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35 5回目の正直
しおりを挟む自分でも馬鹿だと分かってる。
もう5回目だぞ、さすがに懲りろよって思ってる。大丈夫、自分でもちゃんと理解してるから。
でも、恐ろしいことにヒートを共にしてしまうとダメだ。抑制が効かない。
ほんと好き。大好き。
あんなレイプ一歩手前、ギリギリアウトライン踏んでるみたいなセックスでも、胸がキュンキュンしてしまうのだからオメガという生き物は儘ならない。
愛情が増幅されて、一ノ瀬さんを見るたび、勝手にフェロモンが出てしまうのだ。
「ただいま、蘭丸。」
「響さん、おかえりなさい。」
玄関までパタパタとかけていくと笑顔の一ノ瀬さんが頬にキスしてくれる。
あれからもう何度もこのやりとりをしているが、未だになれない。
新婚さんみたいでこしょばいのだ。
「んー、今日もいい香り。」
一ノ瀬さんは僕の首筋に顔を埋めながら、スンスンと匂いを嗅いでいる。
これは物理的にこしょばい。
ヒート以降、一ノ瀬さんは僕に凄く甘くなった。
好きってたくさん言ってくれるし、僕にも言わせたがる。
それに、その・・・・毎日エッチしたがる。
正直体はしんどいけど、求められると嬉しくて、僕もつい頷いてしまうのだ。
■■■■■■
「唐揚げ定食です。どうぞ」
「・・・・・・・・どうも。」
最近、なんか周りがおかしい。
仕事中、いつも愛想よく定食を受け取ってくれるお客さんたちが複雑そうな顔をしながら、そそくさと席に行ってしまう。
竹之丞さんなんか毎回意味ありげにニヤニヤしてるし、女性社員さんたちからは睨まれることが多くなった。
普通に接してくれるのは、一ノ瀬さんぐらいだ。
「蘭丸、今日一緒に帰らない?久しぶりに食べて帰ろう。」
僕が頷くと、一ノ瀬さんは嬉しそうに笑ってくれる。
一ノ瀬さんが嬉しそうだと僕も嬉しい。
心がホワホワするのだ。
一ノ瀬さんの後ろに並んでいた、よく彼といる女性からはしっかり睨まれてしまっが。
怖いくらいすこぶる順調な交際。
だけど、あまりにも順調すぎて本当に怖くなってきた。
そろそろ運命の番が現れるんじゃ。
もともと一ノ瀬さんは運命の番に憧れて僕に声を掛けてきたんだ。
今は僕のこと好きって言ってくれてるけど、運命の番が現れたらやっぱそっちがいいって言う可能性大だ。
なぜなら実証率100%だから。
幸せを感じれば感じるほど怖くなる。
最近は夢にまで見るようになった。
一ノ瀬さんに運命の番が現れて、そっちにいってしまう。
『僕のこと好きって言ってくれたでしょ。』
って言いながら僕は必死に縋り付くんだけど、
『俺に運命の番がやっと現れたっていうのにお前は祝えないのか。』
って簡単に振り払われてしまう。
その時の一ノ瀬さんはすごく鬱陶しそうな顔をしてるんだ。
あの時の勇士くんみたいに。。。
泣きながら飛び起きると、いつも一ノ瀬さんが「怖い夢見た?」って眠そうにしながらも抱き締めてくれる。
背中をポンポンしてもらうと、あぁ、夢だったんだ、よかった。って安心できるのだ。
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