天使の顔して悪魔は嗤う

ねこ沢ふたよ

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高校一年生(暗号・トリック中心)

授業参観9

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 ガンッ

 大きな音と共に、小暮が床に倒れ込む。赤野にひっくり返されてしまった。

「合気道? すげえ」

 夏目の口から、感嘆がもれる。
 赤野は、仙石に負けてから、負けないように準備をすると言っていた。その一つがこの合気道なのだろう。

クッ!!」

小暮が起き上がって再度攻撃を赤野に仕掛けようとする。

「わっ!」

赤野が怯む。二撃目は想定していなかったのだろう。バランスを崩している。
俺は咄嗟に赤野に飛びついて、赤野を庇う。

 怖くて目を閉じたまま夢中で赤野をぎゅっと抱きしめれば、なんだか触感が柔らかい。
 あれ? 俺、今どこ触った?
 ひゃあ、と赤野が小さな悲鳴を上げて、身をよじる。先ほどの柔らかいところとは別の所に手が当たる。……?

 何だったんだろう??

 小暮の拳が降ってくると思っていたのに、いつまで経っても、それは無かった。

「まだまだ詰めが甘いですね」

にこやかな赤野イサクが、小暮の腕をがっしり掴んでいた。

 そうか……イサクも証人として呼ばれていたんだ。
 昨日、亜美と涼子が言い争っていたのを止めたのは、イサクだ。赤野の父で、木根刑事の知り合いでもあるイサクが呼ばれない訳ないか。


 小暮は、警察に連れていかれた。
 木根刑事は、芝親子にファミレスでの話を詳しく聞くために、芝親子を連れていった。

 それほど小暮とも亜美とも関係が深いわけではない俺たちは、その場に残されてしまった。赤野に推理させるだけさせたから、もう用済みというところだろう。

「さ、さあ帰ろうか」

 赤野が声をかける。

 落ち着けば気になるのは、先ほどの柔らかな触感。

「なあ、赤野に抱きついた時、めちゃくちゃ柔らかかったんだけれども、俺、どこを触ってた?」

俺が皆に聞けば、赤野の顔が引きつり、夏目と今井がきょとんとしている。

「さあ、僕らの所からは、小暮が邪魔でみえなかったから。なあ」

夏目の言葉に、今井も首を縦に振る。

「柔らかかったの?」

「そう。なんかムニッとしてて……」

「に、二の腕だよ。ほら、自分の二の腕触ってみなよ」

 赤野に言われて自分の二の腕を触ってみれば、確かに柔らかい。
 でも、違うような気もする。

「何か違うんだよな……。赤野の二の腕、触らせて?」

「嫌だよ。何で触らせないと駄目なの?」

「でも……」

 腑に落ちない俺の肩を大きな手のひらが掴む。
 ……イサクだ。

「嫌がっているのですから、これ以上はいけませんよ」

 先ほど小暮を掴んでいた時よりも、ずっと殺意を帯びていませんか?

 にこやかに笑うイサクの圧がすごい……。

「はい……」

俺は、小さな声で、そう返事をするのが精一杯だった。
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