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No.36 ガダルside
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「今日は、沢山買ってくれてありがとう。とても楽しかったわ」
そう言って、天使の皮を被った悪魔サーシャがガダルに微笑む。背後では、溢れんばかりの荷物を馬車に詰めるトールディン家の護衛達。
(何が『沢山買ってくれてありがとう』だっ!殆ど、オレを脅して買わせたんじゃないかっ…!)
「鬼、悪魔、人でなし!」など、心の中で本人には言えない不満をぶち撒けるガダル。そんな彼に、ティミアがおずおずと近付く。
「あ、あのっ…ガダル様!」
「ん?どうしたんだ?」
ガダルは、恋する少女の己を呼ぶ声に直ぐに反応する。一方、ティミアは緊張で頬を赤く染めて目に涙を浮かべながらガダルを見上げる。
ーーズキューーンッ!
(グッ …!か、可愛い……!)
ティミアよりも背の高いガダル。
当然、ティミアはガダルを見ると自然と上目遣いになる。好きな女の子が頬を染めながら目に涙を浮かべての上目遣いは、人生経験の浅い少年の心を貫いた。
ドッドッドっと、心臓が激しく鼓動しているのを感じる。余りにも強く速いその鼓動に、ティミアに聞かれてしまうのでは?と不安になる。
「………で?一体、何だ?」
しかし、そんな不安な気持ちなど情け無くて好きな子の前で見せたくない。だから、なんて事のない様な顔をしてティミアに再度問いかける。
………しかし、顔が赤くなるのは抑える事が出来ていなかったが。
「きょ、今日は、こんなにも沢山のプレゼントを買っていただき…あ、ありがとうございます!」
そう言って、ティミアは小さな袋に包まれた物をガダルに差し出した。
「こ、これは、今日のお礼ですっ!……正直、ガダル様に買ってもらったプレゼントに比べれば、全然大した事ないんですが…」
へにょんと、情け無くて眉を下げるティミア。
だが、ガダルは震える手で小さな袋を受け取る。
「こ、これをオレに…?」
中には、ガダルと同じ瞳の色をしたエメラルドの宝石の付いた耳飾りだった。
「一目見た時から、ガダル様の瞳と同じ色の綺麗なエメラルドだなぁって思ったんです。まるで、ガダル様の為にあるみたいだと思って…」
「オ、オレの事を考えて選んでくれたのか…?」
「……はい」
ティミアは、照れた様に笑いながら頷く。
(ティミアが、オレの事を考えて選んだ…)
その瞬間、身体中に歓喜が湧き上がる。
ーー好きだ。
その言葉だけが、ガダルの思考を埋める。
そうして、感情のままにティミアを抱き締めようと手が伸びた。
「これ以上は、許さないわよ」
「痛っ!」
しかし、その手はサーシャによってピシャリと叩き落とされる。そこで漸く、ガダルは我に返った。
(オ、オレは今何を…!)
サーシャが止めなければ、間違い無くティミアを抱き締めていた。告白もしていない、ましてや出会って数日の殆ど何も知らない子供とはいえ男に抱き締められていたら、まず間違い無く人見知りの激しいティミアは2度とガダルに会おうとしなかっただろう。……いや、下手をしたら男性恐怖症になって社交界にすらも出て来なくなっていたかも知れない。
「す、すまない。助かった…」
ガダルは、素直にサーシャにお礼を言う。
「全く。…これで、貸し1ね」
そう言ってニンマリと笑うサーシャに、ガダルは頬が引き攣るのを感じた。
(悪魔に借りを作ってしまった…)
そして、その事実に軽く絶望したのは仕方のない事だ。
そう言って、天使の皮を被った悪魔サーシャがガダルに微笑む。背後では、溢れんばかりの荷物を馬車に詰めるトールディン家の護衛達。
(何が『沢山買ってくれてありがとう』だっ!殆ど、オレを脅して買わせたんじゃないかっ…!)
「鬼、悪魔、人でなし!」など、心の中で本人には言えない不満をぶち撒けるガダル。そんな彼に、ティミアがおずおずと近付く。
「あ、あのっ…ガダル様!」
「ん?どうしたんだ?」
ガダルは、恋する少女の己を呼ぶ声に直ぐに反応する。一方、ティミアは緊張で頬を赤く染めて目に涙を浮かべながらガダルを見上げる。
ーーズキューーンッ!
(グッ …!か、可愛い……!)
ティミアよりも背の高いガダル。
当然、ティミアはガダルを見ると自然と上目遣いになる。好きな女の子が頬を染めながら目に涙を浮かべての上目遣いは、人生経験の浅い少年の心を貫いた。
ドッドッドっと、心臓が激しく鼓動しているのを感じる。余りにも強く速いその鼓動に、ティミアに聞かれてしまうのでは?と不安になる。
「………で?一体、何だ?」
しかし、そんな不安な気持ちなど情け無くて好きな子の前で見せたくない。だから、なんて事のない様な顔をしてティミアに再度問いかける。
………しかし、顔が赤くなるのは抑える事が出来ていなかったが。
「きょ、今日は、こんなにも沢山のプレゼントを買っていただき…あ、ありがとうございます!」
そう言って、ティミアは小さな袋に包まれた物をガダルに差し出した。
「こ、これは、今日のお礼ですっ!……正直、ガダル様に買ってもらったプレゼントに比べれば、全然大した事ないんですが…」
へにょんと、情け無くて眉を下げるティミア。
だが、ガダルは震える手で小さな袋を受け取る。
「こ、これをオレに…?」
中には、ガダルと同じ瞳の色をしたエメラルドの宝石の付いた耳飾りだった。
「一目見た時から、ガダル様の瞳と同じ色の綺麗なエメラルドだなぁって思ったんです。まるで、ガダル様の為にあるみたいだと思って…」
「オ、オレの事を考えて選んでくれたのか…?」
「……はい」
ティミアは、照れた様に笑いながら頷く。
(ティミアが、オレの事を考えて選んだ…)
その瞬間、身体中に歓喜が湧き上がる。
ーー好きだ。
その言葉だけが、ガダルの思考を埋める。
そうして、感情のままにティミアを抱き締めようと手が伸びた。
「これ以上は、許さないわよ」
「痛っ!」
しかし、その手はサーシャによってピシャリと叩き落とされる。そこで漸く、ガダルは我に返った。
(オ、オレは今何を…!)
サーシャが止めなければ、間違い無くティミアを抱き締めていた。告白もしていない、ましてや出会って数日の殆ど何も知らない子供とはいえ男に抱き締められていたら、まず間違い無く人見知りの激しいティミアは2度とガダルに会おうとしなかっただろう。……いや、下手をしたら男性恐怖症になって社交界にすらも出て来なくなっていたかも知れない。
「す、すまない。助かった…」
ガダルは、素直にサーシャにお礼を言う。
「全く。…これで、貸し1ね」
そう言ってニンマリと笑うサーシャに、ガダルは頬が引き攣るのを感じた。
(悪魔に借りを作ってしまった…)
そして、その事実に軽く絶望したのは仕方のない事だ。
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