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高校一年生(暗号・トリック中心)
授業参観8
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「な、何の事です?」
ビクビクしながらも、小暮先生は、自らの罪を認めず否定した。
「せ、先生……」
敦が先生の様子に悲しそう顔をする。
敦が目撃したのは、本当に赤野の言う通りに小暮先生なのだろう。敦が目撃していて、時計が物証として出てきているのだから、これはもう亜美の恋人は、小暮先生で確定だろうと思うのに。
「じゃあ、僕が一つ一つ説明するね」
にこやかに赤野が笑う。
「まず、亜美が焦っていたという証拠の一つとして、弓香と祖父母の証言は得られたの?」
「ああ。十四歳になった時から、弁護士に相談を始めたらしい」
木根刑事がスマホを見ながら答える。仲間と情報共有をしているのだろう。
「そう。そして亜美はそれを知った。……勘付いたと言った方が良いかな? 気づいて、新しい金づるを探し始めた。……SNSで匂わせ写真を上げ始めた頃の事かな。匂わせ写真を上げることで、徐々に相手が逃れられないようにしていたんだと思う」
なるほど。秘密の相手なのに被害者がネットにアップしていたのは、むしろ誰かに特定して欲しいと考えていたんだ。
「でも、小暮先生は、本気ではなかった。亜美に強引に迫られて断れなくって始めた関係だったのかもね。だから、周囲から隠したくて、連絡先も交換しなかったし、会う時も一目で小暮先生だとは分からない格好で会うようにしていた」
芝涼子がファミレスで小暮先生に気づかなかったのは、そのためだ。だが、毎日顔を合わせていた芝敦には気づかれてしまった。
「時計を調べたら、出てくるんじゃない? 先生の形跡が。……そうだな、過去の写真にこの時計をしている先生が探せば出てくるでしょ?それに、頻繁に小暮先生に亜美が連絡を取っていたという証言も……」
「仮に、仮に俺が、坂本亜美と付き合っていたとして、それがどうして殺人の証拠になる? ならないだろうが!!」
小暮先生が、赤野君の言葉を遮る。
かなり動揺しているのが分かる。
「そりゃ、保護者の一人とそういう関係になってしまったら、周囲から隠しもするだろう? それのどこがおかしい?」
開き直ってしまった。
でも、確かに言う通りだ。亜美の恋人が小暮先生だからって、それが殺人と直接結びつくわけではない。
「全部だよ。小暮先生の行動は、全部矛盾だらけ。」
「な? 何でだ?」
「だって、前日に揉めていた芝涼子と坂本亜美を、どうして止めに入らなかったの? 坂本弓香の担任の三浦佐紀先生は、止めに入ったのに。三浦先生一人では止められなかったのに、どうして敦君の担任の小暮先生は、止めに入らなかったの? 大騒ぎになっていたから、気づかない訳ないでしょ?」
「そ、それは……」
「亜美と接触したくなかったんだ。その時には、亜美に殺意を向けていたから。毒入りのコーヒーとあの紙。犯行前には殺意があったからこそ用意できた物だよね? それを用意していたのだって、既に殺意があった証拠だよ」
赤野は、あの亜美と涼子が揉めているのを見た時点で違和感をみつけていたんだ。
もちろん、殺人が起きるとまでは感じていなかっただろうが……。
「コーヒー缶に入れた毒物は、なんだろう。小暮先生は……国語の担当だっけ? ということは、古式ゆかしく古典のお話に出てくるトリカブト、ふぐ毒……肥料からの生成物、まあ、これは、僕の管轄じゃない。鑑識さんがすぐ特定してくれるよ。自殺に見せかけていたんだから、そこに毒物が入っていたことは、自明」
「だから、その紙とコーヒーを用意したのが俺だって決めつけんなよ」
「それだって自明でしょ? 小暮先生は、亜美の恋人。亜美が『死んでやる』なんて送ってあんな反応を示す人は、恋人だけ。祖父母や弓香は、亜美を疎ましく思っていたのだから、どうぞご勝手にって何の反応も示さないか、良くても警察に連絡。他の友人や知人だって、冗談ととらえるか、警察に連絡するかしないか。……恋人だけなんだよ。亜美があのメッセージを送って意味がある相手は。亜美の秘密の恋人の小暮先生だけが、亜美が死ぬことで関係が明るみになる事を恐れ、殺意に繋がるんだ」
赤野の言葉に、小暮先生が黙り込む。
言い返す言葉が見つからなくなってしまったのだろう。
「この……クソガキ!!!」
小暮先生が、赤野に殴りかかる。追い詰められた小暮が、怒りに任せて赤野に殴りかかる。
周りは、突然の小暮先生の行動に、一歩行動が遅れてしまった。
ビクビクしながらも、小暮先生は、自らの罪を認めず否定した。
「せ、先生……」
敦が先生の様子に悲しそう顔をする。
敦が目撃したのは、本当に赤野の言う通りに小暮先生なのだろう。敦が目撃していて、時計が物証として出てきているのだから、これはもう亜美の恋人は、小暮先生で確定だろうと思うのに。
「じゃあ、僕が一つ一つ説明するね」
にこやかに赤野が笑う。
「まず、亜美が焦っていたという証拠の一つとして、弓香と祖父母の証言は得られたの?」
「ああ。十四歳になった時から、弁護士に相談を始めたらしい」
木根刑事がスマホを見ながら答える。仲間と情報共有をしているのだろう。
「そう。そして亜美はそれを知った。……勘付いたと言った方が良いかな? 気づいて、新しい金づるを探し始めた。……SNSで匂わせ写真を上げ始めた頃の事かな。匂わせ写真を上げることで、徐々に相手が逃れられないようにしていたんだと思う」
なるほど。秘密の相手なのに被害者がネットにアップしていたのは、むしろ誰かに特定して欲しいと考えていたんだ。
「でも、小暮先生は、本気ではなかった。亜美に強引に迫られて断れなくって始めた関係だったのかもね。だから、周囲から隠したくて、連絡先も交換しなかったし、会う時も一目で小暮先生だとは分からない格好で会うようにしていた」
芝涼子がファミレスで小暮先生に気づかなかったのは、そのためだ。だが、毎日顔を合わせていた芝敦には気づかれてしまった。
「時計を調べたら、出てくるんじゃない? 先生の形跡が。……そうだな、過去の写真にこの時計をしている先生が探せば出てくるでしょ?それに、頻繁に小暮先生に亜美が連絡を取っていたという証言も……」
「仮に、仮に俺が、坂本亜美と付き合っていたとして、それがどうして殺人の証拠になる? ならないだろうが!!」
小暮先生が、赤野君の言葉を遮る。
かなり動揺しているのが分かる。
「そりゃ、保護者の一人とそういう関係になってしまったら、周囲から隠しもするだろう? それのどこがおかしい?」
開き直ってしまった。
でも、確かに言う通りだ。亜美の恋人が小暮先生だからって、それが殺人と直接結びつくわけではない。
「全部だよ。小暮先生の行動は、全部矛盾だらけ。」
「な? 何でだ?」
「だって、前日に揉めていた芝涼子と坂本亜美を、どうして止めに入らなかったの? 坂本弓香の担任の三浦佐紀先生は、止めに入ったのに。三浦先生一人では止められなかったのに、どうして敦君の担任の小暮先生は、止めに入らなかったの? 大騒ぎになっていたから、気づかない訳ないでしょ?」
「そ、それは……」
「亜美と接触したくなかったんだ。その時には、亜美に殺意を向けていたから。毒入りのコーヒーとあの紙。犯行前には殺意があったからこそ用意できた物だよね? それを用意していたのだって、既に殺意があった証拠だよ」
赤野は、あの亜美と涼子が揉めているのを見た時点で違和感をみつけていたんだ。
もちろん、殺人が起きるとまでは感じていなかっただろうが……。
「コーヒー缶に入れた毒物は、なんだろう。小暮先生は……国語の担当だっけ? ということは、古式ゆかしく古典のお話に出てくるトリカブト、ふぐ毒……肥料からの生成物、まあ、これは、僕の管轄じゃない。鑑識さんがすぐ特定してくれるよ。自殺に見せかけていたんだから、そこに毒物が入っていたことは、自明」
「だから、その紙とコーヒーを用意したのが俺だって決めつけんなよ」
「それだって自明でしょ? 小暮先生は、亜美の恋人。亜美が『死んでやる』なんて送ってあんな反応を示す人は、恋人だけ。祖父母や弓香は、亜美を疎ましく思っていたのだから、どうぞご勝手にって何の反応も示さないか、良くても警察に連絡。他の友人や知人だって、冗談ととらえるか、警察に連絡するかしないか。……恋人だけなんだよ。亜美があのメッセージを送って意味がある相手は。亜美の秘密の恋人の小暮先生だけが、亜美が死ぬことで関係が明るみになる事を恐れ、殺意に繋がるんだ」
赤野の言葉に、小暮先生が黙り込む。
言い返す言葉が見つからなくなってしまったのだろう。
「この……クソガキ!!!」
小暮先生が、赤野に殴りかかる。追い詰められた小暮が、怒りに任せて赤野に殴りかかる。
周りは、突然の小暮先生の行動に、一歩行動が遅れてしまった。
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