極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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「やっぱり、貴女も転生者なのね」

その言葉に、ティミアはコクンと小さく頷く。

「私も転生者なの」
「ど、どうして私が転生者だと…?」
「だって、私達って前世の記憶がある分この歳にしては理性的って言うか…」
「そ、それは分かります」
「私達みたいな子供をきっと『大人びた子供』って言うのよね」
「実際、本当に中身は大人びてますしね」

そう言って、二人はクスクスと笑い合う。

「私の事は、ティミアって呼んで下さい。…それに、よかったら私とお友達になって下さいっ!」

(か、可愛い~ーーっ!)

同世代の子供と、同じ転生者と言う事がティミアの緊張を解したのだろう。吃りもせずに、ティミアは嬉しそうに、しかし何処か緊張しながらサーシャに話しかけて来た。小動物の様な愛らしいティミアに、サーシャはメロメロだ。

「では、私の事はサーシャとお呼びーー」

敬語で話していると、ティミアは途端に寂しそうな顔をする。

(こんなにも分かりやすいほどに気持ちが顔に出るなんて…)

貴族としては失格だろう。
だがーー。

「私の事はサーシャって呼んで?よろしくね、ティミア」
「っ!はいっ!」

そうして、サーシャは今世初めての自身と同じ前世の記憶のある転生者の友達を得たのだった。



「ーーそれにしても、サーシャって本当に綺麗ね」

子供達の輪から少し離れた場所でティミアと話していると、突然ティミアがそう言った。

「そう?」
「うん。私、サーシャほど綺麗な子って見たこと無いもの」
「そうかな?私の他にも可愛いくて綺麗な子なんていっぱい居るわよ」
「確かに可愛い子も綺麗な子も居るけど、サーシャ程じゃないよ。………ほら、周りを見て?」

ティミアに言われた通りに周りを見渡すと、殆どの子供達がこちらを見てヒソヒソと話していた。

「皆んな見てるわね」
「でしょ?皆んな、サーシャの事を見てるんだよ」
「私だけじゃ無いわよ。可愛いティミアの事も見てるのよ」
「………私は可愛く無いよ」

そう言って、ティミアは顔を伏せる。その声は、何処かとても悲しげでサーシャは心配になった。

「…ティミア?」
「………あ、あのね?私って太ってるでしょ?だから、皆んなに陰で『子豚ちゃん』って呼ばれてるの。わ、私ね?何度も痩せようと必死に努力したの。だけど、どんなに頑張っても痩せなくて…」

ポタポタとティミアが涙を流しながらも話す。その声は、どんどん小さくなり今にも消えてしまいそうだった。

(ティミア…)

前世の記憶があり他の子供より精神年齢が上だとしても、自身の悪口を言われて平気な訳が無い。それに、子供の身体に精神が引っ張られる事もある。ティミアは、かなりその傾向が強い様だ。

「ねぇ、ティミア。私は、貴女が太っていても痩せていても好きよ?」

一体、この事を言うのにどれ程の勇気が必要だっただろう。

「それに、子供は小さい頃太ってた方が将来痩せる人が多いのよ?」
「………本当?」
「勿論よ。私は、前世では三人の子供の母親だったのよ?私の子供達も、最初はティミアよりもまん丸だったわよ?一時期は、私は大福を産んだのかと思ったもの!」
「フフフッ!大福って…」
「あら、本当なのよ?あの頃の子供達をティミアが見たら、絶対に大福だって思うわよ。でもね、成長するに従ってビックリするほどスリムになったのよ。まるで爪楊枝みたいにね!」
「あははっ!もう、サーシャったら…っ。爪楊枝って!」

可笑しそうに笑うティミアに、サーシャはニヤリと笑う。

「本当の話なのよ?だからね、ティミアも絶対に成長するに連れてスリムな美少女になるわ。…だから、今のうちに存分に陰口なんて言わせておけばいいのよ。そして、成長した美少女ティミアを見て全員間抜け面を晒す事になるんだから」

「その時は大笑いしましょう」とウィンクするサーシャに、ティミアは笑顔で頷いた。

「うん!私、スリムな美少女になって皆んなを驚かせるわ!」

そう宣言したティミアの目には、もう涙は滲んでいなかった。


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