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5)西の都『カマバー』と卑猥な泉。①
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「さ、ここからは脛毛の森ですから、くれぐれもルナから離れないようにお願いしマス」
ルナはそう言って、鬱蒼と茂る森の中に入っていった。
モンスター避けのローションで全身ヌルヌルになった俺達は、不快感マックスのまますっかり細くなってしまった街道を進んだ。
ローションのせいで靴の内側が滑り、何度も脱げそうになる。本当にこのローションは、転倒の危険性を差し置いてもつけるべきなのだろうか……。
「きゃアッ!」
先導していたルナは、早速靴が脱げてすっ転んでいた。
だから言わんこっちゃない。
カヴァはと言えば、尻尾でうまいことバランスが取れるらしく、3人の中で一番歩みが安定している。マイペースに街道を進んでいる風だが、ルナが転ぶ度にさりげなく歩みを止めて、周囲を警戒してくれているようだ。
カヴァは一見クールに見えるが、なんだかんだで面倒見が良い姉御肌……もとい、兄貴肌みたいだ。
「なぁ、本当にこのローション、必要なのか? いざってときに、足が滑って逃げられなくなるんじゃ……」
俺はルナを助け起こしながら、立ち止まっているカヴァに向かってそう聞いた。
「ローションは必要よ。この森でアイツに出会った時、こうしておかないと地獄を見るわよ」
物騒なことを言う割に、俺達のモンスター対策はこのローションのみで、カヴァも俺達も武器らしい武器は所持していない。
「この森に出るケダマリって、一体どんなモンスターなんだ?」
俺はそう聞きながら、キョロキョロと辺りを見回す。
異変が起きたのは、その瞬間だった。
ヒュン! ヒヒュン!!
不意に細い紐が空を切るような音が、辺りに鳴り響いた。
「そら、来たわよ!」
カヴァはそう言って、上を見上げた。
その刹那、パシン! という乾いた音と共に、カヴァが俺に向かって飛んできた細長い何かを、尻尾でなぎ払ってくれる。
「これが"ケダマリ"の舌よ、気をつけて! ケダマリの舌は毛深い皮膚に強烈な粘着力でベッタリ貼り付いて、私達オスの毛を丸ごとひっぺがして、食べちゃうの」
「は!? 食べる!? 毛を!? ちょっ、うわ!」
これ以上呑気に説明を聞いている暇は、どうやら無さそうだ。
俺は次々に襲い来るケダマリの舌を手足に受けては、ローションのぬめりに任せて慌てて振り払う。
「そうよ。髪の毛は勿論、全ての毛が危険よ。ケダマリはオスの毛深い脛毛と陰毛が特に大好物なの。何も知らずにこの森に入った毛深いオスが、全身の毛という毛を剥がされて、全身ツルツルの状態で森外れに打ち捨てられた……なんて事もあるの。しかもケダマリは、特にゲイ族のオスがお好みらしいって噂よ!」
俺が振り払ったケダマリの舌が、側にあった太い木の幹にピシャリと当たる。鞭のようにしなったその舌は、木の皮をベロリと力づくで剥ぎ取って、更には退路に茂る葉っぱを根こそぎちぎり取りながら、藪の中に消えた。
「え、ちょっと待って!? あれ、ブラジリアンワックスより痛そうなんですけど!!」
アレに全身ツルツルにされて打ち捨てられるとか、めっちゃ怖い! ていうかオスの陰毛が大好物とか、どう考えてもあれは変態モンスターだ。
そんな事を考えている間にも、粘着質の舌がそこら中から鞭のような音を立てて飛んできては、俺達に襲いかかる。
特に狙われているのは、俺達の中で一番毛深いルナだ。
ルナは元々あまり運動神経が良くないのか、走って逃げる俺達の一番後ろを、何度も転びそうになりながら必死に走っている。
俺は再びローションで滑って顔面から転びそうになったルナを素早く抱き上げた。小柄なルナは予想以上に軽い。
襲い来るケダマリの舌を避けながら、俺達はなんとか脛毛の森を抜けた。
僅かに開けた場所で、俺達は立ち止まる。
「はぁ……はぁ……はぁ、撒いたか……!?」
「こ、ここまでくればっ……はぁっ、多分、大丈、夫……っ」
「うう、ルナが道案内役のはずでしたのに、申し訳ありまセン……」
「いいよ。誰しも得手不得手があるのは仕方ないし、逃げ切れたんだから気にするな」
「そうよ、毛深いのは体質なんだから、仕方無いわルナ」
「いや、俺が言ったのは運動神経の方だからね!?」
俺は呼吸を整えながら、辛うじてそうツッコんだ。
いくらルナが軽かったとはいえ、流石に人を一人抱えながらの猛ダッシュはきつい。
カヴァは現在地を確認するように地図を広げながら辺りを見回した。
ルナはそう言って、鬱蒼と茂る森の中に入っていった。
モンスター避けのローションで全身ヌルヌルになった俺達は、不快感マックスのまますっかり細くなってしまった街道を進んだ。
ローションのせいで靴の内側が滑り、何度も脱げそうになる。本当にこのローションは、転倒の危険性を差し置いてもつけるべきなのだろうか……。
「きゃアッ!」
先導していたルナは、早速靴が脱げてすっ転んでいた。
だから言わんこっちゃない。
カヴァはと言えば、尻尾でうまいことバランスが取れるらしく、3人の中で一番歩みが安定している。マイペースに街道を進んでいる風だが、ルナが転ぶ度にさりげなく歩みを止めて、周囲を警戒してくれているようだ。
カヴァは一見クールに見えるが、なんだかんだで面倒見が良い姉御肌……もとい、兄貴肌みたいだ。
「なぁ、本当にこのローション、必要なのか? いざってときに、足が滑って逃げられなくなるんじゃ……」
俺はルナを助け起こしながら、立ち止まっているカヴァに向かってそう聞いた。
「ローションは必要よ。この森でアイツに出会った時、こうしておかないと地獄を見るわよ」
物騒なことを言う割に、俺達のモンスター対策はこのローションのみで、カヴァも俺達も武器らしい武器は所持していない。
「この森に出るケダマリって、一体どんなモンスターなんだ?」
俺はそう聞きながら、キョロキョロと辺りを見回す。
異変が起きたのは、その瞬間だった。
ヒュン! ヒヒュン!!
不意に細い紐が空を切るような音が、辺りに鳴り響いた。
「そら、来たわよ!」
カヴァはそう言って、上を見上げた。
その刹那、パシン! という乾いた音と共に、カヴァが俺に向かって飛んできた細長い何かを、尻尾でなぎ払ってくれる。
「これが"ケダマリ"の舌よ、気をつけて! ケダマリの舌は毛深い皮膚に強烈な粘着力でベッタリ貼り付いて、私達オスの毛を丸ごとひっぺがして、食べちゃうの」
「は!? 食べる!? 毛を!? ちょっ、うわ!」
これ以上呑気に説明を聞いている暇は、どうやら無さそうだ。
俺は次々に襲い来るケダマリの舌を手足に受けては、ローションのぬめりに任せて慌てて振り払う。
「そうよ。髪の毛は勿論、全ての毛が危険よ。ケダマリはオスの毛深い脛毛と陰毛が特に大好物なの。何も知らずにこの森に入った毛深いオスが、全身の毛という毛を剥がされて、全身ツルツルの状態で森外れに打ち捨てられた……なんて事もあるの。しかもケダマリは、特にゲイ族のオスがお好みらしいって噂よ!」
俺が振り払ったケダマリの舌が、側にあった太い木の幹にピシャリと当たる。鞭のようにしなったその舌は、木の皮をベロリと力づくで剥ぎ取って、更には退路に茂る葉っぱを根こそぎちぎり取りながら、藪の中に消えた。
「え、ちょっと待って!? あれ、ブラジリアンワックスより痛そうなんですけど!!」
アレに全身ツルツルにされて打ち捨てられるとか、めっちゃ怖い! ていうかオスの陰毛が大好物とか、どう考えてもあれは変態モンスターだ。
そんな事を考えている間にも、粘着質の舌がそこら中から鞭のような音を立てて飛んできては、俺達に襲いかかる。
特に狙われているのは、俺達の中で一番毛深いルナだ。
ルナは元々あまり運動神経が良くないのか、走って逃げる俺達の一番後ろを、何度も転びそうになりながら必死に走っている。
俺は再びローションで滑って顔面から転びそうになったルナを素早く抱き上げた。小柄なルナは予想以上に軽い。
襲い来るケダマリの舌を避けながら、俺達はなんとか脛毛の森を抜けた。
僅かに開けた場所で、俺達は立ち止まる。
「はぁ……はぁ……はぁ、撒いたか……!?」
「こ、ここまでくればっ……はぁっ、多分、大丈、夫……っ」
「うう、ルナが道案内役のはずでしたのに、申し訳ありまセン……」
「いいよ。誰しも得手不得手があるのは仕方ないし、逃げ切れたんだから気にするな」
「そうよ、毛深いのは体質なんだから、仕方無いわルナ」
「いや、俺が言ったのは運動神経の方だからね!?」
俺は呼吸を整えながら、辛うじてそうツッコんだ。
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