29 / 106
No.28
しおりを挟む
やって来たティミアと手を取り合って話していると、背後から声がかかる。
「あら?サーシャ、そちらのお嬢さんは?」
清々しい朝に似合わない、妖艶な雰囲気を纏うミランダだ。
「お母様。此方は、この間のお茶会でお友達になったティミアよ」
「まぁ、貴女がティミア嬢なのね。サーシャから話は聞いているわ。初めまして、私はサーシャの母親のミランダです」
美しい笑みを浮かべながらティミアに挨拶をするミランダに、ティミアはボーッと見惚れる。
「ティミア?」
心配になって声をかけると、ようやくティミアはハッと我に返る。そうして、慌ててミランダに挨拶をする。
「は、初めまして!ティミア・トールディンと申します!サーシャとは、仲良くしてもらってます!」
「ふふふっ。とても可愛らしいお嬢さんね。アメリアとそっくりだわ」
その言葉に、ティミアが反応した。
「ミランダ様は、お母様と知り合いなんですか?」
「えぇ、そうよ。前までは、よくトールディン家へ遊びに行ってたのよ。………でも、ここ数年アメリアの体調が優れないでしょ?だから、今は遊びに行ってないのよ」
そう言って、ミランダはティミアの頭を優しく撫でる。
「えっと…?」
「私、貴女の赤ちゃんの頃を知ってるのよ?サーシャが生まれた時と同時期にアメリアも貴女を産んだの。二人は知らないだろうけど、赤ちゃんの頃に何度も会ってるのよ」
「そうなの?」
(ティミアと、そんな繋がりがあったなんて…。知らなかった)
前世の記憶を思い出したのは、サーシャが2歳の頃だ。その為、それ以前の事は記憶に無い。だから、ティミアと初対面では無い事にサーシャは物凄く驚いた。チラリとティミアを見ると、彼女も酷く驚いた表情で此方を見ていた。
「それを知らなかったのに、二人は友達になったなんて…。まるで、カールティアに導かれたみたいね」
カールティアとは、この世界の運命の女神の名だ。カールティアの導きで得たモノは、生涯の宝とも言われている。結婚の誓いをする時も、この女神に誓うのだ。この世界の代表的な女神と言っても良い存在だ。
(確かに、同じく前世の記憶のあるティミアと出会ったのは"運命"かも…)
流石に、偶然では片付けられない出来事ばかりだ。もしかしたら、この世界には本当に神が存在するのかもしれない。
「今日は、二人でお買い物に行くんでしょう?それなのに、引き止めてごめんなさいね」
「大丈夫。それじゃあ、行ってきます!行こう、ティミア!」
「うん!ミランダ様、失礼します」
「気を付けてね」
手を振るミランダに手を振り返しながら、二人はアベルシュタイン家の馬車に乗り込んだ。そうして、馬車は街に向かってゆっくりと動き出したのだった。
「あら?サーシャ、そちらのお嬢さんは?」
清々しい朝に似合わない、妖艶な雰囲気を纏うミランダだ。
「お母様。此方は、この間のお茶会でお友達になったティミアよ」
「まぁ、貴女がティミア嬢なのね。サーシャから話は聞いているわ。初めまして、私はサーシャの母親のミランダです」
美しい笑みを浮かべながらティミアに挨拶をするミランダに、ティミアはボーッと見惚れる。
「ティミア?」
心配になって声をかけると、ようやくティミアはハッと我に返る。そうして、慌ててミランダに挨拶をする。
「は、初めまして!ティミア・トールディンと申します!サーシャとは、仲良くしてもらってます!」
「ふふふっ。とても可愛らしいお嬢さんね。アメリアとそっくりだわ」
その言葉に、ティミアが反応した。
「ミランダ様は、お母様と知り合いなんですか?」
「えぇ、そうよ。前までは、よくトールディン家へ遊びに行ってたのよ。………でも、ここ数年アメリアの体調が優れないでしょ?だから、今は遊びに行ってないのよ」
そう言って、ミランダはティミアの頭を優しく撫でる。
「えっと…?」
「私、貴女の赤ちゃんの頃を知ってるのよ?サーシャが生まれた時と同時期にアメリアも貴女を産んだの。二人は知らないだろうけど、赤ちゃんの頃に何度も会ってるのよ」
「そうなの?」
(ティミアと、そんな繋がりがあったなんて…。知らなかった)
前世の記憶を思い出したのは、サーシャが2歳の頃だ。その為、それ以前の事は記憶に無い。だから、ティミアと初対面では無い事にサーシャは物凄く驚いた。チラリとティミアを見ると、彼女も酷く驚いた表情で此方を見ていた。
「それを知らなかったのに、二人は友達になったなんて…。まるで、カールティアに導かれたみたいね」
カールティアとは、この世界の運命の女神の名だ。カールティアの導きで得たモノは、生涯の宝とも言われている。結婚の誓いをする時も、この女神に誓うのだ。この世界の代表的な女神と言っても良い存在だ。
(確かに、同じく前世の記憶のあるティミアと出会ったのは"運命"かも…)
流石に、偶然では片付けられない出来事ばかりだ。もしかしたら、この世界には本当に神が存在するのかもしれない。
「今日は、二人でお買い物に行くんでしょう?それなのに、引き止めてごめんなさいね」
「大丈夫。それじゃあ、行ってきます!行こう、ティミア!」
「うん!ミランダ様、失礼します」
「気を付けてね」
手を振るミランダに手を振り返しながら、二人はアベルシュタイン家の馬車に乗り込んだ。そうして、馬車は街に向かってゆっくりと動き出したのだった。
0
お気に入りに追加
4,072
あなたにおすすめの小説
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!
桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。
※※※※※※※※※※※※※
魔族 vs 人間。
冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。
名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。
人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。
そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。
※※※※※※※※※※※※※
短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。
お付き合い頂けたら嬉しいです!
寝取られ予定のお飾り妻に転生しましたが、なぜか溺愛されています
あさひな
恋愛
☆感謝☆ホットランキング一位獲得!応援いただきましてありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)
シングルマザーとして息子を育て上げた私だが、乙女ゲームをしている最中にベランダからの転落事故により異世界転生を果たす。
転生先は、たった今ゲームをしていたキャラクターの「エステル・スターク」男爵令嬢だったが……その配役はヒロインから寝取られるお飾り妻!?
しかもエステルは魔力を持たない『能無し』のため、家族から虐げられてきた幸薄モブ令嬢という、何とも不遇なキャラクターだった。
おまけに夫役の攻略対象者「クロード・ランブルグ」辺境伯様は、膨大な魔力を宿した『悪魔の瞳』を持つ、恐ろしいと噂される人物。
魔獣討伐という特殊任務のため、魔獣の返り血を浴びたその様相から『紅の閣下』と異名を持つ御方に、お見合い初日で結婚をすることになった。
離縁に備えて味方を作ろうと考えた私は、使用人達と仲良くなるためにクロード様の目を盗んで仕事を手伝うことに。前世の家事スキルと趣味の庭いじりスキルを披露すると、あっという間に使用人達と仲良くなることに成功!
……そこまでは良かったのだが、そのことがクロード様にバレてしまう。
でも、クロード様は怒る所か私に興味を持ち始め、離縁どころかその距離はどんどん縮まって行って……?
「エステル、貴女を愛している」
「今日も可愛いよ」
あれ? 私、お飾り妻で捨てられる予定じゃありませんでしたっけ?
乙女ゲームの配役から大きく変わる運命に翻弄されながらも、私は次第に溺愛してくるクロード様と恋に落ちてしまう。
そんな私に一通の手紙が届くが、その内容は散々エステルを虐めて来た妹『マーガレット』からのものだった。
忍び寄る毒家族とのしがらみを断ち切ろうと奮起するがーー。
※こちらの物語はざまぁ有りの展開ですが、ハピエン予定となっておりますので安心して読んでいただけると幸いです。よろしくお願いいたします!
悪妃の愛娘
りーさん
恋愛
私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。
その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。
そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!
いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!
こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。
あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
転生した平凡顔な捨て子が公爵家の姫君?平民のままがいいので逃げてもいいですか
青波明来
恋愛
覚えているのは乱立するビルと車の波そして沢山の人
これってなんだろう前世の記憶・・・・・?
気が付くと赤ん坊になっていたあたし
いったいどうなったんだろ?
っていうか・・・・・あたしを抱いて息も絶え絶えに走っているこの女性は誰?
お母さんなのかな?でも今なんて言った?
「お嬢様、申し訳ありません!!もうすぐですよ」
誰かから逃れるかのように走ることを辞めない彼女は一軒の孤児院に赤ん坊を置いた
・・・・・えっ?!どうしたの?待って!!
雨も降ってるし寒いんだけど?!
こんなところに置いてかれたら赤ん坊のあたしなんて下手すると死んじゃうし!!
奇跡的に孤児院のシスターに拾われたあたし
高熱が出て一時は大変だったみたいだけどなんとか持ち直した
そんなあたしが公爵家の娘?
なんかの間違いです!!あたしはみなしごの平凡な女の子なんです
自由気ままな平民がいいのに周りが許してくれません
なので・・・・・・逃げます!!
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる