運命の番はこの世に3人いるらしい

さねうずる

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2 四度目のお別れ

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「ごめん、蘭丸。」

「・・・・うん、いいよ。」

その日はネカフェに泊まって、念のためお昼ごろ家に帰った。
玄関を見て、靴が一つしかないことに安堵する。
配達員の彼はどうやら帰ったらしい。
部屋の中はめちゃくちゃ。
どんだけ激しくエッチしたんだよ。って思う。
・・・・言わないけど。

僕が家に戻った時、一応まだ彼氏の飛鳥くんはしっかり服を着て、部屋の中を片付けているところだった。
まだエッチ後の気怠さとか首周りのキスマークとか残ってて、朝のうちに帰らなかったのは正解だったと自分の決断を褒めてやりたくなる。


「何で許すの?俺、約束破ったのに。」


苦しそうな顔でそう言う飛鳥くん。
約束とは、付き合う時に彼が言ってきた約束。
すでに恋人に3回連続で運命の番が現れるというミラクルを起こしていた僕。

飛鳥くんが熱心に僕に声を掛けてくれていた時、僕は完全にお付き合いすることに後ろ向きだった。
だって、二度あることは三度ある。
なら、三度あることは四度あるでしょ?

尻込みしていた僕に飛鳥くんのが言った言葉。
「俺は例え自分に運命の番が現れたとしても、蘭丸を裏切ることはないから。信じてほしい。」

真っ直ぐで真剣なその瞳にもう一度くらい信じてもいいかも。なんて思った僕。
チョロすぎる。
そして、結果はまぁ、こんな感じ。

「しょうがないよ。実際、運命の番が現れてみないと自分がどうなるかなんて分からないものだし。それに・・・・多少は覚悟してたから。」

「・・・・っ、俺のこと信じてなかったってこと?」


えっ?どの口が言ってんの?
完全に僕が100%の力で飛鳥くんのこと信じてたら、今頃泣き喚いて、「捨てないでぇ、嘘つき~~」って床転げ回ってるよ?
一人目の時みたいに。僕の黒歴史だからこれ以上は言わないけど。
こんなに冷静に、潔く別れ話できてることに感謝してくれてもいいぐらいなのに。


「・・・・まぁ、4回目だから。多少は・・・・ね?」
「・・・・・・・・悪かった。」
「気にしないで。後の片付けは僕がやっておくから、帰ってくれるかな?今までありがとう。一年間楽しかった。ばいばい。」

何か言いたそうな飛鳥くんを多少強引に部屋から追い出すと、取り敢えずシーツを真っ先にゴミ袋に突っ込む。
ソファにも幸いカバーを掛けていたので、カバーも捨てる。
勿体無いけど、流石に元カレと配達員の彼の精液がそこら中についたものを使い続けられるほど神経太くない。

一年記念に用意していたプレゼントはどうしよう。
クローゼットに隠していたそれを引っ張り出す。

飛鳥くんが好きなブランドの新作パーカー。いっつもこのブランドの服を着てるので、もうこのロゴ見たら飛鳥くんが浮かぶくらい定着してる。
身長はさほど差がないので、自分でも着れないことはないけど見るたびに思い出しそうでなんか嫌だ。

あぁ、、、なんかこれ選んでる時の自分を思い出して泣けてきた。
これあげたら喜んでくれるだろうなぁ~ってあの時は幸せだった。
僕が買うには高かったけど、それでも記念日だしと思って奮発して買ったのに。

結局これは後で処理しようとクローゼットの奥深くに仕舞い込む。
見えないように念入りに念入りに押し込んだ。
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