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違う世界線58
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「じゃあ、ご婚約ということですか? おめでとうございます」
水島は、にこやかにそう言ってくれた。
水島に、柏木優一と具体的な話が出始めたことを報告した。
水島の恋愛的嗜好というものが、何がどうでこうだということは、結局気弱な私には確認できていないが、柏木には手を出さないようにしてほしいという、私なりの激弱な牽制だ。
でも、ソムリエ幸恵お墨付きのイケメン水島が、万一本気で柏木を落とそうとするならば、敵いそうにない。だから、ここは推し友である私に免じて、ご辞退をば願いたいのだ。
「まあもし万一別れるようなことがあれば、すぐ言って下さい。慰め要員も必要でしょ?」
と水島は、ウィンクをしながら茶目っ気たっぷりに付け足した。
誰をどのように慰めるつもりだい?
いや、自分の彼氏でなければ、見たいシチュエーションではある。イケメン年上仕事出来る系が、傷心の歳下可愛い系を慰める……。
これは、大好物のストーリー展開。
だが、自分の彼氏でそれは困る。不穏なことは、言わないでいただきたい。
「そういえば、松本さんは、もうご結婚が決まったそうで」
「そうなのよ。細かいことはこれかららしいのだけれども、入籍の日程まで決めてそこへ動き出しているんだって」
「めでたいですね。……でも、営業の伊川さんが、ずいぶんお怒りらしいです」
「伊川正樹?」
社内ですれ違っても、もう無視していた存在の名前。
まだ、幸恵に執心だったんだと驚く。
私には理解できない価値観と方法だが、幸恵に対しては、正樹なりに本気で恋をしていたのだろう。
「そうです。さんざん貢がされた挙句に、さっさと別の人を見つけて、結婚って。貢いだ方からしたら、面白くないでしょ? 僕、前は営業にいましたので、その時の友達から聞いたんですが……」
水島が、周囲をみてから小声で話す。
「え、何?」
正樹がどうなろうが知ったことではないが、ちょっと気になる。
「松本さんの相手の方に、直談判に行こうとしているようです」
「まじ?」
なんだか、私とは違う世界線。ドロドロ系の恋愛が展開しているようだ。
正樹とは、結局そういう世界線の生き物だったのだろう。私と正樹とは、異世界恋愛だったのだと今さら思う。どこまで行っても、合うはずのない関係だったのだ。それに気づくまでに七年も掛かってしまったけれども。
相手に直談判に行くという正樹。これは、相手は会社社長という立場もあって、スキャンダルは嫌うだろうから破談になりそうなレベルで揉めそうな気はする。だが、きっと、恋愛レベルの高い幸恵なら華麗に回避できるのだろう。
ここは、異世界のこととして放っておいて、見守ることにしよう。こっちに飛び火されても困る。
水島は、にこやかにそう言ってくれた。
水島に、柏木優一と具体的な話が出始めたことを報告した。
水島の恋愛的嗜好というものが、何がどうでこうだということは、結局気弱な私には確認できていないが、柏木には手を出さないようにしてほしいという、私なりの激弱な牽制だ。
でも、ソムリエ幸恵お墨付きのイケメン水島が、万一本気で柏木を落とそうとするならば、敵いそうにない。だから、ここは推し友である私に免じて、ご辞退をば願いたいのだ。
「まあもし万一別れるようなことがあれば、すぐ言って下さい。慰め要員も必要でしょ?」
と水島は、ウィンクをしながら茶目っ気たっぷりに付け足した。
誰をどのように慰めるつもりだい?
いや、自分の彼氏でなければ、見たいシチュエーションではある。イケメン年上仕事出来る系が、傷心の歳下可愛い系を慰める……。
これは、大好物のストーリー展開。
だが、自分の彼氏でそれは困る。不穏なことは、言わないでいただきたい。
「そういえば、松本さんは、もうご結婚が決まったそうで」
「そうなのよ。細かいことはこれかららしいのだけれども、入籍の日程まで決めてそこへ動き出しているんだって」
「めでたいですね。……でも、営業の伊川さんが、ずいぶんお怒りらしいです」
「伊川正樹?」
社内ですれ違っても、もう無視していた存在の名前。
まだ、幸恵に執心だったんだと驚く。
私には理解できない価値観と方法だが、幸恵に対しては、正樹なりに本気で恋をしていたのだろう。
「そうです。さんざん貢がされた挙句に、さっさと別の人を見つけて、結婚って。貢いだ方からしたら、面白くないでしょ? 僕、前は営業にいましたので、その時の友達から聞いたんですが……」
水島が、周囲をみてから小声で話す。
「え、何?」
正樹がどうなろうが知ったことではないが、ちょっと気になる。
「松本さんの相手の方に、直談判に行こうとしているようです」
「まじ?」
なんだか、私とは違う世界線。ドロドロ系の恋愛が展開しているようだ。
正樹とは、結局そういう世界線の生き物だったのだろう。私と正樹とは、異世界恋愛だったのだと今さら思う。どこまで行っても、合うはずのない関係だったのだ。それに気づくまでに七年も掛かってしまったけれども。
相手に直談判に行くという正樹。これは、相手は会社社長という立場もあって、スキャンダルは嫌うだろうから破談になりそうなレベルで揉めそうな気はする。だが、きっと、恋愛レベルの高い幸恵なら華麗に回避できるのだろう。
ここは、異世界のこととして放っておいて、見守ることにしよう。こっちに飛び火されても困る。
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