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高校一年生(暗号・トリック中心)
授業参観5
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「ねえ、やっぱり自殺ではないと、赤野君は思うの?」
今井に聞かれて赤野が、
「可能性がないわけではないけれども……確率は低いよね。突然思い立って自殺する人はいるけれども、SNSを見た限りは、そういう性格には思えない」
確かに、亡くなった夫の両親のお金で生活しているのに、全く遠慮している様子もないSNS。それに、PTAでの活動の様子も、亜美の性格を表している。
「まあ、自殺するなら、相手の悪口を散々書いた紙を書き残しそう」
夏目が苦笑いする。
亜美の残したのは、缶コーヒーと『死んでやる』という文字の書かれた紙だけだ。
「あの紙だって変でしょ? 『死んでやる』なんて言葉。その横で倒れていたら、ええ、死んでますねって感じ。ドアにドアって表札掲げているみたい。その文言なら、相手に『死んでやる』って書き置きしていなくなるとか……そういう時に使う言葉。自殺する隣に置くなら、書くのは誰のせいでとか、どういう理由でとかだよ。夏目君の言う通り、やっぱり亜美の性格では、あの言葉は変だよ」
確かに赤野の言う通り、あの文言は変だ。言われてみれば、自分が自殺するときに書き残す言葉としては不適格。誰かに電話して、相手に『死んでやる』と言い残すならともかく、遺体の傍におく言葉としては、おかしい。
「あ、スマホは?あったんでしょ? それなら、相手の電話番号とか、残っていたんじゃないの?」
自殺に見せかけていたなら、スマホ、財布、家の鍵、なんて物は手元に残っていたはずだ。免許は持っていたようだし、そういう物が無くなっていれば、せっかく自殺に見せかけても意味が無くなる。
俺が、気づいて木根刑事に聞けば、
「それが……残念ながら、連絡先は一切交換していなかったようなんだ」
と、木根刑事が首を横に振る。
まあ、そうか。もしスマホに相手の情報が残っていたら、刑事達が気づかない訳がない。しかし、それも不思議な話。よっぽど秘密の相手だったのだろうか? じゃあ、会う時の連絡手段は、どうしていたのだろう?
「ねえ。この辺のことを調べておいてくれる?」
赤野が、木根刑事に何かを送信する。
「分かった。頼んでおく」
木根刑事は、そう言ってどこかに連絡をいれた。
赤野には、もう犯人の目星は付いているのだろうか?
俺には、さっぱり分からないのだが。
「さあ、芝親子のいる教室だ。頼んだぞ。」
木根刑事は、そう言って教室のドアを開けた。
中にいたのは、女性と中学の制服を着た男の子。
これが、芝涼子と息子の敦。
「わあ、良かった。僕ら以外にも人がいるじゃない」
赤野がヘラリと笑って教室に入る。
「ねえ、君も何か目撃したの?」
にこやかに赤野が話し掛けた相手は、息子の敦。
敦は、木根刑事をちらりと見て、おどおどしている。
「あら、昨日の子? あの熊みたいな男の人と一緒だった……」
涼子が、赤野の顔を見て、昨日イサクに言い争いを止められた時のことを思い出す。
「あ、昨日の人だ。じゃあ、僕らと同じで、あの時に被害者を見たから警察に事情を聞かれているんだ」
始終にこやかな赤野。二人の警戒を解こうとしているのだろう。
同じ立場であることを強調しているのも、芝親子に仲間意識を持たせようとしているのかもしれない。
「あの熊みたいな人ね、僕のお父さん。似ているでしょ?」
「え、どこが?」
思わず俺は、声が出る。だって、本当に熊みたいな赤野の父イサク。赤野とは似ていない気がするのだが。
「髪の色とか、目の色とか、そっくりじゃない」
赤野が不貞腐れた顔をする。
「いや、そんな細かなところを言われても」
赤野、そんな物事のとらえ方では、絵は上達しそうにないぞ?どうりで夏目が何度教えても、犬の絵がチョコチップクッキーから進化しない。
クスクスと涼子が笑っている。
取りあえず、芝親子の気持ちはほぐれてくれたみたいだ。
今井に聞かれて赤野が、
「可能性がないわけではないけれども……確率は低いよね。突然思い立って自殺する人はいるけれども、SNSを見た限りは、そういう性格には思えない」
確かに、亡くなった夫の両親のお金で生活しているのに、全く遠慮している様子もないSNS。それに、PTAでの活動の様子も、亜美の性格を表している。
「まあ、自殺するなら、相手の悪口を散々書いた紙を書き残しそう」
夏目が苦笑いする。
亜美の残したのは、缶コーヒーと『死んでやる』という文字の書かれた紙だけだ。
「あの紙だって変でしょ? 『死んでやる』なんて言葉。その横で倒れていたら、ええ、死んでますねって感じ。ドアにドアって表札掲げているみたい。その文言なら、相手に『死んでやる』って書き置きしていなくなるとか……そういう時に使う言葉。自殺する隣に置くなら、書くのは誰のせいでとか、どういう理由でとかだよ。夏目君の言う通り、やっぱり亜美の性格では、あの言葉は変だよ」
確かに赤野の言う通り、あの文言は変だ。言われてみれば、自分が自殺するときに書き残す言葉としては不適格。誰かに電話して、相手に『死んでやる』と言い残すならともかく、遺体の傍におく言葉としては、おかしい。
「あ、スマホは?あったんでしょ? それなら、相手の電話番号とか、残っていたんじゃないの?」
自殺に見せかけていたなら、スマホ、財布、家の鍵、なんて物は手元に残っていたはずだ。免許は持っていたようだし、そういう物が無くなっていれば、せっかく自殺に見せかけても意味が無くなる。
俺が、気づいて木根刑事に聞けば、
「それが……残念ながら、連絡先は一切交換していなかったようなんだ」
と、木根刑事が首を横に振る。
まあ、そうか。もしスマホに相手の情報が残っていたら、刑事達が気づかない訳がない。しかし、それも不思議な話。よっぽど秘密の相手だったのだろうか? じゃあ、会う時の連絡手段は、どうしていたのだろう?
「ねえ。この辺のことを調べておいてくれる?」
赤野が、木根刑事に何かを送信する。
「分かった。頼んでおく」
木根刑事は、そう言ってどこかに連絡をいれた。
赤野には、もう犯人の目星は付いているのだろうか?
俺には、さっぱり分からないのだが。
「さあ、芝親子のいる教室だ。頼んだぞ。」
木根刑事は、そう言って教室のドアを開けた。
中にいたのは、女性と中学の制服を着た男の子。
これが、芝涼子と息子の敦。
「わあ、良かった。僕ら以外にも人がいるじゃない」
赤野がヘラリと笑って教室に入る。
「ねえ、君も何か目撃したの?」
にこやかに赤野が話し掛けた相手は、息子の敦。
敦は、木根刑事をちらりと見て、おどおどしている。
「あら、昨日の子? あの熊みたいな男の人と一緒だった……」
涼子が、赤野の顔を見て、昨日イサクに言い争いを止められた時のことを思い出す。
「あ、昨日の人だ。じゃあ、僕らと同じで、あの時に被害者を見たから警察に事情を聞かれているんだ」
始終にこやかな赤野。二人の警戒を解こうとしているのだろう。
同じ立場であることを強調しているのも、芝親子に仲間意識を持たせようとしているのかもしれない。
「あの熊みたいな人ね、僕のお父さん。似ているでしょ?」
「え、どこが?」
思わず俺は、声が出る。だって、本当に熊みたいな赤野の父イサク。赤野とは似ていない気がするのだが。
「髪の色とか、目の色とか、そっくりじゃない」
赤野が不貞腐れた顔をする。
「いや、そんな細かなところを言われても」
赤野、そんな物事のとらえ方では、絵は上達しそうにないぞ?どうりで夏目が何度教えても、犬の絵がチョコチップクッキーから進化しない。
クスクスと涼子が笑っている。
取りあえず、芝親子の気持ちはほぐれてくれたみたいだ。
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