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それからの生活
愛情をいただいてます 31
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気分悪い。
私が、会社を休んで、部屋のベッドで横になっていると、モドキが何やら電子レンジを使っている。
あの猫モドキ、ついに文明の利器を覚えたか。
マロンの世話もしてくれているし、ペットボトルの水くらいなら運んでくれる。
ついに電子レンジまで使うようになったら、企業様が努力して作って下さった素敵な冷凍食品の数々を、モドキは作れてしまうだろう。
すごいな。あの猫、一人暮らし出来るんじゃないか?
「ほれ、これを腹に当てていろ」
モドキが渡してくれたのは、電子レンジで温めた物。
布の袋のような物で、中には小さくて固い物が入っている。
「小豆を詰めた物だそうだ。気分が悪い時に、これを腹に当てれば、楽になるかもしれないからと。この間来た薫の母からの段ボールに入っておった」
モドキ、あの段ボール箱を開封して中身確認してくれていたんだ。
私の実家から来た段ボール。きっと余計なお世話な物が詰まっているのだと思ったから、台所の横に放置していた。
「中身ぐらい確認しないと、腐る物が入っていれば困るであろう?」
私の頭をポフポフ撫でながら、モドキがかける言葉は優しい。
元の飼い主である綾小路絹江さんが体調を崩していた時に、介護をしていたそうだから、人間の世話もなれているのだろう。
以前、風邪を引いた時にも、モドキは私の世話をしてくれていた。
モドキが温めてくれた小豆の袋は、じんわりと温かく、気分を落ち着けてくれる。
足元で心配して見てくれているマロンのフワフワと、頭を撫でてくれるモドキの肉球の感触と、お腹の小豆の感触と。その全てが、大丈夫だよ、と私を元気づける。
「母にも連絡して、礼を言っておけ」
モドキに促されて、私は実家に連絡してみる。
電話はウザいから、メールだけれども。
「ありがとう。小豆の袋助かった」と送信すれば、「あら良かった! 無理しないでね」と、すぐに返信が来る。
心配してくれているのだろう。それは、嬉しい。
「ちゃんと食べている?」「それは、まだ平気。優一さんが、色々工夫して作ってくれているし」「あら、良いわね。お料理のできる旦那さんで。家のお父さんなんか……」話は、どんどん長くなる。
適当に流して読んでいれば、「そういえば、食べた?」と、母の言葉。
何の事だろう? 何か段ボールに食べ物が入っていたのであろうか? 「何を?」と私が問えば、母は返信してくる。
――カニ缶を段ボール箱に入れておいたんだけれども――
「モドキ? カニ缶が段ボールに入っていたようなんだけれども?」
私の言葉に、モドキの肩がピクリと震える。
「さ、さあどうだろう? 知らんな。柏木が持って行ったのではないか? それか、薫の母上の勘違いか……」
声が裏返っているぞ、モドキ!
段ボールを開けたのは、それが目的であったな! モドキよ。
油断も隙も無い猫モドキだ。
私が、会社を休んで、部屋のベッドで横になっていると、モドキが何やら電子レンジを使っている。
あの猫モドキ、ついに文明の利器を覚えたか。
マロンの世話もしてくれているし、ペットボトルの水くらいなら運んでくれる。
ついに電子レンジまで使うようになったら、企業様が努力して作って下さった素敵な冷凍食品の数々を、モドキは作れてしまうだろう。
すごいな。あの猫、一人暮らし出来るんじゃないか?
「ほれ、これを腹に当てていろ」
モドキが渡してくれたのは、電子レンジで温めた物。
布の袋のような物で、中には小さくて固い物が入っている。
「小豆を詰めた物だそうだ。気分が悪い時に、これを腹に当てれば、楽になるかもしれないからと。この間来た薫の母からの段ボールに入っておった」
モドキ、あの段ボール箱を開封して中身確認してくれていたんだ。
私の実家から来た段ボール。きっと余計なお世話な物が詰まっているのだと思ったから、台所の横に放置していた。
「中身ぐらい確認しないと、腐る物が入っていれば困るであろう?」
私の頭をポフポフ撫でながら、モドキがかける言葉は優しい。
元の飼い主である綾小路絹江さんが体調を崩していた時に、介護をしていたそうだから、人間の世話もなれているのだろう。
以前、風邪を引いた時にも、モドキは私の世話をしてくれていた。
モドキが温めてくれた小豆の袋は、じんわりと温かく、気分を落ち着けてくれる。
足元で心配して見てくれているマロンのフワフワと、頭を撫でてくれるモドキの肉球の感触と、お腹の小豆の感触と。その全てが、大丈夫だよ、と私を元気づける。
「母にも連絡して、礼を言っておけ」
モドキに促されて、私は実家に連絡してみる。
電話はウザいから、メールだけれども。
「ありがとう。小豆の袋助かった」と送信すれば、「あら良かった! 無理しないでね」と、すぐに返信が来る。
心配してくれているのだろう。それは、嬉しい。
「ちゃんと食べている?」「それは、まだ平気。優一さんが、色々工夫して作ってくれているし」「あら、良いわね。お料理のできる旦那さんで。家のお父さんなんか……」話は、どんどん長くなる。
適当に流して読んでいれば、「そういえば、食べた?」と、母の言葉。
何の事だろう? 何か段ボールに食べ物が入っていたのであろうか? 「何を?」と私が問えば、母は返信してくる。
――カニ缶を段ボール箱に入れておいたんだけれども――
「モドキ? カニ缶が段ボールに入っていたようなんだけれども?」
私の言葉に、モドキの肩がピクリと震える。
「さ、さあどうだろう? 知らんな。柏木が持って行ったのではないか? それか、薫の母上の勘違いか……」
声が裏返っているぞ、モドキ!
段ボールを開けたのは、それが目的であったな! モドキよ。
油断も隙も無い猫モドキだ。
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