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高校一年生(暗号・トリック中心)
神隠し8
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「じゃあ、見せてあげて下さい。この子に自分がどれほど愚かかを! 予言の力を証明できれば、この子も自分の過ちに気づくでしょう?」
おばさんは、幹部の男にそう進言する。
「そうですね。愚かな子を導くのも、使命の一つでしょうか……。では、まずは、前教祖様の予言の力をお見せしようか」
男がそう言って見せたのはスマホ。
スマホには、『明日とてつもなく大きな地震が起こり、悲しみが広がる』と書かれたネット上のつぶやきが表示されている。
「すげえ。この次の日って、チリで地震が起きたんじゃなかったっけ?」
夏目が男の見せたスマホを見て衝撃を受けている。
自分のスマホで調べてみれば、確かに次の日に大規模な地震が起きたことが記されている。他にも、『世界規模の集いが悪魔により引き伸ばされる』という言葉の下に、幹部の男が、『オリンピックが延期になったことが予言されていたんだ』と追記していたり、『鉄の鳥が舞い落ちて、苦しみは与えられる』との教祖の記載に『また当たった、この飛行機事故の件だ』と、飛行機事故の記事が載せられていたりしている。
いずれも、予言された日時は、事件の起きる前だ。
これは……どうしようもないんじゃない? 予言と言っていいんじゃない?
「世界中で地震が起きているとはいえ、『明日』『大きな』地震が起きるとは、誰にも分からない。いつ呟いたかという履歴は運営元にでも頼まければ変更は難しいのではないでしょうか? 教祖様の代表的な予言です。まだ、実現されていない予言もありますが、いずれ教祖様の予言された事象が生じることでしょう」
自信満々な幹部の男。
「ふふ。それだって、すごく簡単に再現できるよ」
赤野は余裕の笑みで答える。
「いくつものアカウントで、別の日に似たようなつぶやきを載せておくんだ。そして、実際に当たったアカウントだけを残して、後は削除する。そうして、そのアカウントの名前を教祖の示唆する名前に変更すればいいんだよ。見てごらん、具体的で日付の分かる予言は、初めの一つだけ。他のは、曖昧な言葉で、どんな内容でも当てはまりそうな文言で記されているんだ。最初の予言で人目を引いて、後は、言葉に合いそうなそれっぽい事件が起きたら、予言が当たったのだと騒ぎ立てているだけ」
赤野は、さらりと言ってのける。
……たしかにそうだ。飛行機事故も、世界的規模の大会の中止も、時間が経てば世界のどこかで起こることだ。地震だって、世界中のどこかで、いつかは起こる。その『いつか』を悪用しているんだ。
「なんて子なの? 本当に救いようがない!」
おばさんは憤る。
長い年月信じてきたことを否定されて、その反論もないが、この程度を論破されても、洗脳は、解けはしないということだろう。
「いい? 教祖様は、その予言の力で、多くの人々を救ってきたの。教祖様に悩みを相談して、教祖様のおっしゃる通りに行動して助かった人は沢山いるの。その教祖様の力を信じないなんて、とても愚かな行為なの。世界を司る神に歯向かう行為なのよ!」
すごい剣幕で自論を捲し立てるおばさん。本気で怒っている。
赤野は、それを涼しい顔で受け止めている。
「僕は、おばさんが信じる物を否定する気はないよ? 勝手に信じて、搾り取られて、勝手に自滅すればいい」
おい、赤野? 自滅って……それは、あんまりじゃない?
「でも、田島さんは、まだ未成年だし、こんな馬鹿げた話に巻き込まれるには、ちょっと可哀想じゃない?」
赤野が、幹部の男を睨む。
おばさんは、幹部の男にそう進言する。
「そうですね。愚かな子を導くのも、使命の一つでしょうか……。では、まずは、前教祖様の予言の力をお見せしようか」
男がそう言って見せたのはスマホ。
スマホには、『明日とてつもなく大きな地震が起こり、悲しみが広がる』と書かれたネット上のつぶやきが表示されている。
「すげえ。この次の日って、チリで地震が起きたんじゃなかったっけ?」
夏目が男の見せたスマホを見て衝撃を受けている。
自分のスマホで調べてみれば、確かに次の日に大規模な地震が起きたことが記されている。他にも、『世界規模の集いが悪魔により引き伸ばされる』という言葉の下に、幹部の男が、『オリンピックが延期になったことが予言されていたんだ』と追記していたり、『鉄の鳥が舞い落ちて、苦しみは与えられる』との教祖の記載に『また当たった、この飛行機事故の件だ』と、飛行機事故の記事が載せられていたりしている。
いずれも、予言された日時は、事件の起きる前だ。
これは……どうしようもないんじゃない? 予言と言っていいんじゃない?
「世界中で地震が起きているとはいえ、『明日』『大きな』地震が起きるとは、誰にも分からない。いつ呟いたかという履歴は運営元にでも頼まければ変更は難しいのではないでしょうか? 教祖様の代表的な予言です。まだ、実現されていない予言もありますが、いずれ教祖様の予言された事象が生じることでしょう」
自信満々な幹部の男。
「ふふ。それだって、すごく簡単に再現できるよ」
赤野は余裕の笑みで答える。
「いくつものアカウントで、別の日に似たようなつぶやきを載せておくんだ。そして、実際に当たったアカウントだけを残して、後は削除する。そうして、そのアカウントの名前を教祖の示唆する名前に変更すればいいんだよ。見てごらん、具体的で日付の分かる予言は、初めの一つだけ。他のは、曖昧な言葉で、どんな内容でも当てはまりそうな文言で記されているんだ。最初の予言で人目を引いて、後は、言葉に合いそうなそれっぽい事件が起きたら、予言が当たったのだと騒ぎ立てているだけ」
赤野は、さらりと言ってのける。
……たしかにそうだ。飛行機事故も、世界的規模の大会の中止も、時間が経てば世界のどこかで起こることだ。地震だって、世界中のどこかで、いつかは起こる。その『いつか』を悪用しているんだ。
「なんて子なの? 本当に救いようがない!」
おばさんは憤る。
長い年月信じてきたことを否定されて、その反論もないが、この程度を論破されても、洗脳は、解けはしないということだろう。
「いい? 教祖様は、その予言の力で、多くの人々を救ってきたの。教祖様に悩みを相談して、教祖様のおっしゃる通りに行動して助かった人は沢山いるの。その教祖様の力を信じないなんて、とても愚かな行為なの。世界を司る神に歯向かう行為なのよ!」
すごい剣幕で自論を捲し立てるおばさん。本気で怒っている。
赤野は、それを涼しい顔で受け止めている。
「僕は、おばさんが信じる物を否定する気はないよ? 勝手に信じて、搾り取られて、勝手に自滅すればいい」
おい、赤野? 自滅って……それは、あんまりじゃない?
「でも、田島さんは、まだ未成年だし、こんな馬鹿げた話に巻き込まれるには、ちょっと可哀想じゃない?」
赤野が、幹部の男を睨む。
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