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お疲れの宰相補佐様
しおりを挟む王太子様の誕生日を次の日に控えた宰相補佐様の施術の日――――――
いつも時間に正確な宰相補佐様には珍しくだいぶ時間が過ぎた頃、姿を現した。
だいぶお疲れの様子で4日前に見た時よりかなり顔色も悪い。
「待たせてすみません……。この後もまだ仕事がありますので、早速ですがお願いします。」
「分かりました。」
準備は整っているので、宰相補佐様に横になってもらい施術を始める。
か、硬い……。
過去最高の硬さを記録してる……。
急いでいる様子なので早く解したいのはやまやまだが、あまり強引に解すと後から痛みを伴うことがある。
丁寧かつ素早くやるのが肝だ。
「あ゛ーー、疲れました。やっと明日終わります。」
明日と言うと王太子様の誕生日だろうか?
もしかしたら準備で忙しいのかもしれない。
「……お疲れ様です?」
「あー、癒されるー。すみません、少しだけ寝ます。30分で起こしてください。」
そう言うと宰相補佐様はハルの返事を待たずに……寝た。
筋肉の力が一気にフッと抜けたので分かる。
宰相補佐様が施術で寝るのは初めてだ。
そう言えば中隊長様もひどく疲れている様子だった。
王太子様に至ってはここ最近、施術はキャンセルされている。
キャンセルされた翌日の新聞にリリアナ王国のリンダン様が来訪したと記事が出ていた。
写真に映るリンダン様は噂通り本当に美しい。
それこそ到底ハルなんか足元にも及ばないような。
婚約か……。
チクリと痛む胸には知らないふりをした。
どちらにしろ、ハルにできるのはみんなに少しでも良質な休息を取ってもらうことだ。
宰相補佐様の睡眠の邪魔をしないよう静かに施術を進めて行った。
「終わりました。」
「ハッ!もう30分経ったんですか?あっ、でも頭がすっきりしてます。」
声を掛けた瞬間ガバリの顔を上げる宰相補佐様。
寝起きがいい。
「今日はヘッドマッサージを多めに施しましたので。」
「無理矢理にでも時間をつくってよかったです。あと一踏ん張りできそうです。」
肩を回しながら、隈のできた目を細める宰相補佐様。かなりお労しい。
王太子様がどうしてるのか聞こうか?
でも、ハルごときが一国の王子様の様子を気にするなんておこがましいだろうか。
迷ってるうちに宰相補佐様が口を開く。
「明日はハルも演舞を見に来るのですよね?」
「はい。招待状をゼノウ様にいただきました。」
「そうですか。かなり拘って準備したので楽しめると思いますよ。」
「……楽しみにしてます。」
聞きたいことを飲み込んでハルはそう返事をした。
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