僕のフェロモンでアルファが和んでしまいます

さねうずる

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ハルの葛藤

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「ハル?ハル?起きたの?大丈夫?」

ハルが目を覚ますと、以前にも見たことのある天井が目に入る。

騎士団長様の家だ。

「ここ……」

「ゼノウんちの屋敷だよ。ここは医者が常駐してるから連れてきたんだ。」

そう言う王太子様は人の姿に戻ってる。
なんだか夢でも見ていたような心地だが、体中痛いところだらけなので現実だとすぐに分かった。

「そうだったんですね・・・・。ありがとうございます。
あの後・・・・どうなったんでしょうか?」

体を見るとそこらじゅうに包帯が巻いてあり、話した時、口の端からはピリッと痛みが走った。

「ベレー子爵の息子とリンダンは逮捕したよ。今ゼノウとオリバーが後始末してる。リンダンは他国の王族だからうちの国の法律では裁けないんだけど、入国禁止にしてリリアナ王国に送り返す予定だ。
正式に抗議文を出すし、2度とハルの前には現れないから安心して。」

「そうですか・・・・。
でも、王太子様はそれでよかったんですか?
婚約者・・・・だったんですよね?」

「いや、婚約者じゃないよ。確かに婚約の打診はきてたけど断ったんだ。」

「えっ・・・・」

ハルは顔を上げて王太子様を見る。
穏やかに微笑んでハルを見ている王太子様は嘘を言ってるようには見えない。

見るたび仲睦まじく隣り合ってたから、てっきり・・・・

「結婚したい子は別にいてね。」

少し希望を持ってしまった瞬間、次の言葉で落とされた。

好きな人いるのか。


「で、でも、あの、お、王太子様は、その・・・・子供とか欲しかったりは・・・・僕、その・・・・」


あぁ、狡いこと言ってる。
王太子様が子供が欲しいなら一抹の望みがあるかもしれない。
ハルに子供ができたって知ったら・・・・もしかしたら好きな人よりハルを選んでくれるかもしれない。
そんな狡い考えでつい出た言葉だ。


「子供は・・・・いなくていいんだ。
好きな人とさえ一緒に居られればそれがなによりの幸せだって気付いたんだよ。
歳が離れてるけど弟がいるから、最近はね・・・・彼の子供が大きくなるまでは頑張って、それから王位を継がせればいいと思ってる。」

「そ、そうですか・・・・。」

ハルは唇をグッと噛んだ。
顔に力を入れておかないと、涙が溢れてしまうから。

狡いことを考えたからさっそくバチが当たったんだ。

「す、すみません。僕、つ、疲れているみたいで、もう・・・・もう少し、休ませてください。」

ハルはそう言うと返事も聞かず、レオに背を向けベッドに横になった。
シーツを被って流れる涙を隠す。
漏れそうになる嗚咽を我慢するために強く強く唇を噛んだ。

レオのほうから音はしない。
声も掛けてこない。
早く部屋を出ていってほしいのに。
思いっきり泣きたいのに。

一人で育てる覚悟だって出来たはずなのに。
あんなかっこよく助けに来られたら諦められないじゃないかっ・・・・!
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