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プレゼントにほしいもの

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「今月末レオの誕生日があるだろ?俺とイヴァンが剣闘演舞するんだが、ハルも観に来いよ。」

中隊長様の施術の日……そう言って渡してくれたのは一枚の招待状だ。

王太子様の26歳の誕生祝いの催しとして、国で一番大きな闘技場を貸し切るらしい。


「僕なんかが行ってもいいのでしょうか……?」

質の良い紙に印字された文字を見ながらハルは自信なさげに呟いた。

「今回のは一般客も入れるやつだから問題ない。俺もハルが見に来てくれたら嬉しいし、レオもハルに祝ってもらったら喜ぶと思うぞ。」

そんなことはない……と思う。
中隊長様は知らないだろうが最近、王太子様とハルの間はギクシャクしているのだ。
雑談すらなくなって、ただただ静かに施術をしている。

だけど、王太子様にはハルの誕生日を祝ってもらっている。
彼が発案して、料理なども自ら手配してくれたと聞いた。
喜んでもらえるか自信はないがハルも及ばずながらお祝いしたい。


「……分かりました。喜んで見に行かせていただきます。王太子様に何かプレゼントしたいのですが何がいいでしょうか。大したモノはあげられないんですが……。」

「そうだなー。レオに直接聞いてみたらどうだ?まぁ、ハルからのプレゼントなら何でも喜びそうだけどな。」

呑気に笑う中隊長様にハルは苦笑いしか返せなかった。





次の王太子様の施術の日――――――

ハルは中隊長様に言われたことを実行に移した。

「あの、王太子様……」

「ん?どうしたの?ハル」


王太子様は普通に返事をしてくれたが、
ハルの声は少し震えてしまった。
バレていないだろうか。
うつ伏せで肩を解しているときに声を掛けたため王太子様は腕に顔を伏せた状態で表情は分からない。

「その……今月末お誕生日だと聞きました。何か欲しいものとかありますか?大したものは用意できないのですが……。」


「………………一個だけある。」


長い長い沈黙の後に王太子様はポツリと言う。

彼が欲しがるモノを僕に用意できるだろうか。少し不安に思いながらも続きを待つ。


「……ハルのいつも使ってるハンカチ。あと今着てるシャツも。」


「えっ?は、ハンカチでしたら新しいモノを用意します。シャツは……えっと、宰相補佐様からいただいたものなのであげるのはちょっと……。」

意外な要求にハルは困惑した。
大したモノは用意できないとは言ったが、いくら貧乏でもプレゼントくらい新品を用意するつもりだった。

「じゃあ、シャツは諦めるからハンカチは今持ってるのをちょうだい。あと、このタオルも貰っていい?」


「…………分かりました。」


そんなものでいいのか?とも思うが本人が欲しいというのならハルが頑固に拒否する理由もない。
追加で何か買ってプレゼントしよう。

王太子様が何を考えてるかは分からない。ハルもあまり深く考えないようにした。
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