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そして冒険は始まりて
覚悟をきめろ!
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「なあ、隆のあの強靭な足腰は、どうやって鍛えたんだ? 強い敵でもびくともしねぇ!」
ゲボルグさんが、ドラゴンの攻撃を受け流す動きに感心している。
たぶん、あれかなぁ。満員電車。
十年ほど前からこの世界に来ているようだが、元々は、普通にしていたはずだ。
ならば、親父の足腰を鍛えたのは、通勤中の満員電車に違いない。
「ふんぬぅ!!」
ズバンッ! と音を立てて、親父の剣が、ドラゴンの腕を弾き飛ばす。
うぇぇぇ。
ドラゴンのぶっとい腕が、ゴトリと音を立てて落ちる。
「ギャアアアア」
ドラゴンが、炎をまき散らす。
「あらあら大変ですね♪」
リリーナさんが魔法で炎を回避してくれる。
血しぶきをあげるドラゴンに、悠里はドン引きしている。
「え、ちょっと無理かも……」
目の前に繰り広げられるスプラッタな状況に、悠里が青ざめる。
そりゃそうだ。
ゲームの中ならともかく、これはちょっと初めでダンジョンに入る我々には、ハードルが高い光景。
そうだ。異世界とは決してゲームの世界ではない。
それはそれで、現実なのだということを、思い知らされる。
ちょっと興味本位でダンジョンについて来たのは、間違いだったかもしれない。
命がけのダンジョン攻略だ。
敵を攻撃しなければ、自分がやられる。
動きが鈍い悠里を見て、暴れるドラゴンが、悠里の方へ向かってくる。
一番弱そうな悠里をドラゴンは狙っているのだろう。
悠里を殺して、そこから逃げる気か?
「え、ちょっと!」
うろたえる悠里。
これは、スプラッタにドン引きしている状況ではない。
悠里は弓を引く間がない。
「悠里! 逃げろ!」
俺は慌てて悠里を助けるために剣を持って走る。
「この! クソ爬虫類め!!!」
俺の後ろから来た親父が、ドラゴンに剣を突き立てる。
ドラゴンの背中を袈裟切りにするが、固いうろこに覆われた、分厚いドラゴンは、それでは死なない。
「いでよ! 雷神!」
リリーナさんの声に合わせて、雷がドラゴンに落ちる。
それでも死なないドラゴンが、ユラリと方向転換して、こちらを睨む。
悠里から、今度が俺に狙いを定めたようだ。
俺は、剣を握りなおす。
やってやろうじゃないか! 覚悟が決まっている!
「うぉぉぉぉ!」
俺は、叫び声を上げながらドラゴンへ突っ込んでいく。
グラリとドラゴンが揺れる。
ズゥゥウウン。
ドラゴンは、俺の目の前で倒れて動かなくなった。
どうやら、親父の一撃と、リリーナさんの魔法で、すでに息絶えていたようだ。
なんだよ。せっかく覚悟を決めて戦おうと思ったのに!
俺の覚悟は、中途半端なままで終わってしまった。
呆然とする俺の肩を、親父がポンと叩く。
「良い表情だったな!」
えっと、褒められているのは、分かるが、家での親父のダラダラした様子を思えば、ちょっと複雑。
まだ、このギャップについて行ってないんだよな。
この世界の親父は、なんだか別人のようだ。
ゲボルグさんが、ドラゴンの攻撃を受け流す動きに感心している。
たぶん、あれかなぁ。満員電車。
十年ほど前からこの世界に来ているようだが、元々は、普通にしていたはずだ。
ならば、親父の足腰を鍛えたのは、通勤中の満員電車に違いない。
「ふんぬぅ!!」
ズバンッ! と音を立てて、親父の剣が、ドラゴンの腕を弾き飛ばす。
うぇぇぇ。
ドラゴンのぶっとい腕が、ゴトリと音を立てて落ちる。
「ギャアアアア」
ドラゴンが、炎をまき散らす。
「あらあら大変ですね♪」
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血しぶきをあげるドラゴンに、悠里はドン引きしている。
「え、ちょっと無理かも……」
目の前に繰り広げられるスプラッタな状況に、悠里が青ざめる。
そりゃそうだ。
ゲームの中ならともかく、これはちょっと初めでダンジョンに入る我々には、ハードルが高い光景。
そうだ。異世界とは決してゲームの世界ではない。
それはそれで、現実なのだということを、思い知らされる。
ちょっと興味本位でダンジョンについて来たのは、間違いだったかもしれない。
命がけのダンジョン攻略だ。
敵を攻撃しなければ、自分がやられる。
動きが鈍い悠里を見て、暴れるドラゴンが、悠里の方へ向かってくる。
一番弱そうな悠里をドラゴンは狙っているのだろう。
悠里を殺して、そこから逃げる気か?
「え、ちょっと!」
うろたえる悠里。
これは、スプラッタにドン引きしている状況ではない。
悠里は弓を引く間がない。
「悠里! 逃げろ!」
俺は慌てて悠里を助けるために剣を持って走る。
「この! クソ爬虫類め!!!」
俺の後ろから来た親父が、ドラゴンに剣を突き立てる。
ドラゴンの背中を袈裟切りにするが、固いうろこに覆われた、分厚いドラゴンは、それでは死なない。
「いでよ! 雷神!」
リリーナさんの声に合わせて、雷がドラゴンに落ちる。
それでも死なないドラゴンが、ユラリと方向転換して、こちらを睨む。
悠里から、今度が俺に狙いを定めたようだ。
俺は、剣を握りなおす。
やってやろうじゃないか! 覚悟が決まっている!
「うぉぉぉぉ!」
俺は、叫び声を上げながらドラゴンへ突っ込んでいく。
グラリとドラゴンが揺れる。
ズゥゥウウン。
ドラゴンは、俺の目の前で倒れて動かなくなった。
どうやら、親父の一撃と、リリーナさんの魔法で、すでに息絶えていたようだ。
なんだよ。せっかく覚悟を決めて戦おうと思ったのに!
俺の覚悟は、中途半端なままで終わってしまった。
呆然とする俺の肩を、親父がポンと叩く。
「良い表情だったな!」
えっと、褒められているのは、分かるが、家での親父のダラダラした様子を思えば、ちょっと複雑。
まだ、このギャップについて行ってないんだよな。
この世界の親父は、なんだか別人のようだ。
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