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「アベルシュタイン侯爵家当主ダリル様とサーシャ様ですね?ようこそ、いらっしゃいました。会場に案内致しますので、どうぞ此方へ」
馬車から降りると、王国騎士である証の白い軍服に蒼マントを見に纏った男性が声をかけて来た。どうやら、この騎士が案内役らしい。サーシャ達二人は、目の前の騎士の案内に従って城内を歩く。
(うわぁ~、中も凄く綺麗…)
城内も、外壁と同じく真っ白な天井や壁が広がっていた。廊下には真っ赤な絨毯が敷かれており、白い空間の中で一段と鮮やかに目に焼き付く。
(あの壺や彫刻って、一体幾らするんだろう?)
まぁ、城に置いてある位だ。
きっと目が飛び出る程の値段なのだろう。
(そう言えば…何で金持ちの家には、ああいった壺やら彫刻やら絵画何かがあるんだろう?)
前世でも、サーシャが住んでいた家には沢山の壺やら刀やら虎の剥製やらが沢山あった。正直、こんなに要らないだろうと言う物や、意味が分からない変な物が沢山あった。前世では、使う物以外要らないと言うタイプの人間だったので、夫である組長が高価な壺やら日本刀やらを買って来ると何時も喧嘩していた。
***
『また、高いだけの使わない壺を買ってきたのね!もう買ってこないでって言ったわよね!?』
『いや、うん。だけどな…』
『だけども、へったくれも無いわよ!家には、置いてあるだけの壺が何個もあるのよ?物には限度があるでしょう!?それなのに…!』
『あ、姐さん。そんなに怒らなくても…』
『そうですよ!組長もこんなに悲しそうにしてますし…!』
『黙らっしゃい!』
『ひっ…!?』
『このバカ高い壺を買うお金は、何処から出てると思ってるのよ!お金は無限に湧いてくるんじゃ無いのよ?………こうなったら、二度と無駄使いしない様に、直接身体に叩き込んであげる!』
『うわぁーー!!姐さんのご乱心だーー!』
***
(結局、あの人の無駄使いは直らなかったなぁ…)
一時期、無駄使いをしなくなったと思ったら、あの人は妻に分からない様に隠していたのだ。それを見た時、壺やら刀やら絵画やらを買うのを咎める事を辞めた。その代わり、旦那が月に使える金額を設定してそれ以上は決して渡さない様にしたのだ。
「サーシャ、どうしたんだい?何か気になる事があったのかい?」
前世の事を思い出していて、ぼんやりしていたのだろう。歩みが遅くなったサーシャに、ダリルが不思議そうに尋ねてくる。
「ううん。ただ、壺とか絵画が多いなぁ~って思って」
「そうだね。………正直、私はこんなに要らないと思うんだけどね」
内緒だよ?と小さな声で呟くダリルに、サーシャは激しく同意した。そうして暫く歩くと、外に繋がる大きな扉の前に着く。
「アベルシュタイン侯爵様、此方がお茶会の会場になります」
そう言って、騎士はゆっくりと扉を開けるのだった。
馬車から降りると、王国騎士である証の白い軍服に蒼マントを見に纏った男性が声をかけて来た。どうやら、この騎士が案内役らしい。サーシャ達二人は、目の前の騎士の案内に従って城内を歩く。
(うわぁ~、中も凄く綺麗…)
城内も、外壁と同じく真っ白な天井や壁が広がっていた。廊下には真っ赤な絨毯が敷かれており、白い空間の中で一段と鮮やかに目に焼き付く。
(あの壺や彫刻って、一体幾らするんだろう?)
まぁ、城に置いてある位だ。
きっと目が飛び出る程の値段なのだろう。
(そう言えば…何で金持ちの家には、ああいった壺やら彫刻やら絵画何かがあるんだろう?)
前世でも、サーシャが住んでいた家には沢山の壺やら刀やら虎の剥製やらが沢山あった。正直、こんなに要らないだろうと言う物や、意味が分からない変な物が沢山あった。前世では、使う物以外要らないと言うタイプの人間だったので、夫である組長が高価な壺やら日本刀やらを買って来ると何時も喧嘩していた。
***
『また、高いだけの使わない壺を買ってきたのね!もう買ってこないでって言ったわよね!?』
『いや、うん。だけどな…』
『だけども、へったくれも無いわよ!家には、置いてあるだけの壺が何個もあるのよ?物には限度があるでしょう!?それなのに…!』
『あ、姐さん。そんなに怒らなくても…』
『そうですよ!組長もこんなに悲しそうにしてますし…!』
『黙らっしゃい!』
『ひっ…!?』
『このバカ高い壺を買うお金は、何処から出てると思ってるのよ!お金は無限に湧いてくるんじゃ無いのよ?………こうなったら、二度と無駄使いしない様に、直接身体に叩き込んであげる!』
『うわぁーー!!姐さんのご乱心だーー!』
***
(結局、あの人の無駄使いは直らなかったなぁ…)
一時期、無駄使いをしなくなったと思ったら、あの人は妻に分からない様に隠していたのだ。それを見た時、壺やら刀やら絵画やらを買うのを咎める事を辞めた。その代わり、旦那が月に使える金額を設定してそれ以上は決して渡さない様にしたのだ。
「サーシャ、どうしたんだい?何か気になる事があったのかい?」
前世の事を思い出していて、ぼんやりしていたのだろう。歩みが遅くなったサーシャに、ダリルが不思議そうに尋ねてくる。
「ううん。ただ、壺とか絵画が多いなぁ~って思って」
「そうだね。………正直、私はこんなに要らないと思うんだけどね」
内緒だよ?と小さな声で呟くダリルに、サーシャは激しく同意した。そうして暫く歩くと、外に繋がる大きな扉の前に着く。
「アベルシュタイン侯爵様、此方がお茶会の会場になります」
そう言って、騎士はゆっくりと扉を開けるのだった。
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