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19 一ノ瀬視点
しおりを挟むさっき勇士から耳打ちされた言葉。
『俺ら、本当は昔付き合ってたんだよ。』
勇士が沖くんを見る目に色を含んでいるのはすぐに分かった。
沖くんも高校の友達と再会したにしてはやけによそよそしくて、まるで昔の話題を避けたいみたいに見えたから、きっとなにかあるんだろうな、とは思っていた。
だが、勇士の態度は明らかに今でも沖くんに気があるし、そのことを隠すつもりもないらしい。
管理人小屋まで炭を取りに行く間、勇士は大人しく後ろをついてくる。
・・・・苛つく。
形式上とは言え、沖くんは俺の恋人だ。
昔の男が今更出張ってくるのは気に食わない。
というか、そうだ・・・・。沖くんの元カレということは勇士は運命の番を見つけた一人ということではないのか?
ならなぜ、今更沖くんにモーションをかけてくるのか。
勇士には色々聞かなければならないことがある。
それに向こうも大人しく着いてくるということは俺に言いたいことがあるのだろう。
「勇士・・・・お前、運命の番を見つけたんじゃなかったのか?なんで沖くんに今更ちょっかい出してくるんだよ。」
「知ってたんだ?まぁ、確かに運命の番は見つけたよ。三ヶ月で別れたけど。」
は?運命の番と付き合って別れる奴がいるのか?
だって運命の番は魂レベルで結ばれた相手じゃないのか?
別れるなんて選択肢があること自体信じられない。
「そう言う響は運命の番に出会いたいんだっけ?前から言ってたよな?それとも蘭丸がお前の運命の番なわけ?」
「・・・・いや、沖くんは俺の運命の番じゃない。」
そうだったらいいのに、と思うけど、沖くんは運命の番じゃない。
俺は昔からよく『運命の番と結婚したい』と公言していた。
そのころは勇士が運命の番と出会ったことがある人物だとは知らなかったし、叶うとも思っていなかったため夢物語程度の話だった。
「それならさ、早く運命の番でもなんでも見つけて、蘭丸の隣空けてよ。
俺、蘭丸とより戻したいんだよ。別れてから7年間ずっと後悔してた。でも、あんな酷い別れ方して自分からより戻したいなんて口が裂けても言えねーって思ってたから、自分からも会いにもいけねえし。
でもお前みたいな奴に渡すくらいなら俺のがまだマシだわ。
別にお前、蘭丸のこと好きじゃねーんだろ?」
「ダメだ。」
勇士の言葉を聞いて、咄嗟に低い声が出た。
自分でもよく分からないけど、でも、、、勇士の隣に並ぶ沖くんを想像したら絶対に嫌だと思った。
沖くんは形式上の恋人だ。
俺がそう頼んだ。運命の番に出会うまでの仮初の関係、それだけのはずだったーーーー。
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