極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

文字の大きさ
15 / 105

14

しおりを挟む
チラチラと他の貴族の子供達に見られながらもティミアと話していると、会場の前方に燕尾服を着た男性が現れた。

「只今より、ミレーヌ王妃様と第二王子ガダル様がお越しです」

その言葉と共に、サーシャ達が使用した扉とは別の一際豪華な扉が開く。すると、四人の騎士に囲まれた一人の女性とサーシャ達と同じ年頃の男の子が会場にやって来た。

(あの方がミレーヌ様。初めて見るけど、側にいると安らぐ事の出来るとても優しそうな方だなぁ。陛下が、一人も側室を迎えずミレーヌ様だけを寵愛してるのも頷ける)

金の髪に神秘的な紫の瞳の王妃ミレーヌ様は、とても優しそうなお方だった。そうして、大人や子供達の前にやって来ると、王妃様は美しい笑顔を浮かべて口を開いた。

「皆さん、本日は私のお茶会においで下さりありがとう。本日は、そろそろ第二王子であるガダルに素敵なお友達が出来ればと思い開いたお茶会です。他にも、他国から取り寄せた珍しい紅茶やお菓子も沢山のありますので、堅苦しい事は抜きにして本日のお茶会を楽しんで下さい」

そう言って、用意されていた席にミレーヌとガダルは座る。すると、直ぐに貴族達が挨拶に向かう。

「あっ、お父様が呼んでる。ごめんね、サーシャ。私、挨拶に行かなきゃ」
「仕方ないわ。普通、挨拶は高位の貴族からするのが当たり前だもの。この場で1番高い地位のトールディン公爵から挨拶するのは当然よ。私も、直ぐに挨拶に行くから大丈夫よ」
「うん。サーシャの挨拶が終わるまで、此処で待ってるね」
「えぇ」

父親であるトールディン公爵の元へ向かうティミアを見ながら、自身も挨拶の準備をする為に父親の元へ向かう。他の貴族の大人より凛々しい美貌を持つ美しいダリルは、直ぐに見つかった。ダリルの周りの大人達が男女関係無く、頬を染めダリルを見つめているからだ。

(流石、お父様。その美貌のお陰で、何処にいても直ぐに分かるわ…)

「お父様」

自身の元へやって来た可愛い天使を見て、ダリルは大人同士の話を切り上げてサーシャを抱き上げる。最早いつものことなので、サーシャは気にしない。

「お帰りサーシャ。お友達は出来たかい?」
「はい!とても可愛らしいお友達が出来ました。トールディン公爵家のティミア様なんですけど」
「あぁ、ジルロの所の娘さんだね」

(ジルロ?それって、トールディン公爵様の事よね?)

格上の相手を敬称も無しに名前呼び。それは、よほど親しく無いとあり得ない事だ。

「知っているのですか?」
「勿論。私とジルロは、学生時代からの付き合いなんだよ。………そうか、彼の娘さんと友達になったのか。彼の家族は、皆んなとても素晴らしい人達なんだよ。私の可愛い天使は、人を見る目があるね」

嬉しそうに笑うダリルに、サーシャも笑顔を見せる。家族に、自身の友達の事を褒められるのはとても嬉しい。

「次は、アベルシュタイン侯爵家当主ダリル様と御息女サーシャ様」
「おっと、もう私達の番か。…では、王妃様達に挨拶に行こうか」
「はい」

サーシャを下ろしダリルがそう話す。それに対して、緊張もせずに返事をする娘に彼は笑った。そうして、サーシャと共に王妃達の居る場所へと向かったのだった。





しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...