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3章 罪
尋問
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「さぁ秋にぃ覚悟してもらうよ」
「今日という今日こそは白状してもらうからな」
「ちょっと、お前ら落ち着けって」
俺の言葉などお構いなしの様子の二人が目をギラつかせてズカズカとこちら近づいてくる。
今俺は友人と実の妹から尋問を受けているのだ。
しかも自分の部屋の中で。
「秋にぃここ最近ず~っとファナエルさんとお家デートしてるよね?」
「い、いや。俺とファナエルはもう恋人なんだから毎日デートしても不自然な事ないだろ?」
「普通のカップルはそんな事しないから……それに僕は始っちから聞いてるんだよ、ここ最近になって秋にぃとファナエルさんのバカップルぶりが暴走してるってことを」
斬琉はニヤニヤとした顔をしながらそう言った。
正直、こんな風にからかわれながら突き詰めてくるこいつの姿が容易に想像できるからファナエルと毎日デートしてることは斬琉にバレない様に気をつけていたというのに。
まさか始が学校での様子を斬琉に暴露するとは考えていなかった。
「もうクラスの中でお前らに触れられないって空気が出来てるレベルだからな。特に女子たちなんかは秋良と話しただけでファナエルさんに殺されるんじゃないかって心配してたぜ」
まぁ、当の本人はそんな俺の事情も知らずに楽しそうにしている訳だが。
「なんか急に二人の距離が近くなってるな~と思った僕たちは考えたのです」
「何を?」
「そりゃぁお前とファナエルさんの仲が急接近する何かのイベントがあったんだろうなって考えたんだよ」
アニメでよく見る探偵とその助手みたいなコンビネーションを見せる二人は自慢げに自分達の推理を披露した後、俺の身体をあとずさりさせてしまうほどの勢いでグッと近づいてくる。
「だからよ、何があったかここで白状してもらうぞ」
「なんでお前らにそんな事言わなきゃいけないんだよ!!」
「だって気になるだろ!!俺はそれが気になって夜しか眠れてないんだぞ!!」
「ガッツリ快眠じゃねーか!!」
男子高校生らしいじゃれ合いを俺と始が繰り広げる中、斬琉は不敵な笑みを浮かべてこちらを見続けていた。
「観念しなよ、秋にぃ。今日は夜になるまで両親が帰ってこないし玄関のカギも閉めてる、秋にぃの逃場はどこにもないんだよ」
「なんでそんな大掛かりな計画まで立ててんだよ……」
「ホラホラ、可愛い妹と仲の良い友人がこんなに頼んでるんだよ?早く吐いて楽になりなよ」
斬琉が勝利を確信したような顔を浮かべて悪魔の囁きみたいなことを言い始めた。
このままいくとファナエルとのお家デートで何をやっているかまで聞き始めそうな勢いだ。
それだけは二人に話すことは出来ないからな……どうするべきか。
「なるほど。アキラは二人に捕まってたんだね」
「へ?」
そんな考えを俺がめぐらせていたその最中、透き通った声と共に部屋の扉がガシャリと音を立てて開いた。
「な、何で?玄関のカギは僕がちゃんと閉めたはずなのに」
開いた扉の先に佇んでいた銀髪緑目の美少女、俺の彼女であるファナエル・ユピテルは髪の毛を軽く揺らしながら俺に一つの言葉を投げかけた。
「アキラが家に来る時間がいつもより遅いから来ちゃった」
右手に持った銀色のカギを斬琉と始に見せつけながら。
「あ、合鍵……いつの間にそんなものを」
「この前アキラと一緒に作りに行ったんだ。私もアキラもお互いの家を自由に出入りできた方が便利だろうってことでね」
ファナエルは斬琉に「アキラの部屋以外には入らないから安心して」と声をかけながらスムーズに俺の隣へと歩いて来る。
「それじゃあ私の家に行こう?」
ファナエルは俺の右腕をぎゅっと両手で掴んで誘導している。
唖然とした表情でこちらを見つめる斬琉と始に俺は一言「それじゃあ行ってくる」とだけ伝えて自分の部屋を出ていった。
「あっそうだ、アキラこれ」
玄関で靴を取り出している最中、ファナエルは肩にかけている小さくて白いカバンの中から黒いガムを一つ取り出した。
「体の調子は大丈夫そう?」
「ああ。ここ数日の成果が出てるのかうっかり他人の心を読むなんてことは無くなったよ」
「ならよかった。でも一応私の家に着くまでこのガムは噛んでおいてね」
彼女は「はい、口開けて」と俺に話かけると、口の中へゆっくりと黒いガムを入れてくれる。
ここ数日のお家デートのお陰ですっかりこのガムの味にも慣れたものだ。
斬琉と始が言っていたように、俺とファナエルの距離は最近になってグッと縮まっている。
きっかけは言わずもがな超能力組織『シンガン』との間で起こった一連の騒動だ。
あの時、俺はファナエルが堕天使である事を知った。
そして彼女の過去を全て受け止める事を決意した。
今からファナエルの家で行われるデートはその決意を行動に移した物なのだ。
「今日は何をするんだ?」
「そうだね……今日は私の話をゆっくり聞いて欲しい気分なんだけど、良いかな?」
「うん。大丈夫」
「良かった、それじゃあ行こう」
ファナエルはそう言って右手を俺に差しだす。
俺は当たり前の事をするかのように差しだされた右手を握り返し、手を繋いだまま彼女の家へと向かうのであった。
「今日という今日こそは白状してもらうからな」
「ちょっと、お前ら落ち着けって」
俺の言葉などお構いなしの様子の二人が目をギラつかせてズカズカとこちら近づいてくる。
今俺は友人と実の妹から尋問を受けているのだ。
しかも自分の部屋の中で。
「秋にぃここ最近ず~っとファナエルさんとお家デートしてるよね?」
「い、いや。俺とファナエルはもう恋人なんだから毎日デートしても不自然な事ないだろ?」
「普通のカップルはそんな事しないから……それに僕は始っちから聞いてるんだよ、ここ最近になって秋にぃとファナエルさんのバカップルぶりが暴走してるってことを」
斬琉はニヤニヤとした顔をしながらそう言った。
正直、こんな風にからかわれながら突き詰めてくるこいつの姿が容易に想像できるからファナエルと毎日デートしてることは斬琉にバレない様に気をつけていたというのに。
まさか始が学校での様子を斬琉に暴露するとは考えていなかった。
「もうクラスの中でお前らに触れられないって空気が出来てるレベルだからな。特に女子たちなんかは秋良と話しただけでファナエルさんに殺されるんじゃないかって心配してたぜ」
まぁ、当の本人はそんな俺の事情も知らずに楽しそうにしている訳だが。
「なんか急に二人の距離が近くなってるな~と思った僕たちは考えたのです」
「何を?」
「そりゃぁお前とファナエルさんの仲が急接近する何かのイベントがあったんだろうなって考えたんだよ」
アニメでよく見る探偵とその助手みたいなコンビネーションを見せる二人は自慢げに自分達の推理を披露した後、俺の身体をあとずさりさせてしまうほどの勢いでグッと近づいてくる。
「だからよ、何があったかここで白状してもらうぞ」
「なんでお前らにそんな事言わなきゃいけないんだよ!!」
「だって気になるだろ!!俺はそれが気になって夜しか眠れてないんだぞ!!」
「ガッツリ快眠じゃねーか!!」
男子高校生らしいじゃれ合いを俺と始が繰り広げる中、斬琉は不敵な笑みを浮かべてこちらを見続けていた。
「観念しなよ、秋にぃ。今日は夜になるまで両親が帰ってこないし玄関のカギも閉めてる、秋にぃの逃場はどこにもないんだよ」
「なんでそんな大掛かりな計画まで立ててんだよ……」
「ホラホラ、可愛い妹と仲の良い友人がこんなに頼んでるんだよ?早く吐いて楽になりなよ」
斬琉が勝利を確信したような顔を浮かべて悪魔の囁きみたいなことを言い始めた。
このままいくとファナエルとのお家デートで何をやっているかまで聞き始めそうな勢いだ。
それだけは二人に話すことは出来ないからな……どうするべきか。
「なるほど。アキラは二人に捕まってたんだね」
「へ?」
そんな考えを俺がめぐらせていたその最中、透き通った声と共に部屋の扉がガシャリと音を立てて開いた。
「な、何で?玄関のカギは僕がちゃんと閉めたはずなのに」
開いた扉の先に佇んでいた銀髪緑目の美少女、俺の彼女であるファナエル・ユピテルは髪の毛を軽く揺らしながら俺に一つの言葉を投げかけた。
「アキラが家に来る時間がいつもより遅いから来ちゃった」
右手に持った銀色のカギを斬琉と始に見せつけながら。
「あ、合鍵……いつの間にそんなものを」
「この前アキラと一緒に作りに行ったんだ。私もアキラもお互いの家を自由に出入りできた方が便利だろうってことでね」
ファナエルは斬琉に「アキラの部屋以外には入らないから安心して」と声をかけながらスムーズに俺の隣へと歩いて来る。
「それじゃあ私の家に行こう?」
ファナエルは俺の右腕をぎゅっと両手で掴んで誘導している。
唖然とした表情でこちらを見つめる斬琉と始に俺は一言「それじゃあ行ってくる」とだけ伝えて自分の部屋を出ていった。
「あっそうだ、アキラこれ」
玄関で靴を取り出している最中、ファナエルは肩にかけている小さくて白いカバンの中から黒いガムを一つ取り出した。
「体の調子は大丈夫そう?」
「ああ。ここ数日の成果が出てるのかうっかり他人の心を読むなんてことは無くなったよ」
「ならよかった。でも一応私の家に着くまでこのガムは噛んでおいてね」
彼女は「はい、口開けて」と俺に話かけると、口の中へゆっくりと黒いガムを入れてくれる。
ここ数日のお家デートのお陰ですっかりこのガムの味にも慣れたものだ。
斬琉と始が言っていたように、俺とファナエルの距離は最近になってグッと縮まっている。
きっかけは言わずもがな超能力組織『シンガン』との間で起こった一連の騒動だ。
あの時、俺はファナエルが堕天使である事を知った。
そして彼女の過去を全て受け止める事を決意した。
今からファナエルの家で行われるデートはその決意を行動に移した物なのだ。
「今日は何をするんだ?」
「そうだね……今日は私の話をゆっくり聞いて欲しい気分なんだけど、良いかな?」
「うん。大丈夫」
「良かった、それじゃあ行こう」
ファナエルはそう言って右手を俺に差しだす。
俺は当たり前の事をするかのように差しだされた右手を握り返し、手を繋いだまま彼女の家へと向かうのであった。
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