルトに譲って離縁して出て行くつもりだったようだ。なぜ譲る必要があるのだろう。自己犠牲が過ぎるだろう。公爵の領地の治水をし、橋をかけたのまではレオンハルトに譲ってもいいだろう。領地はレオンハルトのものだから。でもハーブ関係の開発はユリアのもの。ハーブなどレオンハルトの領地でもなくても、エーレンフェスト家の領地でもできる。そこでハーブティと香油を生産すればいいのだ。権利は開発したユリアにあるのだから。
紙袋に書類を戻し、目の前でいい具合に火が立ってる暖炉にその紙袋を投げ入れた。あっという間にメラメラと燃え上がった。綺麗に燃えてしまうように火かき棒で紙と紙の間をほぐして、完全に燃えてしまうまでかき回した。
「お嬢様。譲渡されるのをやめるのですね。私はお嬢様が苦労して工夫してしたものを公爵様に渡すのは反対でした。よかった。お嬢様が気持ちを変えられて」
確かにノンナの言う通りだ。ユリアはどれだけ自己犠牲を自分に強いていたのだろう。自分の権利は自分で守らないと良いように食い物にされるのだ。
「自分の権利を自分で捨てるなんて馬鹿なことと気が付いたわ」
「公爵様と離縁するのまでやめられるわけじゃないですよね?」
「そこはまだ決めてないわ。ユリアはレオンハルトと圧倒的に会話が足りないと思うの。もっと話してみて決めるつもり。ここまでコケにしてもらっていたのなら償っても欲しいしね」
「お嬢様……なんだかお嬢様ではないような。でもその方がいいです。前のお嬢様は能力も高いのに卑下されてばかりで、使用人達は口惜しく思ってました」
なんだかそのユリアを想像できて苦笑いをした。
「話は夕食後にしましょう。今日はレオンハルトは戻らないから」
そう言い置いて、リリーの給仕で夕食を済ませた。主寝室に戻ったら夕食を使用人の食堂で済ませたノンナがノックをして入ってきた。
「お湯は侍女がいれてくれたそうですので、湯あみのお手伝いをします」
ノンナに浴室で髪を洗ってもらう。
「この香油はハーブを漬け込んだもので、ハーブの組み合わせで匂いも効能も違います。どれもお嬢様が現場の女性達と知恵を出し合って開発したものです」
ノンナに匂いを嗅がせてもらう。ほーとした落ち着いた気分になる匂いだ。
「お嬢様は中でもこの香油が一番お好きです。髪にも身体にも湯上がりに塗られておられました。だからお嬢様は汗をかくとほんのり匂われて、周りの人間がいい匂いだと言うので香油もそう言う使い方を勧めてより一層よく売れてます」
「ノンナは商売に詳しいのね」
「そうです。お嬢様が公爵領に行ってからずっとご一緒させていただいてますから」
お湯から上がって髪を乾かしてもらう。
「お嬢様のお世話は私の仕事ですから。それなのにお嬢様の過去をよく知ってる私を遠ざけた公爵様には怒りしかありません」
「レオンハルトからマリアに階段から突き落とされたところまで聞いたわ。ところで五年も別居していたのになぜユリアは急に王都の邸に出てきたの」
「お嬢様。何も覚えておられないのですね。では、これはお嬢様からお預かりしていた書類です」
紙袋の中には離縁承諾書にユリア・アイレンベルクの署名がされ、もうひとつの欄は空欄だった。それとユリア名義になってるハーブティとハーブ香油の権利の譲渡書だ。これをみると財産を全てレオンハルトに譲って離縁して出て行くつもりだったようだ。なぜ譲る必要があるのだろう。自己犠牲が過ぎるだろう。公爵の領地の治水をし、橋をかけたのまではレオンハルトに譲ってもいいだろう。領地はレオンハルトのものだから。でもハーブ関係の開発はユリアのもの。ハーブなどレオンハルトの領地でもなくても、エーレンフェスト家の領地でもできる。そこでハーブティと香油を生産すればいいのだ。権利は開発したユリアにあるのだから。
紙袋に書類を戻し、目の前でいい具合に火が立ってる暖炉にその紙袋を投げ入れた。あっという間にメラメラと燃え上がった。綺麗に燃えてしまうように火かき棒で紙と紙の間をほぐして、完全に燃えてしまうまでかき回した。
「お嬢様。譲渡されるのをやめるのですね。私はお嬢様が苦労して工夫してしたものを公爵様に渡すのは反対でした。よかった。お嬢様が気持ちを変えられて」
確かにノンナの言う通りだ。ユリアはどれだけ自己犠牲を自分に強いていたのだろう。自分の権利は自分で守らないと良いように食い物にされるのだ。
「自分の権利を自分で捨てるなんて馬鹿なことと気が付いたわ」
「公爵様と離縁するのまでやめられるわけじゃないですよね?」
「そこはまだ決めてないわ。ユリアはレオンハルトと圧倒的に会話が足りないと思うの。もっと話してみて決めるつもり。ここまでコケにしてもらっていたのなら償っても欲しいしね」
「お嬢様……なんだかお嬢様ではないような。でもその方がいいです。前のお嬢様は能力も高いのに卑下されてばかりで、使用人達は口惜しく思ってました」
なんだかそのユリアを想像できて苦笑いをした。
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