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18 BBQにいこう その4
しおりを挟む「蘭丸、俺にも肉ちょうだい。」
後ろから掛けられた声にピクリと肩を揺らす。
振り向くと、紙皿を持った勇士くん。
無言でお皿にお肉を乗せていく。
「ありがとう。」「・・・・どういたしまして。」
意識しないようにすると、何故かむくれた態度を取ってしまう。
普通に接したいのに、普通がなにか自分でもよく分からなくなってきた。
「元気してたか?」
「うん。」
勇士くんは肉をゲットした後も何故かこのグループに留まって、ちゃっかり僕の横に並ぶ。
しおりさんたち助けてー、と思うが、女性たちは今コスメの話題で盛り上がってて、こちらに気付く様子はない。
助けは期待できなさそうだ。
勇士くんも、何故ここにいるのだろう。
BBQコンロは他にも何台かあるのだから、そっちに行けばいいのに。。。
「今、何の仕事してんの?」
「○○商事の社食で働いてるよ。」
「あぁ、だからここに来てたのか。
俺は、今××薬品に勤めてるんだけど、ここの連中とはフットサルの試合で知り合ったんだよ。俺も会社のフットサルチーム入っててさ、」
勇士くんは何でもなかったように、自然に話しかけてくる。
一方的に意識してる僕が自意識過剰なの?って思うくらい。
勇士くんと僕がポツリポツリと言葉を交わしていると、
「沖くん、飲み物のお代わりお待たせ。」
他の人たちに捕まっていた一ノ瀬さんが戻ってきた。
「ごめん、戻るの遅くなった。」
「いえ、ちょうどお肉焼けたので、一ノ瀬さんも食べてください。」
お肉大好きな一ノ瀬さんのお皿に焼けたお肉をたくさん置くと、嬉しそうに「いただきます。」と食べ始める。
僕は一ノ瀬さんの食べてる姿が好きなので無意識に目がいってしまう。
満足そうにもぐもぐ動く口に思わず頬が緩んでしまった。
「蘭丸が焼いた肉美味いだろ?こいつ昔から肉料理上手いから。下味のつけ方も焼き加減も完璧。」
なぜか勇士くんが得意げにそんなことを言い出す。
・・・・なんだろう。なんかモヤッとする。
それにちょっと嫌な空気感だ。
いや、僕がそう感じてるだけかもしれないけど、なんか怖いアルファフェロモンが流れている気がする。
「・・・・確かに沖くんは料理上手だからな。この間家で作ってくれたタンドリーチキンも美味かった。」
「へー、家でねぇ、、、二人って付き合ってんの?それにしては呼び方とか他人行儀だけど。」
なんか・・・・ピリピリバチバチしたものが飛び交ってる。
というか勇士くんがなんか言い方とか好戦的な感じだ。
世間一般的に今カレが元カレに嫉妬するのは聞いたことがあるけど、勇士くんのこの態度はなんだ?
一ノ瀬さんも感じ取っているのか訝しげな顔で勇士くんを見ている。
そんな一ノ瀬さんを無視するように勇士くんはお肉を指差した。
「蘭丸、肉焦げるよ?」
はっ!いけない!!すっかりお肉のこと忘れてた。
くっ、焦げてはないけどちょっとだけ焼きすぎた。
・・・・悔しい!!
僕の意識がお肉に逸れたとき、勇士くんが何やら一ノ瀬さんに耳打ちをし、更に一ノ瀬さんの表情が険しくなる。
それとは対照的に勇士くんはニヤニヤと人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。
「誰か管理小屋から炭もらってくるの手伝ってくれない?」
その時、ちょうどよく竹之丞さんが大きな声でそう呼びかけてきたので僕は咄嗟に手を挙げた。
この空気感に耐えられない。
「僕行きます!」
「じゃあ、俺もー。」
そしてなぜか勇士くんまで手を挙げる。
くそっ、僕が勇士くんから離れたがってるの気付いてるくせに、なんていぢわるなんだ。
キッと勇士くんを睨んだとき、勇士くんの挙がっている腕を一ノ瀬さんが掴んだ。
「俺と勇士の2人で行ってくるわ。」
「えっ?そう・・・・?じゃあ、お願いするわ。」
竹之丞さんが言ってる間に、掴んだ勇士くんの腕を掴んで一ノ瀬さんはがんがん遠ざかっていってしまった。。。
ほんとこれ、どういう状況なの?
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